Skip to main content

アルゼンチンの馬肉推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データ(2024年7月更新)によると、アルゼンチンの馬肉生産は、1960年代から数十年の間に大きな変動を伴いながらも、長期的には減少傾向を見せています。特に1961年の27,520トンから1964年の87,750トンまで急増した後、1980年代中頃からは一定の水準で推移していました。2000年代以降は再び減少傾向が顕著となり、2023年には19,415トンと、過去60年以上で最低水準に近い生産量となっています。

年度 (トン) 増減率
2023年 19,415
-12.11% ↓
2022年 22,091
-8.56% ↓
2021年 24,159
19.66% ↑
2020年 20,189
-17.59% ↓
2019年 24,498
-5.54% ↓
2018年 25,934
15.51% ↑
2017年 22,452
12.39% ↑
2016年 19,977
6.31% ↑
2015年 18,791
-7.63% ↓
2014年 20,344
1.77% ↑
2013年 19,990
-6.14% ↓
2012年 21,297
-26.62% ↓
2011年 29,023
-10.44% ↓
2010年 32,407
-14.07% ↓
2009年 37,712
-4.55% ↓
2008年 39,509
-21.3% ↓
2007年 50,200
-3.46% ↓
2006年 52,000
8.33% ↑
2005年 48,000
4.35% ↑
2004年 46,000
-17.27% ↓
2003年 55,600
0.18% ↑
2002年 55,500
11.38% ↑
2001年 49,829
-9.33% ↓
2000年 54,955
-0.08% ↓
1999年 55,000
26.36% ↑
1998年 43,527
-7.84% ↓
1997年 47,229
-0.23% ↓
1996年 47,336
-1.44% ↓
1995年 48,026
-3.79% ↓
1994年 49,919
-0.16% ↓
1993年 50,000
4.6% ↑
1992年 47,800
4.82% ↑
1991年 45,600
4.83% ↑
1990年 43,500
3.57% ↑
1989年 42,000 -
1988年 42,000
2.74% ↑
1987年 40,881
13.8% ↑
1986年 35,924
-16.1% ↓
1985年 42,818
-14.36% ↓
1984年 50,000 -
1983年 50,000 -
1982年 50,000
13.59% ↑
1981年 44,018
6.65% ↑
1980年 41,274
-25.79% ↓
1979年 55,619
3.96% ↑
1978年 53,500
1.45% ↑
1977年 52,737
13.01% ↑
1976年 46,666
30.89% ↑
1975年 35,652
10.97% ↑
1974年 32,128
-45.28% ↓
1973年 58,711
-29.14% ↓
1972年 82,855
8.21% ↑
1971年 76,571
-10.4% ↓
1970年 85,461
5.51% ↑
1969年 81,000
15.69% ↑
1968年 70,013
2.93% ↑
1967年 68,022
5.46% ↑
1966年 64,499
-21.26% ↓
1965年 81,911
-6.65% ↓
1964年 87,750
51.29% ↑
1963年 58,000
48.8% ↑
1962年 38,979
41.64% ↑
1961年 27,520 -

アルゼンチンは、伝統的に農業や牧畜が経済の中心であり、肉類生産の分野では牛肉や羊肉が国際市場で知られています。一方で、馬肉生産も同様に長い歴史を持つ分野ですが、その動向は複雑です。FAOのデータによれば、1960年代における馬肉生産量が急増した背景には、輸出市場の需要拡大があったと考えられます。特に、ヨーロッパを中心とした馬肉消費の拡大がアルゼンチンの生産を牽引しました。しかしながら、1970年代後半には経済の変動や国内需要の減少により、一時的に生産量が低迷しています。

1980年代から1990年代にかけてのデータを見てみると、この期間の生産量は約40,000トンから50,000トンの間で安定しています。この時期は国際市場での需要が一定であっただけでなく、アルゼンチン国内での馬肉の利用が続いていたことがその要因として挙げられます。しかし、2000年代後半以降、生産量は再び減少傾向を示しはじめました。その要因として、国内および国外の需要の減少や、動物福祉に対する意識の高まりが影響していると考えられます。また、アルゼンチン国内では馬肉が牛肉ほど一般的ではないことから、内需が育たないまま推移している可能性があります。

さらに2023年時点での生産量は19,415トンと、長期的なトレンドとしては低水準です。この背景には、気候変動の影響や農地の縮小、輸出規制の強化など、いくつかの地政学的な要因が加わっています。加えて、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、輸出の停滞や生産体制の縮小といった問題が発生したことが大きな課題として指摘できます。

今後の課題としては、国際市場での需要の回復を見通した輸出政策の立案が求められるでしょう。例えば、ヨーロッパやアジアにおける特定市場の開拓や、馬肉の品質向上および安全性を強調したプロモーション戦略が必要です。また、国内市場の発展を図るためには、馬肉料理の文化的イメージを再評価し、消費者に受け入れられる形での再プロモートを進めることが考えられます。さらに、動物福祉や環境保護の観点に沿った生産手法を採用することで、持続可能な生産体制を構築することが不可欠です。

地政学的背景として、アルゼンチンの主要な農業輸出先であるヨーロッパは、馬肉の輸入に関して厳しい規制を設けており、これがアルゼンチン生産者に対する圧力として影響しています。これに対抗するためには、農業関連の国際基準を遵守し、品質向上を裏付ける認証取得を推進することが重要です。

結論として、アルゼンチンの馬肉産業の現状は低迷していますが、それは国内および国際的な課題への適応不足が一因です。今後の対応策として、輸出促進、国内需要の喚起、そして持続可能な生産体制の確立が挙げられます。同時に、環境と動物福祉への配慮を伴った政策の導入が、国際市場での信頼性向上に寄与するでしょう。