1989年における羊の毛(ウール)の生産量ランキングでは、オーストラリアが圧倒的な生産量を誇り、約959,000トンで1位に立ちました。続いてニュージーランドが341,000トンで2位、中国が237,352トンで3位となり、上位3か国が世界の羊毛生産の中心となっています。日本はこの統計には含まれていませんが、輸入国として羊毛産業と密接に関係しています。全体として、南半球の国々の生産量が高く、特にオーストラリアとニュージーランドが突出した数値を示しています。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
オセアニア | 959,000 |
| 2 |
|
オセアニア | 341,000 |
| 3 |
|
アジア | 237,352 |
| 4 |
|
南アメリカ | 152,000 |
| 5 |
|
アフリカ | 94,906 |
| 6 |
|
南アメリカ | 82,745 |
| 7 |
|
ヨーロッパ | 73,359 |
| 8 |
|
アジア | 70,150 |
| 9 |
|
アジア | 45,792 |
| 10 |
|
アジア | 45,000 |
| 11 |
|
アジア | 41,700 |
| 12 |
|
北アメリカ | 40,469 |
| 13 |
|
ヨーロッパ | 35,386 |
| 14 |
|
アフリカ | 34,000 |
| 15 |
|
アジア | 29,872 |
| 16 |
|
ヨーロッパ | 29,527 |
| 17 |
|
ヨーロッパ | 28,536 |
| 18 |
|
南アメリカ | 27,159 |
| 19 |
|
アフリカ | 25,000 |
| 20 |
|
ヨーロッパ | 24,400 |
| 21 |
|
ヨーロッパ | 23,000 |
| 22 |
|
アジア | 19,930 |
| 23 |
|
アジア | 19,400 |
| 24 |
|
アジア | 17,731 |
| 25 |
|
南アメリカ | 16,600 |
| 26 |
|
ヨーロッパ | 15,944 |
| 27 |
|
ヨーロッパ | 15,000 |
| 28 |
|
アジア | 14,500 |
| 29 |
|
ヨーロッパ | 13,800 |
| 30 |
|
アフリカ | 11,600 |
| 31 |
|
南アメリカ | 10,318 |
| 32 |
|
ヨーロッパ | 9,685 |
| 33 |
|
ヨーロッパ | 8,960 |
| 34 |
|
ヨーロッパ | 8,764 |
| 35 |
|
南アメリカ | 7,701 |
| 36 |
|
アフリカ | 7,500 |
| 37 |
|
アジア | 6,173 |
| 38 |
|
南アメリカ | 5,526 |
| 39 |
|
アフリカ | 4,900 |
| 40 |
|
ヨーロッパ | 4,830 |
| 41 |
|
アジア | 4,075 |
| 42 |
|
ヨーロッパ | 4,000 |
| 43 |
|
アフリカ | 3,500 |
| 44 |
|
アジア | 3,046 |
| 45 |
|
アフリカ | 2,402 |
| 46 |
|
アフリカ | 2,150 |
| 47 |
|
ヨーロッパ | 2,000 |
| 48 |
|
アフリカ | 1,878 |
| 49 |
|
南アメリカ | 1,600 |
| 50 |
|
北アメリカ | 1,343 |
| 51 |
|
南アメリカ | 1,300 |
| 52 |
|
ヨーロッパ | 1,292 |
| 53 |
|
アフリカ | 1,080 |
| 54 |
|
アジア | 1,000 |
| 55 |
|
アジア | 850 |
| 56 |
|
アジア | 774 |
| 57 |
|
南アメリカ | 710 |
| 58 |
|
ヨーロッパ | 682 |
| 59 |
|
ヨーロッパ | 680 |
| 60 |
|
アジア | 600 |
| 61 |
|
ヨーロッパ | 556 |
| 62 |
|
アジア | 440 |
| 63 |
|
アジア | 419 |
| 64 |
|
アフリカ | 370 |
| 65 |
|
アジア | 269 |
| 66 |
|
ヨーロッパ | 250 |
| 67 |
|
アジア | 183 |
| 68 |
|
ヨーロッパ | 128 |
| 69 |
|
アジア | 49 |
| 70 |
|
ヨーロッパ | 35 |
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国際連合食糧農業機関(FAO)のデータによると、1989年の羊毛生産量は、オーストラリアが約959,000トンで世界第1位となりました。この数値は2位のニュージーランド(341,000トン)の2.8倍以上を記録し、オーストラリアがいかに羊毛産業での大国であるかを示しています。このような高い生産量は、牧草地の広大さ、羊の飼育に適した気候条件、効率的な飼育技術が背景にあります。一方で、ニュージーランドも地理的・気候的な類似性からオーストラリアに次ぐ生産国となっています。中国は237,352トンで3位につけ、ここでも上位3か国が占める生産量は他国を大きく引き離しており、羊毛取引における地位を確立しています。
興味深い要素として、南半球や温暖な気候特性を持つ国々が上位に多くランクインしています。一方で、欧州諸国やアメリカ合衆国などの先進国は相対的に生産量が少なく、イギリスの73,359トンが7位、アメリカの40,469トンが12位にとどまっていました。これらの国々では農牧業の多様化や産業構造の変化が進んでおり、羊毛生産は歴史的には重要だったものの、現在では生産の主軸から外れつつあると言えます。
羊毛産業は気候変動の影響を受けやすく、雨量や気温の変化が牧草の生育に直接影響します。砂漠化が進行している地域では、羊飼育は困難になり、産業基盤が揺らぐ可能性があります。モンゴルのように寒冷地域ながら羊飼育を行っている国々では、異常気象が生産に大きなリスクを与える懸念があります。一方、日本のような羊毛を輸入に依存する国々では、供給国の生産変動が羊毛価格や繊維産業全体に影響をもたらします。
将来に向けた課題として、生産の持続可能性を確保するために幾つかの対策が求められます。まず、生産国では気候変動に対応した牧草地管理技術の開発が必要です。例えば、オーストラリアでは干ばつ耐性のある生態系管理手法を強化していく必要があり、ニュージーランドでは環境保護と持続可能な農牧業とのバランスが重要なテーマとなるでしょう。さらに、大規模消費国である日本などでは、持続可能な羊毛の調達や、輸入先多様化を進めることが有効です。
また、地政学的背景を考慮すると、羊毛大国であるオーストラリアと中国は、現在でも貿易の主要なプレイヤーですが、経済や政治の関係が羊毛市場に影響を及ぼす可能性があります。一方で、紛争や地域衝突が羊毛の産地に及ぼす可能性も無視できません。羊毛の保管および輸送インフラを安定させることが、安心な供給を支える鍵となります。
最後に、国際機関や政府がこれらの課題に取り組むためには、羊毛生産における気候変動への適応方法を共有する国際的な枠組みを強化することが肝要です。特に環太平洋地域での協力強化や、持続可能な畜産技術の共同研究は、羊毛産業の未来を守るうえで大きな役割を果たすと考えられます。持続可能な羊毛生産の推進は、地球規模での環境保護と経済価値の創出に寄与するでしょう。