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スリランカのコーヒー豆生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、スリランカのコーヒー豆生産は過去数十年間で大きな変動を経験しています。一時的な増加期を経て、2020年以降は再び低迷傾向にあります。ピークとなる1983年の16,600トンから2022年の4,828トンまで大幅に減少しており、近年は持続的生産の確保が課題となっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 4,750
-1.62% ↓
2022年 4,828
-9.01% ↓
2021年 5,306
-21.09% ↓
2020年 6,725
37.6% ↑
2019年 4,887
-24.17% ↓
2018年 6,445
18.67% ↑
2017年 5,431
-2.9% ↓
2016年 5,593
-4.66% ↓
2015年 5,866
-3.66% ↓
2014年 6,089
9.32% ↑
2013年 5,570
0.18% ↑
2012年 5,560
4.51% ↑
2011年 5,320
1.53% ↑
2010年 5,240
-3.14% ↓
2009年 5,410
-0.73% ↓
2008年 5,450
-9.92% ↓
2007年 6,050
-6.35% ↓
2006年 6,460
-10.77% ↓
2005年 7,240
-5.61% ↓
2004年 7,670
-15.81% ↓
2003年 9,110
-6.85% ↓
2002年 9,780
-4.21% ↓
2001年 10,210
4.29% ↑
2000年 9,790
-7.47% ↓
1999年 10,580
0.78% ↑
1998年 10,498
-7.49% ↓
1997年 11,348
-3.5% ↓
1996年 11,760
2.43% ↑
1995年 11,481
3.84% ↑
1994年 11,056
9.57% ↑
1993年 10,090
16.35% ↑
1992年 8,672
10.32% ↑
1991年 7,861
3.89% ↑
1990年 7,567
11.94% ↑
1989年 6,760
20.71% ↑
1988年 5,600
-7.13% ↓
1987年 6,030
7.26% ↑
1986年 5,622
-39.55% ↓
1985年 9,300
-11.43% ↓
1984年 10,500
-36.75% ↓
1983年 16,600
25.96% ↑
1982年 13,179
5.43% ↑
1981年 12,500
6.95% ↑
1980年 11,688
15.72% ↑
1979年 10,100
-18.01% ↓
1978年 12,318
18.59% ↑
1977年 10,387
17.02% ↑
1976年 8,876
0.43% ↑
1975年 8,838
2.48% ↑
1974年 8,624
22.64% ↑
1973年 7,032
3.32% ↑
1972年 6,806
-18.57% ↓
1971年 8,358
14.4% ↑
1970年 7,306
-33.24% ↓
1969年 10,943
9.21% ↑
1968年 10,020
-12.78% ↓
1967年 11,488
72.49% ↑
1966年 6,660
-4.97% ↓
1965年 7,008
-16.52% ↓
1964年 8,395
52.08% ↑
1963年 5,520
47.04% ↑
1962年 3,754
-6.2% ↓
1961年 4,002 -

スリランカのコーヒー生産量の推移についてデータを細かく見ると、1960年代から1980年代前半までは比較的安定した増加傾向が見られます。この間、特に1977年から1983年にかけては持続的な成長が達成され、1983年には16,600トンでピークを迎えました。これは、当時の農業技術の改善や増加する輸出需要に後押しされた結果と考えられます。しかし、それ以降では生産量が大幅に減少し、2000年代以降は特に長期的な低迷期に入ることになります。

1980年代半ば以降の生産量低下の背景には、いくつかの地政学的および自然環境要因が関連していると考えられます。地政学的には、スリランカが国内紛争を経験した影響で、農業インフラや輸出産業が打撃を受けました。この時期に人的資源や資金がコーヒー生産から他の主要作物へと移行したことが、低迷の一因とも言われています。また、気候変動による雨量の変化や高温の影響も、コーヒーの品質と収穫量にとって大きな課題でした。

さらに、スリランカではコーヒーのさび病(コーヒーリーフラスト)という疫病も生産低迷の要因として挙げられます。この病は特に湿度の高い地域で発生しやすく、葉の壊死を引き起こして生産量を減らします。スリランカ農家にとって、病害対策や耐病性のある品種の導入が欠かせない課題となっています。新型コロナウイルスのパンデミックが2020年以降にもたらした輸送コストの増加や需要不確実性も、さらに支障を加えました。

コーヒー生産の長期的な低迷は農業政策にも影響を及ぼし、国際市場競争力の喪失や輸出収益の減少という形でスリランカ経済全体にも負担をかけています。世界的な生産量を見てみると、コーヒー産業で主要な地位を占めるブラジル、ベトナム、コロンビアなどと比べて、スリランカの市場シェアはごくわずかです。また、近隣のインドも近年コーヒー豆輸出を成長産業と位置付け、積極的な支援を行っています。同じ南アジア地域での競争も激化している現状です。

スリランカのコーヒー生産復興のためには、いくつかの具体的な取り組みが必要です。まず、耐病性の高い品種の開発とその導入が重要です。これにより、気候変動や疫病へのリスクを軽減できます。また、小規模農家向けに最新の農業技術や資金支援を提供する仕組みを強化することも課題です。政府と国際的な支援機関が連携して気候変動対策や持続可能な農業技術の普及を推進することが求められます。

さらに、地域間協力の枠組みを作ることで、輸出のための物流や市場へのアクセスを改善する可能性があります。同時に、高品質なコーヒーを生産することでプレミアム市場への参入を図ることも現実的な戦略です。スリランカのコーヒー産業を活性化するには、単純な生産量の向上だけでなく、ブランド価値を高める取り組みが重要と言えるでしょう。

結論として、スリランカがかつてのピークを取り戻すためには、多岐にわたる施策を組み合わせる必要があります。特に農業技術、病害対策、気候変動への適応能力を強化し、国際市場での競争力を持つ産業基盤を構築することが目指されるべきでしょう。こうした取り組みが成功すれば、スリランカのコーヒー産業は再び持続可能な未来を描くことができるでしょう。