Skip to main content

メキシコのコーヒー豆生産量推移(1961年~2023年)

国連食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、メキシコのコーヒー豆生産量は長期的にみると、1960年代から1980年代にかけて大きく増加しましたが、1990年代後半以降は減少傾向にあります。近年、特に2010年以降、生産量が200,000トンを下回る年が続き、2016年には最低値となる151,714トンを記録しました。その後、やや回復の兆しを見せ、2022年には181,706トンに達していますが、依然として1967年のピークである224,505トンを大幅に下回る水準にあります。このような推移は、国内外の市場需要、気候変動、病害の発生、国際価格の変動など、複合的な要因によるものと考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 194,916
7.27% ↑
2022年 181,706
4.22% ↑
2021年 174,341
-0.69% ↓
2020年 175,555
5.94% ↑
2019年 165,712
4.68% ↑
2018年 158,308
2.95% ↑
2017年 153,777
1.36% ↑
2016年 151,714
-19.7% ↓
2015年 188,934
-11.99% ↓
2014年 214,667
-7.31% ↓
2013年 231,596
-5.9% ↓
2012年 246,121
3.82% ↑
2011年 237,056
-3.35% ↓
2010年 245,271
-7.26% ↓
2009年 264,472
1.55% ↑
2008年 260,442
-3.02% ↓
2007年 268,565
-3.96% ↓
2006年 279,635
-5% ↓
2005年 294,364
-5.78% ↓
2004年 312,413
0.5% ↑
2003年 310,861
-0.69% ↓
2002年 313,027
3.31% ↑
2001年 302,996
-10.4% ↓
2000年 338,170
11.93% ↑
1999年 302,119
8.92% ↑
1998年 277,372
-24.69% ↓
1997年 368,315
-1.56% ↓
1996年 374,153
15.29% ↑
1995年 324,526
0.01% ↑
1994年 324,500
-3.32% ↓
1993年 335,627
-6.68% ↓
1992年 359,665
7.58% ↑
1991年 334,330
-24.02% ↓
1990年 440,000
28.12% ↑
1989年 343,440
-18.81% ↓
1988年 423,000
25.83% ↑
1987年 336,180
-10.31% ↓
1986年 374,828
44.06% ↑
1985年 260,197
8.47% ↑
1984年 239,870
-22.11% ↓
1983年 307,948
22.31% ↑
1982年 251,768
-4.24% ↓
1981年 262,904
19.48% ↑
1980年 220,040
-0.07% ↓
1979年 220,191
-8.86% ↓
1978年 241,602
32.74% ↑
1977年 182,010
-14.23% ↓
1976年 212,200
-7.04% ↓
1975年 228,264
3.4% ↑
1974年 220,767
-0.43% ↓
1973年 221,718
8.97% ↑
1972年 203,462
8.52% ↑
1971年 187,495
1.19% ↑
1970年 185,293
7.27% ↑
1969年 172,734
-18.77% ↓
1968年 212,656
-5.28% ↓
1967年 224,505
22.68% ↑
1966年 183,005
12.86% ↑
1965年 162,149
3.62% ↑
1964年 156,477
14.16% ↑
1963年 137,069
-1.95% ↓
1962年 139,794
10.41% ↑
1961年 126,616 -

メキシコは世界でも重要なコーヒー生産国のひとつであり、多くの地域で雇用や経済を支える主要産業とされています。しかし、その生産量は時代ごとに著しく変動しており、1960年代から1990年にかけて増加を続け、ピーク時の440,000トンに達しました。この増加は、国際市場における需要の高まりや政府の生産奨励策によるものでした。しかし、1990年代後半から2000年代にかけて、急速な減少が起こりました。その背景には、国際的なコーヒー豆価格の急落や、新型のサビ病(コーヒーさび病、ラ・ロヤ)の流行が挙げられます。この病害はコーヒー農園に壊滅的な打撃を与え、生産性の低下を招きました。

さらに近年では、気候変動がメキシコのコーヒー産業に大きな影響を与えています。気温の上昇や雨量の不規則化により、従来コーヒー栽培に適していた地域が不安定となり、一部では生産そのものが難しくなっています。特に2016年はピーク時の生産量と比較して、約1/3にまで低下しました。この数字は、生産国としての競争力が大きく弱体化していることを示しています。

他の主要なコーヒー生産国、例えばブラジルやベトナムは、近代的な栽培技術や病害対策を積極的に導入し、生産量の増加を達成しています。一方、メキシコでは、技術革新とインフラ整備が十分ではなく、多くの小規模農家が対応策を取れないまま、低収量に苦しむ状況が続いています。

将来に向けた課題としては、より持続可能なコーヒー生産モデルの構築が急務です。その一環として、気候変動に耐性のある新しいコーヒー品種の開発や、病害対策の強化が挙げられます。また、農家が高付加価値製品としてプレミアムコーヒーやオーガニックコーヒーを生産できるようなサポート体制を整える必要があります。これにより、国際市場での競争力を取り戻すだけでなく、農家の生活向上にもつながるでしょう。

地政学的な要因についても見逃せません。アメリカ合衆国をはじめとする大消費地域への輸出依存が高いことから、国際貿易摩擦や政治的な影響が生産業に波及するリスクがあります。これに対して、他のアジア諸国やヨーロッパ市場との取引ルートを多角化することが、安全保障の観点からも有効な対策となります。

そのほか、新型コロナウイルスの感染拡大による輸送や労働力面での障害も、生産量の低下に拍車をかけました。都市部への偏重や移住労働者の減少により、一部の生産地域では人手不足という新たな問題も浮上しています。これらの課題に対し、国や国際機関が協力し、効率的な輸送網確立や農地再生計画を進めることが重要です。

結論として、メキシコのコーヒー生産は過去に比べ停滞していますが、適切な政策と技術支援のもとで回復の可能性が十分にあります。そのためには、政府と地元農家、さらには国際的なコーヒー企業が連携し、持続可能なアプローチを追求することが鍵となります。明確な戦略を立てることで、メキシコのコーヒー産業は再び活気を取り戻せると考えられます。