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アルゼンチンの大麦生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が最新の2024年データとして更新したアルゼンチンの大麦生産量の推移を見ると、その歴史には大きな変動が見られます。1961年に約80万トンであった生産量は、1970年代から1980年代にかけて減少し、その後2000年以降、特に2010年から2013年にかけて著しい増加を示しました。その後は再び上下を繰り返していますが、2022年には過去の最高値である約527万トンを記録し、その勢いは直近まで続いています。このデータから、アルゼンチンの大麦生産にはさまざまな農業政策や気候条件が影響してきたことがわかります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 4,695,914
-11.06% ↓
2022年 5,279,608
30.81% ↑
2021年 4,036,130
11.72% ↑
2020年 3,612,804
-4.54% ↓
2019年 3,784,823
-25.22% ↓
2018年 5,061,069
35.28% ↑
2017年 3,741,158
-24.25% ↓
2016年 4,938,723
70.21% ↑
2015年 2,901,495 -
2014年 2,901,492
-38.33% ↓
2013年 4,705,160
-8.78% ↓
2012年 5,158,180
26.25% ↑
2011年 4,085,770
37.84% ↑
2010年 2,964,075
118.62% ↑
2009年 1,355,801
-19.39% ↓
2008年 1,681,880
14.06% ↑
2007年 1,474,510
16.24% ↑
2006年 1,268,465
58.67% ↑
2005年 799,423
-10.64% ↓
2004年 894,610
-11.02% ↓
2003年 1,005,460
82.87% ↑
2002年 549,830
3.73% ↑
2001年 530,045
-26.64% ↓
2000年 722,490
72.2% ↑
1999年 419,556
-22.07% ↓
1998年 538,408
-41.84% ↓
1997年 925,790
72.58% ↑
1996年 536,443
39.03% ↑
1995年 385,848
11.94% ↑
1994年 344,692
-24.98% ↓
1993年 459,439
-21.22% ↓
1992年 583,200
1.72% ↑
1991年 573,360
75.55% ↑
1990年 326,600
-10.46% ↓
1989年 364,770
10.94% ↑
1988年 328,800
16.72% ↑
1987年 281,700
101.36% ↑
1986年 139,900
18.56% ↑
1985年 118,000
-47.32% ↓
1984年 224,000
34.94% ↑
1983年 166,000
-21.48% ↓
1982年 211,400
60.76% ↑
1981年 131,500
-39.4% ↓
1980年 217,000
-35.99% ↓
1979年 339,000
-38.81% ↓
1978年 554,000
56.94% ↑
1977年 353,000
-53.55% ↓
1976年 760,000
45.4% ↑
1975年 522,700
21.56% ↑
1974年 430,000
-41.26% ↓
1973年 732,000
-16.82% ↓
1972年 880,000
59.13% ↑
1971年 553,000
50.68% ↑
1970年 367,000
-35.61% ↓
1969年 570,000
2.52% ↑
1968年 556,000
-5.44% ↓
1967年 588,000
34.25% ↑
1966年 438,000
8.42% ↑
1965年 404,000
-51.09% ↓
1964年 826,000
-19.02% ↓
1963年 1,020,000
195.65% ↑
1962年 345,000
-56.88% ↓
1961年 800,000 -

アルゼンチンの大麦生産量は、1960年代には80万トン前後を維持しながらも1962年や1965年に大きく減少するなど、不安定な動きを見せていました。この頃は、主に小麦生産を含む他の農業生産が優先され、大麦の栽培面積と施策が限定的であったことが背景にあります。しかし、1970年代に向けても引き続き増加と減少を繰り返し、特に1980年代には10万~30万トン程度と歴史的な低迷期を経験しました。この低迷は、アルゼンチンの経済問題や大麦市場への投資不足、さらに耕地転換の影響などが原因とされています。

1990年代に入ると、国内の農業改革や品種改良の進展、さらに輸出市場に向けた施策によって再び40万~60万トンという生産量を維持するようになりました。1997年に約92万トンを記録したことは、アルゼンチン大麦生産の一つの転換点とみることができます。2000年代には、技術革新、農地の拡大、さらに気候の改善などを背景に生産量が安定的に上昇し、2006年に126万トン、さらに2010年には驚異的な約296万トンとなりました。この急激な増加は、主に大麦がビールの原材料として世界的な需要が高まったこと、アルゼンチンの農産物輸出の競争力が強化されたことと関連しています。

2012年には過去最高の515万トンを記録し、アルゼンチンは世界的な大麦生産の中心的な役割を果たすようになりました。しかしながら、その後の2014年や2015年には減少し、300万トン前後となるなど、再び不安定な状況が見られます。この変動は、エルニーニョ現象など特定の気象条件が収量に影響を与えた可能性があります。また、2022年の527万トンという記録的な成果は、農業政策や輸出の活発化が影響していると考えられます。

他国との比較を行うと、同じ南米地域ではブラジルが主にトウモロコシ生産を中心としているため、大麦においてアルゼンチンは地域のリーダーです。一方で、ドイツやフランスなどのヨーロッパ勢、中国やオーストラリアといった生産大国に比べると、輸出拡大にはさらなる政策とインフラの投資が求められる状況といえます。

この生産推移は、アルゼンチンが気候の変動や国際市場の需要に適応しながら大麦の収量を最大化してきた証といえますが、まだ課題も山積しています。まず、気候変動による干ばつや豪雨のリスクが収量に大きな影響を与えるため、耐性品種の開発や灌漑施設の整備が急務です。また、国内需要を十分に満たしつつ輸出をさらに強化するために、大麦関連の付加価値産業、特にビール生産など加工産業との連携をより深める必要があります。

地政学的背景としては、アルゼンチンは世界的な輸出国である中国やEU市場へのアクセス強化を進めており、これが大麦産業の発展に寄与しています。ただし、国際市場における競争力を高めるためには港湾施設の改善や輸送コストの削減も重要です。また、新型コロナウイルスのパンデミックやウクライナ危機が一部の農産物市場に波及した影響も見逃せず、こうした外的要因への対応策も必要です。

今後アルゼンチンが取るべき具体的な対策として、大麦生産の安定化に向けた研究開発投資や持続可能な農業技術の導入、さらに国際マーケティングの強化が挙げられます。また、輸出先の多様化や地域間協力の強化を進めることで、潜在的な市場リスクを軽減できるでしょう。これらの施策を通じて、アルゼンチンは長期的な食糧安全保障の確保と経済の安定に貢献できると考えます。