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アルゼンチンのナシ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、アルゼンチンのナシの生産量は長期的には増加傾向にあるものの、2000年代後半以降、全体的に生産量の変動が大きい状況が続いています。2023年の生産量は653,838トンで、ここ数年の中で比較的高い水準を記録しています。一方で、2013年のピーク時の890,000トンに比べると減少がみられます。この変動の背景には、気候変動、国内外の需要変化、生産コストの上昇といった複合的な要因があると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 653,838
15.47% ↑
2022年 566,227
-10.69% ↓
2021年 634,000
-3.79% ↓
2020年 659,000
10.92% ↑
2019年 594,143
5.03% ↑
2018年 565,697
9.26% ↑
2017年 517,754
-0.89% ↓
2016年 522,414
-15.65% ↓
2015年 619,305
-12.03% ↓
2014年 704,019
-20.9% ↓
2013年 890,000
7.86% ↑
2012年 825,115
1.54% ↑
2011年 812,633
21.29% ↑
2010年 670,000
-10.67% ↓
2009年 750,000
1.35% ↑
2008年 740,000
2.78% ↑
2007年 720,000
-4% ↓
2006年 750,000
0.17% ↑
2005年 748,727
27.03% ↑
2004年 589,429
-7.76% ↓
2003年 639,029
18.93% ↑
2002年 537,297
-8.19% ↓
2001年 585,249
13.96% ↑
2000年 513,554
-4.29% ↓
1999年 536,549
-0.17% ↓
1998年 537,458
0.92% ↑
1997年 532,538
10% ↑
1996年 484,118
0.65% ↑
1995年 481,000
31.78% ↑
1994年 365,000
14.25% ↑
1993年 319,470
5.5% ↑
1992年 302,810
1.67% ↑
1991年 297,830
26.15% ↑
1990年 236,100
5.54% ↑
1989年 223,700
5.92% ↑
1988年 211,200
-15.79% ↓
1987年 250,800
52.09% ↑
1986年 164,900
-14.34% ↓
1985年 192,500
15.27% ↑
1984年 167,000
-5.11% ↓
1983年 176,000
28% ↑
1982年 137,500
5.77% ↑
1981年 130,000
-16.13% ↓
1980年 155,000
-3.13% ↓
1979年 160,000
6.67% ↑
1978年 150,000
-6.25% ↓
1977年 160,000
30.29% ↑
1976年 122,800
26.34% ↑
1975年 97,200
-11.64% ↓
1974年 110,000
154.63% ↑
1973年 43,200
-55.87% ↓
1972年 97,900
31.76% ↑
1971年 74,300
-20.92% ↓
1970年 93,950
-8.43% ↓
1969年 102,600
-8.23% ↓
1968年 111,800
-6.05% ↓
1967年 119,000
45.12% ↑
1966年 82,000
-5.75% ↓
1965年 87,000
-17.14% ↓
1964年 105,000
7.14% ↑
1963年 98,000
-14.04% ↓
1962年 114,000
50% ↑
1961年 76,000 -

アルゼンチンは、世界有数の農業大国であり、その中でもナシは同国の重要な果物の一つです。1960年代の初期におけるナシの生産量は約70,000トン台から始まり、その後1970~1980年代にかけて徐々に増加していきました。特に1987年には250,800トンとなり、生産規模が大幅に拡大しました。この成長は、栽培技術の向上や輸出市場の開拓が進んだことにより実現されました。

1990年代にはさらなる成長を遂げ、1997年に初めて50万トンを超える高水準の生産量を達成しました。その後の10年以上、50万~70万トン台で安定した高水準を維持していましたが、2013年にはナシ生産のピークに達し、890,000トンを記録しました。この時期の記録的な生産量は、世界市場での需要の高まりと、輸出向け品質の改良が要因として挙げられます。

しかし、2014年以降は生産量が減少傾向となり、2016年には522,414トンまで落ち込みました。この減少には、気候変動による異常気象が影響しているとの見方があります。アルゼンチンはナシ生産地域において、特に霜や干ばつといった気象災害の影響を受けやすく、こうした要因が収穫量に直接的な影響を及ぼします。また、近年は生産コストの上昇、特にエネルギー費用や労働力確保のコストが高騰しており、これも生産の不安定化を促していると考えられます。

さらに、新型コロナウイルス感染症のパンデミックも2020年以降の生産動向に影響を及ぼしました。パンデミックの影響で輸出が一時的に制限されたほか、農業労働者の確保が困難となり、生産や物流の効率が低下しました。この結果、2022年の生産量は566,227トンと低水準でしたが、翌2023年には653,838トンに増加し、回復の兆しをみせています。

アルゼンチンのナシ生産は地元需要だけでなく、輸出市場でも高い重要性を持っています。特に中国やアメリカ、ヨーロッパ市場への輸出依存度が高く、これら地域での需要動向や規制変更がアルゼンチンの生産に直接影響します。他国との比較において、アルゼンチンは気候や土壌条件によってナシの高品質を維持していますが、生産量では中国やアメリカといった主要生産国には及びません。

今後の課題として、気候変動への対応が挙げられます。異常気象によるリスクを低減するためには、品種改良や灌漑技術の高度化が急務です。また、生産コストの削減や労働力確保のために、農業機械化や労働条件の改善が必要です。一方で、輸出市場のさらなる拡大に向け、輸出インフラの整備や市場アクセスの向上も求められます。

アルゼンチン政府や国際機関には、農家への技術支援や資金援助の提供を通じて、持続可能な生産体制を構築するためのリーダーシップを発揮することが期待されます。また、地域間協力の枠組みを活用し、例えば南米諸国との連携による物流や輸出の効率化を図るべきです。さらに、農業分野における気候リスク保険の導入や、気象データの収集・共有の強化も有効です。

結論として、アルゼンチンのナシ生産は長期的には成長を遂げ、国際的な供給市場で重要な役割を果たしてきましたが、短期的には変動が大きく、気候変動やコストの問題に直面しています。持続可能な農業の実現に向けた具体的な支援策が実施されることで、将来的にもナシ生産が国内外で重要なポジションを維持し続けることができるでしょう。