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プエルトリコのコーヒー豆生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、プエルトリコのコーヒー豆生産量は、1961年には15,876トンであったのに対し、2022年には843トンにまで減少しており、この期間約96%の生産減少が見られます。この推移は、特に近年、その減少傾向が顕著です。また、2017年のハリケーン「マリア」の影響が顕著に現れており、それ以降の生産量は歴史的な最低水準を記録しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,616
91.66% ↑
2022年 843
-29.52% ↓
2021年 1,197
-26.47% ↓
2020年 1,627
7.54% ↑
2019年 1,513
55.21% ↑
2018年 975
-60.37% ↓
2017年 2,461
-18.18% ↓
2016年 3,007
-10.74% ↓
2015年 3,369
-27.93% ↓
2014年 4,674
-4.23% ↓
2013年 4,881
-15.26% ↓
2012年 5,760
0.39% ↑
2011年 5,738
-5.29% ↓
2010年 6,058
-4.4% ↓
2009年 6,337
-5.18% ↓
2008年 6,683
-2.2% ↓
2007年 6,833
-6.69% ↓
2006年 7,323
-7.75% ↓
2005年 7,938
-22.22% ↓
2004年 10,206
9.65% ↑
2003年 9,308
22.47% ↑
2002年 7,600
-12.14% ↓
2001年 8,650
4.85% ↑
2000年 8,250
17.86% ↑
1999年 7,000
-47.73% ↓
1998年 13,393
15.79% ↑
1997年 11,567
-4.99% ↓
1996年 12,175
-4.14% ↓
1995年 12,701
0.01% ↑
1994年 12,700
-17.95% ↓
1993年 15,478
21.86% ↑
1992年 12,701 -
1991年 12,701
-1.75% ↓
1990年 12,927
-10.94% ↓
1989年 14,515
10.35% ↑
1988年 13,154
-17.62% ↓
1987年 15,967
40.8% ↑
1986年 11,340
-19.35% ↓
1985年 14,061
14.81% ↑
1984年 12,247
-21.74% ↓
1983年 15,649
20.63% ↑
1982年 12,973
-4.67% ↓
1981年 13,608
14.51% ↑
1980年 11,884
24.75% ↑
1979年 9,526
-20.13% ↓
1978年 11,927
36.98% ↑
1977年 8,707
-23.81% ↓
1976年 11,428
-0.02% ↓
1975年 11,430
9.09% ↑
1974年 10,478
-23.51% ↓
1973年 13,698
11.85% ↑
1972年 12,247
12.5% ↑
1971年 10,886
-29.41% ↓
1970年 15,422
69.88% ↑
1969年 9,078
-23.02% ↓
1968年 11,793
-20% ↓
1967年 14,742
14.44% ↑
1966年 12,882
-5.28% ↓
1965年 13,600
-20.05% ↓
1964年 17,010
19.05% ↑
1963年 14,288
-20.25% ↓
1962年 17,917
12.86% ↑
1961年 15,876 -

プエルトリコは19世紀から20世紀初頭にかけて、世界的なコーヒー生産地としての地位を確立していました。コーヒーはその経済と文化の中核を担い、特にヨーロッパ市場で高い評判を得ていました。しかし、これまでの数十年間、特に21世紀において生産量は一貫して低下しており、この傾向には複数の要因が影響しています。

データを見ると、1960年代からすでに一定の生産量変動が見られますが、それでも10,000トンから15,000トンの間で推移していました。この時期は、気候変動や世界市場の需要の変動にも影響を受けつつも、プエルトリコのコーヒー産業が持続可能であったことを示しています。しかしながら、1970年代以降、一部で減少傾向が顕在化し、1980年代後半には回復の兆しが見えたものの、1999年に再び急激な低下が始まりました。この低下は、輸出に依存する農業構造の弱点や生産インフラの老朽化といった構造的要因に起因していると考えられます。さらに、プエルトリコが直面している地政学的リスクや大型自然災害も、同じく生産量の減少に大きく寄与しています。

2017年、ハリケーン「マリア」が島全体を襲った際には、コーヒー生産が壊滅的な打撃を受けただけでなく、多くの農地やインフラが完全に破壊されました。その直後の2018年には975トンと歴史的な最低生産量を記録し、それ以降のデータは依然として回復の兆しを見せていません。また、気候変動の進行による異常高温や降雨パターンの変化、害虫や病気の増加も、コーヒー栽培環境を悪化させています。

生産減少に加え、人材不足や高齢化が深刻化しています。農村の若年人口が減少し、コーヒー農業の技術が引き継がれていないことも問題です。その点で、プエルトリコの現状は、日本やヨーロッパなどの高齢化が進む地域と共通する課題を抱えています。

今後の課題としては、単に生産量を回復させることだけでなく、生産効率の向上や品質の特化、さらにはサステナブルな生産体制の構築が求められます。具体的な方策として、次のような取り組みが考えられます。まず、灌漑インフラや防災技術を導入し、自然災害や気候変動の影響を緩和する措置を取る必要があります。次に、政府や国際機関の支援を通じて、若い農業従事者への教育プログラムや補助金制度を強化し、コーヒー農業への参入を促すことが鍵です。その上で、地域間協力を刺激するプロジェクトを立ち上げ、他国(例えばコロンビアやブラジル)と技術やノウハウを共有し、生産環境を改善することが重要です。

さらに、産業の競争力向上のために、プエルトリコ産のコーヒーを世界市場で独自ブランドとして確立する取り組みを進めるべきです。南米産コーヒーとの価格競争が難しい場合でも、高品質で特化した高級市場を開拓することで持続可能性を高めることが可能です。

結論として、コーヒー豆生産量の急激な減少は単なる農業問題ではなく、気候変動、社会構造、政策不備といった複数の要因が絡み合う複雑な問題です。プエルトリコが再びその歴史的な地位を取り戻すためには、国際的な協力も取り入れた包括的なアプローチが必要となるでしょう。