国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、モルディブのサトイモ生産量は長い期間にわたって大きな変動を見せています。特に1960年代から1980年代までは比較的生産量が安定して増加する傾向がみられましたが、2000年代以降は減少傾向が顕著となり、2021年以降は生産量がゼロに達しました。このデータはモルディブの農業構造や、自然条件、政策的要因が影響している可能性を示唆しています。
モルディブのサトイモ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 7 |
4633.33% ↑
|
2022年 | 0 |
-64.29% ↓
|
2021年 | 0 |
-94.75% ↓
|
2020年 | 8 | - |
2019年 | 8 |
-11.11% ↓
|
2018年 | 9 |
-10% ↓
|
2017年 | 10 |
-69.3% ↓
|
2016年 | 33 |
-22.91% ↓
|
2015年 | 42 |
-1.12% ↓
|
2014年 | 43 |
474.33% ↑
|
2013年 | 7 |
-70.37% ↓
|
2012年 | 25 |
-72.9% ↓
|
2011年 | 93 |
172.5% ↑
|
2010年 | 34 |
-70.18% ↓
|
2009年 | 114 |
23.91% ↑
|
2008年 | 92 |
76.92% ↑
|
2007年 | 52 |
-93.09% ↓
|
2006年 | 752 |
150.67% ↑
|
2005年 | 300 |
-15.49% ↓
|
2004年 | 355 |
36.54% ↑
|
2003年 | 260 |
-7.14% ↓
|
2002年 | 280 |
-19.54% ↓
|
2001年 | 348 |
80.31% ↑
|
2000年 | 193 |
-28.25% ↓
|
1999年 | 269 |
-23.14% ↓
|
1998年 | 350 |
-23.25% ↓
|
1997年 | 456 |
-69.29% ↓
|
1996年 | 1,485 |
21.32% ↑
|
1995年 | 1,224 |
36% ↑
|
1994年 | 900 |
57.34% ↑
|
1993年 | 572 |
-28.5% ↓
|
1992年 | 800 |
-20% ↓
|
1991年 | 1,000 |
-27.54% ↓
|
1990年 | 1,380 |
155.56% ↑
|
1989年 | 540 |
7.78% ↑
|
1988年 | 501 |
-3.65% ↓
|
1987年 | 520 |
-54.47% ↓
|
1986年 | 1,142 | - |
1985年 | 1,142 | - |
1984年 | 1,142 |
-8.64% ↓
|
1983年 | 1,250 |
-7.41% ↓
|
1982年 | 1,350 |
-8.78% ↓
|
1981年 | 1,480 |
27.48% ↑
|
1980年 | 1,161 |
45.13% ↑
|
1979年 | 800 |
113.9% ↑
|
1978年 | 374 |
-58.95% ↓
|
1977年 | 911 |
-27.98% ↓
|
1976年 | 1,265 |
26% ↑
|
1975年 | 1,004 |
49.4% ↑
|
1974年 | 672 |
18.31% ↑
|
1973年 | 568 |
192.78% ↑
|
1972年 | 194 |
-71.88% ↓
|
1971年 | 690 |
12.56% ↑
|
1970年 | 613 |
84.08% ↑
|
1969年 | 333 |
0.91% ↑
|
1968年 | 330 |
1.54% ↑
|
1967年 | 325 |
3.17% ↑
|
1966年 | 315 |
2.94% ↑
|
1965年 | 306 |
2% ↑
|
1964年 | 300 |
1.69% ↑
|
1963年 | 295 |
3.51% ↑
|
1962年 | 285 |
1.79% ↑
|
1961年 | 280 | - |
モルディブのサトイモ生産量データは、気候変動や経済的な影響が農業に及ぼす影響を考える上で興味深い材料となります。このデータにおいて1961年の280トンから1969年の333トンまで、緩やかな増加傾向が観察されます。これは、モルディブの伝統的農業におけるサトイモの重要性が反映された努力とも言えます。しかし、1970年に急激な上昇(613トン)が見られ、その後大きく減少した年も含めて、生産量の不安定性が顕著になりました。
一方で1970年代後半から1980年代にかけては、生産量が1,000トンを超える時期がありました。これは、当時の国の農業政策や、増加する食糧需要に対応した努力が功を奏した結果と考えられます。しかし、1987年以降は再び減少の兆候が表れ、1990年代には変動が激しくなりました。特に、1977年からの大幅な減少や2000年以降の一桁台への低迷は、サトイモ生産の動態が自然条件のみでなく、政策や経済活動の変化にも影響されていることを示唆しています。
2000年代以降のデータを分析すると、一貫した減少傾向が浮かび上がります。これは食糧の自給率低下や他産業への依存度が高まったモルディブの経済変化を象徴している可能性があります。特に2011年以降は生産量が極めて少なく、2021年から完全にゼロになった状況は、自然災害や気候変動が深刻に影響した結果と考えることができます。また、モルディブは島国であるため、極端な気象や海面上昇の影響を他国より受けやすい特性があります。このような地政学的背景が農業の持続可能性に直接的な打撃を与えたと推測されます。
この状況において重要なのは、食糧安全保障への取り組みです。現在の生産量ゼロという数字は、食糧の国外依存度が極めて高くなっていることを示しています。食糧主権を確保するために、政府や国際機関はモルディブ特有の環境条件に適した品種改良や、持続可能な農業技術の導入を推進する必要があります。たとえば、耐塩性植物を活用した新しい農法の導入や、漁業と農業の複合的な産業の開発が考えられます。また、災害対策として、早期の災害警戒システムを整備することも必要でしょう。
国際社会における協力もまた重要です。モルディブのような小島嶼国は、気候変動に極めて脆弱であるため、国際社会が気候適応型農業の資金提供や技術支援を行うことが大きな役割を果たします。具体的には、気候関連の難民を保護する枠組みの強化や、食糧供給ネットワークの構築が重要です。
結論として、モルディブのサトイモ生産量の推移は、単なる農業データという枠を超え、気候変動、地政学、及び政策的課題を総合的に示しています。この問題はモルディブ国内だけで解決が難しく、国際的な枠組みの中で具体的な支援が必要です。食糧の生産自体を復活させる努力と並行して、持続可能な産業構造の構築も不可欠です。未来に向けて、モルディブが豊かな島国としての生存戦略を確立するためには、国際連携が鍵となるでしょう。