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アルゼンチンのバナナ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、アルゼンチンのバナナ生産量は1960年代から現在に至るまで大きな変動を経験してきました。特に1970年代には大幅な増加を見せましたが、1980年代以降は安定的な水準に落ち着き、直近の2022年には176,655トンとなっています。全体的に見ると、生産が安定する一方で、ピーク時の勢いに比べると控えめな成長が続いている状況です。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 176,676
0.01% ↑
2022年 176,655
0.1% ↑
2021年 176,473
0.1% ↑
2020年 176,290
-0.16% ↓
2019年 176,570
0.02% ↑
2018年 176,530
0.07% ↑
2017年 176,410
0.1% ↑
2016年 176,237
0.09% ↑
2015年 176,076
0.11% ↑
2014年 175,891
0.32% ↑
2013年 175,334
0.07% ↑
2012年 175,203
0.17% ↑
2011年 174,901
2.26% ↑
2010年 171,039
0.61% ↑
2009年 170,000
-5.56% ↓
2008年 180,000
-1.1% ↓
2007年 182,000
0.55% ↑
2006年 181,000
2.23% ↑
2005年 177,058
0.93% ↑
2004年 175,418
-0.17% ↓
2003年 175,719
-2.38% ↓
2002年 180,000
2.95% ↑
2001年 174,845
-0.09% ↓
2000年 175,000 -
1999年 175,000
1.24% ↑
1998年 172,850
7.49% ↑
1997年 160,800
37.03% ↑
1996年 117,350
-31.41% ↓
1995年 171,084
20.32% ↑
1994年 142,190
-21.54% ↓
1993年 181,220
-0.8% ↓
1992年 182,680
-5.93% ↓
1991年 194,200
-3.17% ↓
1990年 200,558
-4.47% ↓
1989年 209,937
-35.12% ↓
1988年 323,600
33.17% ↑
1987年 243,000
27.89% ↑
1986年 190,000
16.28% ↑
1985年 163,400
1.49% ↑
1984年 161,000
27.68% ↑
1983年 126,100
42.16% ↑
1982年 88,700
15.19% ↑
1981年 77,000
-47.33% ↓
1980年 146,200
1.53% ↑
1979年 144,000
11.89% ↑
1978年 128,700
-41.5% ↓
1977年 220,000
-20.72% ↓
1976年 277,500
-25.78% ↓
1975年 373,900
-6.38% ↓
1974年 399,400
13.41% ↑
1973年 352,160
12.62% ↑
1972年 312,700
39.1% ↑
1971年 224,800
0.61% ↑
1970年 223,440
58.58% ↑
1969年 140,900
164.06% ↑
1968年 53,360
-58.83% ↓
1967年 129,616
24.92% ↑
1966年 103,760
180.43% ↑
1965年 37,000
-43.51% ↓
1964年 65,500
80.04% ↑
1963年 36,380
-23.01% ↓
1962年 47,250
305.61% ↑
1961年 11,649 -

アルゼンチンのバナナ生産量の推移を振り返ると、初期の1960年代にはわずか数万トンで、その後1960年代後半から1970年代初頭にかけて大幅な成長を遂げた事が分かります。この時期には、1961年の11,649トンから1970年には223,440トンへと約20倍近く拡大しました。この急激な伸びは、政府の農業振興政策の強化や輸出市場の開拓、そして栽培技術の向上などが要因として考えられます。

しかしながら、1970年代半ば以降には成長速度が鈍化し始め、1976年以降は安定性を欠く形となります。その後、1980年代以降は再び上向き基調となりますが、年間生産量30万トンを超えたピーク時の水準には到達していません。これは国際市場での競争激化や輸送・物流などのインフラ課題、そしてバナナ栽培の集中化に限界があったためと推測されます。

近年は2010年以降を通じて、おおむね17万トン台で安定推移しており、特に2018年から2022年にかけては176,500トン前後の小幅な増減にとどまっています。この期間の生産量の安定性からは、国内の需要と供給が一定の均衡を保っていることが読み取れます。しかしながらこの生産水準は、輸出促進や新しい市場開拓を考える際の課題となります。特に、近年のバナナ生産では、アジアや中南米諸国(例えば、フィリピンやエクアドルなどの大規模輸出国)が主導する市場競争が激化しており、アルゼンチンの現在の生産量が国際的な需要に応じるには増産や品質向上が必要でしょう。

加えて、地政学的リスクもこの動態に影響を与えています。特に東南アジアやアメリカ大陸でのバナナ生産の外的要因(紛争、気候変動、疾病の流行など)が、国際価格や輸出条件に影響を及ぼしやすい業界構造となっています。このため、アルゼンチンが生産量を増加させることができれば、そうした市場変動に対応できる柔軟性のあるポジションを確立できる可能性があります。

課題としては、農業従事者への技術支援や効率的な栽培法の導入、気候変動への適応策、そして輸送・物流インフラの整備が挙げられます。例えば、新しい灌漑技術の導入や、バナナ特有の病害であるパナマ病の予防策を講じることが、生産の拡大や収穫効率の向上に寄与すると考えられます。また、地域間協力の枠組み作りも重要であり、近隣諸国と連携することで貿易量や相互支援を向上させることが可能です。

さらに、バナナは国内消費において重要な作物であるため、輸出拡大だけではなく国内市場を強化する施策も必要です。例えば、健康志向の高まりを活用してバナナ消費のプロモーション活動を行うことで、需要を底上げすることが期待されます。最後に、政府による農家への適切な補助制度や、持続可能な農業政策が不可欠です。

以上の観点を踏まえると、アルゼンチンのバナナ産業のポテンシャルは十分存在しています。今後は、技術イノベーションの積極導入と、持続可能性を意識した政策の実施により、生産量を再び拡大し、国際市場で競争力のある地位を目指すことが肝要といえるでしょう。