国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、マラウイのコーヒー豆生産量は、1960年代から2022年までの間で大きな変動を見せてきました。特に1980年代後半から1990年代初頭にかけての急増傾向、2000年代初頭の低迷期、そして2010年代後半以降の再成長が特徴的です。2022年の生産量は11,000トンと、長期的には歴史的に高い水準に達しています。
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マラウイのコーヒー豆生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 11,000 | - |
2022年 | 11,000 |
10% ↑
|
2021年 | 10,000 | - |
2020年 | 10,000 |
-9.09% ↓
|
2019年 | 11,000 |
-0.74% ↓
|
2018年 | 11,082 |
31.62% ↑
|
2017年 | 8,420 |
16.67% ↑
|
2016年 | 7,217 | - |
2015年 | 7,217 |
6.81% ↑
|
2014年 | 6,757 |
18.56% ↑
|
2013年 | 5,699 |
0.26% ↑
|
2012年 | 5,684 |
41.57% ↑
|
2011年 | 4,015 |
-3.86% ↓
|
2010年 | 4,176 |
-24.21% ↓
|
2009年 | 5,510 |
391.09% ↑
|
2008年 | 1,122 |
-20.03% ↓
|
2007年 | 1,403 |
-32.9% ↓
|
2006年 | 2,091 |
77.05% ↑
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2005年 | 1,181 |
-25.72% ↓
|
2004年 | 1,590 |
-38.47% ↓
|
2003年 | 2,584 |
-13.29% ↓
|
2002年 | 2,980 |
-31.02% ↓
|
2001年 | 4,320 |
14.29% ↑
|
2000年 | 3,780 |
6.78% ↑
|
1999年 | 3,540 |
-7.81% ↓
|
1998年 | 3,840 |
-15.64% ↓
|
1997年 | 4,552 |
-5.11% ↓
|
1996年 | 4,797 |
-12.14% ↓
|
1995年 | 5,460 |
8.33% ↑
|
1994年 | 5,040 |
33.33% ↑
|
1993年 | 3,780 |
-53.68% ↓
|
1992年 | 8,160 |
8.8% ↑
|
1991年 | 7,500 |
21.36% ↑
|
1990年 | 6,180 |
-8.85% ↓
|
1989年 | 6,780 |
56.94% ↑
|
1988年 | 4,320 |
-13.01% ↓
|
1987年 | 4,966 |
34.51% ↑
|
1986年 | 3,692 |
6.09% ↑
|
1985年 | 3,480 |
87.1% ↑
|
1984年 | 1,860 |
63.16% ↑
|
1983年 | 1,140 |
11.76% ↑
|
1982年 | 1,020 |
2% ↑
|
1981年 | 1,000 | - |
1980年 | 1,000 |
11.11% ↑
|
1979年 | 900 | - |
1978年 | 900 |
2.27% ↑
|
1977年 | 880 | - |
1976年 | 880 |
11.68% ↑
|
1975年 | 788 |
26.08% ↑
|
1974年 | 625 |
234.22% ↑
|
1973年 | 187 |
0.54% ↑
|
1972年 | 186 |
21.57% ↑
|
1971年 | 153 |
-41.83% ↓
|
1970年 | 263 |
70.78% ↑
|
1969年 | 154 |
6.21% ↑
|
1968年 | 145 |
-3.97% ↓
|
1967年 | 151 |
-9.04% ↓
|
1966年 | 166 |
29.69% ↑
|
1965年 | 128 |
-3.76% ↓
|
1964年 | 133 |
-42.17% ↓
|
1963年 | 230 |
16.16% ↑
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1962年 | 198 |
18.56% ↑
|
1961年 | 167 | - |
マラウイのコーヒー生産は、過去60年以上にわたり複雑な変動を示しています。データを見ると、1960年代は小規模な開始期として生産量が200トンを下回る年もありました。この期間では、生産が安定せず、不規則な増減がありました。これは当時の技術的制約や経済政策の不安定さ、また国土の農業インフラの未整備が要因と考えられます。
1970年代後半に入ると、生産量が徐々に増加し、1980年代前半には1,000トンを超える安定成長が見られるようになります。その後、1985年から1992年にかけて飛躍的な増加をし、生産量が数千トンから最大で8,160トン(1992年)に達しています。この増加は、コーヒーが輸出向けの重要な一次産品として位置づけられ、国際市場でマラウイのコーヒーが歓迎されたこと、また農業政策の改革が実施されたことに起因しています。しかし、1993年以降は急激に減少する傾向に転じました。特に2002年から2008年にかけては2,000トンを下回る低水準期が続いています。この時期には、世界市場での価格競争、新たな農業害虫と気候変動による影響、さらに資源不足が影響していた可能性があります。
2010年代に入ると、再びコーヒー生産量が増加し始めました。2017年以降、マラウイのコーヒー生産量は躍進的に上昇し、2018年には歴史的最高値である11,082トンを記録しました。最近の2022年の数値も11,000トンを維持しており、この地域が再び国際市場で競争力を発揮しつつあることを示しています。この成長は、国際的な技術支援と投資の増加、持続可能な農法の採用、そして世界的なコーヒー消費の増加に関連しています。
現在の生産量は好調であるものの、マラウイが長期的な安定成長を目指す上では、いくつかの重要な課題に直面しています。まず、気候変動による干ばつや洪水の頻発が農業全体に深刻なリスクをもたらしています。例えば、同国は降水量が作付面積に直接的な影響を与えるため、効率的な灌漑システムや気象データの活用が急務です。また、コーヒー価格の国際市場変動にも影響されやすいため、マラウイ産のコーヒー豆のブランド化や高付加価値商品の開発などが求められます。
さらに、地域内では地政学的リスクも見逃せません。隣国との水資源問題や地域的な貧困が、農業効率の低下や生産コストの上昇をもたらす要因となっています。このため、国境を越えた協力や農業技術の共有が鍵となるでしょう。コロナ禍による物流面の停滞が一部の生産者へのダメージを与えたことも教訓とし、効率的なサプライチェーンを構築すべきです。
マラウイにおける持続可能な農業成長を実現するために、まず優先すべきはインフラの整備と国境を越えた水資源管理の推進です。また、農家の効率を上げるために、国際的な技術協力による害虫管理技術や気候に左右されない作付方法の導入を進める必要があります。そして最後に、生産だけでなく、輸出プロセスに付加価値をつける形で、国内に利益を還元できるような安定的な仕組みを構築することが望まれます。国際機関、農民、政府が連携し、地域間の協力や資源争奪の声を抑えることで、マラウイのコーヒー産業はさらなる成長を遂げることができるでしょう。