国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、トリニダード・トバゴのコーヒー豆生産量は、1960年代から2020年代にかけて著しい変動が見られます。最大値は1965年の4,198トンで、最少値は2010年の51トンとなっています。特に2000年代以降、生産量は低迷しており、しかし2016年以降に緩やかな回復傾向が確認されています。2022年の生産量は681トンで、この改善が継続していることが伺えます。
トリニダード・トバゴのコーヒー豆生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 771 |
13.31% ↑
|
2022年 | 681 |
14.96% ↑
|
2021年 | 592 |
-5.21% ↓
|
2020年 | 625 |
-21.92% ↓
|
2019年 | 800 |
11.11% ↑
|
2018年 | 720 |
1.84% ↑
|
2017年 | 707 | - |
2016年 | 707 |
2196.2% ↑
|
2015年 | 31 |
-39.82% ↓
|
2014年 | 51 |
-0.18% ↓
|
2013年 | 51 |
0.93% ↑
|
2012年 | 51 |
-30.17% ↓
|
2011年 | 73 |
41.84% ↑
|
2010年 | 51 |
-60.26% ↓
|
2009年 | 129 |
115.02% ↑
|
2008年 | 60 | - |
2007年 | 60 |
-91.67% ↓
|
2006年 | 720 |
105.71% ↑
|
2005年 | 350 |
221.1% ↑
|
2004年 | 109 |
-81.4% ↓
|
2003年 | 586 |
137.25% ↑
|
2002年 | 247 |
-39.16% ↓
|
2001年 | 406 |
-26.58% ↓
|
2000年 | 553 |
61.22% ↑
|
1999年 | 343 |
-6.54% ↓
|
1998年 | 367 |
-66.7% ↓
|
1997年 | 1,102 |
213.07% ↑
|
1996年 | 352 |
-57.64% ↓
|
1995年 | 831 |
-18.13% ↓
|
1994年 | 1,015 |
16.13% ↑
|
1993年 | 874 |
23.62% ↑
|
1992年 | 707 |
-22.65% ↓
|
1991年 | 914 |
-52.98% ↓
|
1990年 | 1,944 |
61.19% ↑
|
1989年 | 1,206 |
107.22% ↑
|
1988年 | 582 |
-68.4% ↓
|
1987年 | 1,842 |
38.08% ↑
|
1986年 | 1,334 |
-37.69% ↓
|
1985年 | 2,141 |
151.29% ↑
|
1984年 | 852 |
-38.66% ↓
|
1983年 | 1,389 |
-22.58% ↓
|
1982年 | 1,794 |
-26.26% ↓
|
1981年 | 2,433 |
8.62% ↑
|
1980年 | 2,240 |
-10.29% ↓
|
1979年 | 2,497 |
-0.12% ↓
|
1978年 | 2,500 |
-14.32% ↓
|
1977年 | 2,918 |
9.25% ↑
|
1976年 | 2,671 |
-33.62% ↓
|
1975年 | 4,024 |
107.42% ↑
|
1974年 | 1,940 |
-28.6% ↓
|
1973年 | 2,717 |
-17.67% ↓
|
1972年 | 3,300 |
-15.25% ↓
|
1971年 | 3,894 |
69.16% ↑
|
1970年 | 2,302 |
-27.86% ↓
|
1969年 | 3,191 |
-30.42% ↓
|
1968年 | 4,586 |
47.13% ↑
|
1967年 | 3,117 |
6.75% ↑
|
1966年 | 2,920 |
-30.44% ↓
|
1965年 | 4,198 |
0.41% ↑
|
1964年 | 4,181 |
15.34% ↑
|
1963年 | 3,625 |
-7.05% ↓
|
1962年 | 3,900 |
35.18% ↑
|
1961年 | 2,885 | - |
トリニダード・トバゴのコーヒー豆生産量の推移を振り返ると、1960年代までは比較的高い生産量を維持しており、1965年には4,198トンというピークを記録しました。この時期は、気候的条件の適合性や農業従事者の積極的な取り組みに支えられていたと考えられます。しかし、1970年代以降は大きな減少が見られ、1980年代には1,000トン以下の年も多く現れるようになりました。この減少傾向は、経済的要因、農村部の人口減少、そして気候変動など複数の要因が絡んでいると推測されます。
さらに、2000年代初頭以降は極端に低い生産量が続き、2010年から2015年までは年間生産量50トン以下という年が5年にわたり見られました。この時期は、産業としての競争力が大幅に低下し、人員や技術の喪失が深刻であったとされています。しかしながら、2016年以降は成長の兆しが現れており、2022年には681トンまで回復しています。この回復には、政府や国際機関の助成金制度や生産性向上を目指した取り組みが寄与している可能性があります。
トリニダード・トバゴの地理的条件で見ると、本国はカリブ海に位置し、熱帯の気候と肥沃な土壌に恵まれています。しかし、その地政学的位置は気候変動の影響を顕著に受けやすく、異常気象や台風の影響が農業に深刻な打撃を与えることがあります。また、輸出経済全体が石油・天然ガス産業に偏重しているため、農業セクターの持続可能性が後回しにされている点も問題です。
さらに、国際的なコーヒー市場の動向とも連動して、トリニダード・トバゴの競争力は厳しい状況にあります。ブラジル、ベトナム、コロンビアといった主要生産国は、効率性と品質の高さで市場の大部分を支配しており、トリニダード・トバゴのような小規模生産国が市場シェアを拡大するのは容易ではありません。しかし、小規模な農家によるニッチ市場への高品質コーヒーの参入など、差別化戦略にはまだ可能性が残されています。
未来に向けての提案として、まずコーヒー産業の復活に向けた長期的な政策が必要です。具体的には、技術支援と研修プログラムを通じて、農業従事者の能力向上を目指すべきです。また、気候変動の影響を緩和するため、生態系を尊重した持続可能な農業方式を普及させることも重要です。そして、市場競争力を高めるため、観光業と連動したブランド化戦略や、フェアトレード認証の取得なども検討する価値があります。
最後に、地球規模での気候変動問題が農業に与える影響は無視できません。これに対応するため、地域間での協力体制を構築することや、国際機関と連携した資金調達支援が急務です。トリニダード・トバゴのコーヒー産業は大きな潜在力を秘めており、適切な対策を講じることで再び成長する可能性があります。将来的には、市場での地位を確立し、地域経済の重要な支柱の一つとして復活することが期待されます。