Skip to main content

ケニアのコーヒー豆生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月の最新データによると、ケニアのコーヒー豆の生産量は長期的な変動を示しています。ケニアのコーヒー産業は1960年代から1980年代にかけて大きく成長しましたが、その後は不安定さが顕著で、特に2000年代以降には著しい減少傾向が見られる年も多くなっています。2022年には51,900トンの生産量で、近年に比較すると比較的回復が見られたものの、過去のピーク時と比べると全体的な減少が続いています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 48,700
-6.17% ↓
2022年 51,900
50.43% ↑
2021年 34,500
-6.5% ↓
2020年 36,900
-17.08% ↓
2019年 44,500
7.55% ↑
2018年 41,375
7.13% ↑
2017年 38,620
-16.23% ↓
2016年 46,100
9.76% ↑
2015年 42,000
-15.15% ↓
2014年 49,500
24.37% ↑
2013年 39,800
-18.78% ↓
2012年 49,000
34.99% ↑
2011年 36,300
-13.57% ↓
2010年 42,000
-22.22% ↓
2009年 54,000
28.57% ↑
2008年 42,000
-21.3% ↓
2007年 53,368
10.49% ↑
2006年 48,300
6.86% ↑
2005年 45,200
-6.67% ↓
2004年 48,431
-12.65% ↓
2003年 55,443
6.83% ↑
2002年 51,900
0.39% ↑
2001年 51,700
-48.66% ↓
2000年 100,700
47.87% ↑
1999年 68,100
26.78% ↑
1998年 53,715
-21.75% ↓
1997年 68,642
-29.94% ↓
1996年 97,976
2.7% ↑
1995年 95,400
19.4% ↑
1994年 79,900
6.39% ↑
1993年 75,100
-11.96% ↓
1992年 85,300
-1.27% ↓
1991年 86,400
-16.84% ↓
1990年 103,900
-11.12% ↓
1989年 116,900
-9.17% ↓
1988年 128,700
22.95% ↑
1987年 104,679
-8.12% ↓
1986年 113,926
21.72% ↑
1985年 93,600
-21.01% ↓
1984年 118,500
37.69% ↑
1983年 86,064
-1.57% ↓
1982年 87,436
-12.32% ↓
1981年 99,717
9.18% ↑
1980年 91,334
21.65% ↑
1979年 75,082
-10.97% ↓
1978年 84,332
-16.68% ↓
1977年 101,218
26.05% ↑
1976年 80,303
21.39% ↑
1975年 66,152
-5.64% ↓
1974年 70,103
-1.53% ↓
1973年 71,190
14.73% ↑
1972年 62,048
4.28% ↑
1971年 59,500
2.06% ↑
1970年 58,300
11.26% ↑
1969年 52,400
32.32% ↑
1968年 39,600
-17.5% ↓
1967年 48,000
-15.64% ↓
1966年 56,900
44.78% ↑
1965年 39,300
-5.07% ↓
1964年 41,400
2.22% ↑
1963年 40,500
-19% ↓
1962年 50,000
77.94% ↑
1961年 28,100 -

ケニアは豊かな土壌と独特な気候条件が適していることから、アフリカ有数のコーヒー生産国の一つとして知られてきました。特に高品質なアラビカ種コーヒーが世界市場で高く評価されており、同国の重要な輸出品とされています。データを見ると、1960年代から1970年代にかけて生産量は飛躍的に増加し、1980年代に入るとピークを迎えています。1988年には128,700トンの最高記録を達成しました。しかし、それ以降は減少傾向が強まり、2000年代以降は特に40,000トン台に低下する年が多く見られるようになりました。

この変動の背景には多くの要因が関与しています。一つ目に、気候変動の影響が挙げられます。従来のコーヒー生産に適した地域の気温が上昇したことで、栽培に適した条件が失われつつあります。加えて、異常気象の頻発が収穫量の安定性を損なっています。二つ目に、地政学的な問題や政治的不安定さが農業セクター全体に影響を及ぼしていることも無視できません。特に土地改革の影響で、小規模生産者が十分な支援を受けられておらず、生産性が落ち込んでいると指摘されています。さらに、国内外の市場競争や価格の変動が、生産コストとの兼ね合いで農家の経済的な負担を増加させています。

また、コーヒーの価格と生活コストとの不整合、農業支援インフラの不足、農民の高齢化といった課題も散見されます。これにより、多くの若年層がコーヒー栽培ではなく、都市部への移住や他の職種を選ぶ傾向が高まりました。その結果、コーヒー産業の持続可能性が脅かされています。

2022年には生産量が51,900トンまで回復しましたが、この要因としては気象条件の一時的な好転や、政府および農協による生産者支援プログラムの部分的な成功が考えられます。しかし、このまま何も対策を講じなければ持続的な成長を続けることは難しいでしょう。

長期的な解決策として、いくつかの提言を行います。まず、気候変動に対応するための「気候適応型コーヒー種」の研究と普及を加速化することが必要です。加えて、灌漑インフラの整備や、持続可能な栽培方法(例えばアグロフォレストリー:樹木と作物の共存による農業技術)の導入が生産性向上に寄与すると考えられます。また、農家への技術的指導や金融支援プログラムを拡充し、小規模生産者が市場競争力を保持できる体制作りが重要です。さらに、国内外のフェアトレード市場を拡充し、価格の安定化を図ることが農家のモチベーション向上につながるでしょう。

結論として、ケニアのコーヒー産業は依然として高い潜在能力を持つ一方で、従来の栽培・流通モデルでは持続可能性に限界が見えてきています。気候変動、経済的不安定さ、農民人口の高齢化といった複雑な課題に対応するため、政府、国際機関、民間セクターの積極的な協力が必要です。これにより、ケニア産コーヒーの品質を維持しつつ、世界市場への供給を安定化させることが将来的な目標となります。