国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、1986年の羊の毛生産量ランキングで1位はオーストラリア(829,500トン)、2位はニュージーランド(357,600トン)、3位は中国(185,000トン)となっています。この3か国は世界の羊の毛生産の主要な供給国であり、羊毛産業において重要な役割を担っています。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
オセアニア | 829,500 |
| 2 |
|
オセアニア | 357,600 |
| 3 |
|
アジア | 185,000 |
| 4 |
|
南アメリカ | 140,000 |
| 5 |
|
アフリカ | 96,400 |
| 6 |
|
南アメリカ | 87,178 |
| 7 |
|
アジア | 70,295 |
| 8 |
|
ヨーロッパ | 58,870 |
| 9 |
|
アジア | 50,335 |
| 10 |
|
アジア | 42,700 |
| 11 |
|
アジア | 40,000 |
| 12 |
|
ヨーロッパ | 39,916 |
| 13 |
|
北アメリカ | 38,270 |
| 14 |
|
ヨーロッパ | 33,163 |
| 15 |
|
アフリカ | 31,000 |
| 16 |
|
南アメリカ | 30,543 |
| 17 |
|
アジア | 25,088 |
| 18 |
|
アフリカ | 25,000 |
| 19 |
|
ヨーロッパ | 24,293 |
| 20 |
|
ヨーロッパ | 24,000 |
| 21 |
|
ヨーロッパ | 22,121 |
| 22 |
|
南アメリカ | 20,500 |
| 23 |
|
アジア | 18,900 |
| 24 |
|
ヨーロッパ | 17,699 |
| 25 |
|
アジア | 16,380 |
| 26 |
|
アジア | 15,840 |
| 27 |
|
ヨーロッパ | 13,460 |
| 28 |
|
アジア | 13,000 |
| 29 |
|
南アメリカ | 11,400 |
| 30 |
|
アフリカ | 11,000 |
| 31 |
|
ヨーロッパ | 10,187 |
| 32 |
|
ヨーロッパ | 10,000 |
| 33 |
|
ヨーロッパ | 9,578 |
| 34 |
|
ヨーロッパ | 8,700 |
| 35 |
|
アフリカ | 7,500 |
| 36 |
|
アジア | 7,272 |
| 37 |
|
南アメリカ | 7,086 |
| 38 |
|
南アメリカ | 6,034 |
| 39 |
|
ヨーロッパ | 5,710 |
| 40 |
|
アフリカ | 4,250 |
| 41 |
|
アジア | 3,840 |
| 42 |
|
アフリカ | 3,500 |
| 43 |
|
アフリカ | 3,410 |
| 44 |
|
ヨーロッパ | 3,000 |
| 45 |
|
アフリカ | 2,325 |
| 46 |
|
アジア | 2,180 |
| 47 |
|
アフリカ | 2,100 |
| 48 |
|
ヨーロッパ | 2,000 |
| 49 |
|
南アメリカ | 1,600 |
| 50 |
|
ヨーロッパ | 1,500 |
| 51 |
|
南アメリカ | 1,200 |
| 52 |
|
北アメリカ | 1,126 |
| 53 |
|
アフリカ | 1,020 |
| 54 |
|
アジア | 900 |
| 55 |
|
アジア | 691 |
| 56 |
|
ヨーロッパ | 680 |
| 57 |
|
ヨーロッパ | 654 |
| 58 |
|
アジア | 650 |
| 59 |
|
南アメリカ | 640 |
| 60 |
|
ヨーロッパ | 606 |
| 61 |
|
アジア | 500 |
| 62 |
|
アジア | 474 |
| 63 |
|
アジア | 460 |
| 64 |
|
アフリカ | 370 |
| 65 |
|
アジア | 317 |
| 66 |
|
ヨーロッパ | 200 |
| 67 |
|
ヨーロッパ | 108 |
| 68 |
|
アジア | 91 |
| 69 |
|
アジア | 46 |
| 70 |
|
ヨーロッパ | 35 |
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1986年の世界の羊の毛生産量ランキングを見ると、オーストラリアが圧倒的なトップに位置しています。同国の羊毛生産量は829,500トンで、2位のニュージーランドの約2.3倍に達しています。このオーストラリアとニュージーランドの優位性は、広大な牧草地に恵まれた地理的条件や、産業に適した品種の開発、また効率的な牧畜技術の導入によるものです。特にオーストラリアはメリノ種をはじめとする高品質な羊毛の生産で世界的に知られており、歴史的にも羊毛が輸出の主要品目として経済を支えてきた背景があります。
一方、3位の中国は、185,000トンの生産量を記録しており、アジア最大の羊毛生産国として位置付けられます。中国では、広大な農村地域での羊の飼育が普及しており、国内消費を賄うと同時に羊毛製品の輸出も行っています。しかし、当時の中国では、効率的な生産技術や品質管理の実現が課題となり、特に高品質な羊毛の生産については一定の遅れがあると言われました。
アルゼンチン(140,000トン、4位)や南アフリカ(96,400トン、5位)も、羊毛産業を経済の柱のひとつとして位置づけています。これらの国々は、気候条件の影響と需要に応じた専門的な生産地域を形成し、輸出を通じて国際市場に参入しています。ヨーロッパではイギリスが58,870トンで8位となっていますが、他のヨーロッパ諸国の生産量は比較的小規模で、地域的な利用にとどまることが多いようです。
データからわかるもう一つのポイントは、羊毛生産量が国ごとに大きく異なる分布を示している点です。トップ10の生産国の総生産量が全世界の羊毛供給の大部分を占めており、特にオーストラリアとニュージーランドのシェアの高さが目立ちます。一方で、アフリカ、中東、南米の一部地域では、主に地方経済のための小規模経営が中心となっています。
このランキングから今後の課題として考えられるのは、品質向上や持続可能な生産のための革新が求められている点です。特に中国やインドといった羊毛の潜在的な生産国では、持続可能な畜産技術の導入と品質基準の統一が進むことが、世界市場での競争力向上につながります。また、ヨーロッパの一部の国々や日本では、羊毛の国内生産が少なく、輸入品への依存度が高いため、主要生産国への依存リスクを軽減するための対策が欠かせません。
さらに、地政学的な観点からは、気候変動が羊毛の供給に与える影響が注目されています。干ばつや水の不足、草地の減少などが、一部地域での生産に直接的な障害をもたらす可能性があります。オーストラリアや南アフリカなど、自然条件に大きく依存する生産国では、気候変動のリスクに対応するための適応政策が急務となるでしょう。
結論として、1986年時点の羊毛生産データは、各国の生産能力と地理的特徴との関連性を如実に示しています。同時に、この統計は将来を見据えた課題や必要な施策を浮き彫りにしています。国際的な取り組みとして、気候変動への対応や競争力の向上、そして産業全体の持続可能性を確保するための協力体制の構築が必要です。主要国の生産能力だけでなく、多様な国で生産が進むことで、世界の羊毛市場がより安定し、公平な供給が期待できるでしょう。