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アルゼンチンの桃(モモ)・ネクタリン生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、アルゼンチンの桃(モモ)・ネクタリンの生産量は過去数十年にわたり一定の変動を繰り返しています。1961年には18.6万トンから始まり、1960年代後半から1980年代にかけて増加傾向が見られたものの、その後は気候変動や経済的要因により不安定な推移が続きました。特に2020年代に入ると生産量が減少傾向となり、2023年には15.3万トンと低水準を記録しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 153,480
1.3% ↑
2022年 151,507
-9.55% ↓
2021年 167,500
65.84% ↑
2020年 101,000
-48.99% ↓
2019年 198,000
-12.39% ↓
2018年 226,000
151.94% ↑
2017年 89,705
-64.22% ↓
2016年 250,737
-5.74% ↓
2015年 266,000
6.4% ↑
2014年 250,000
201.2% ↑
2013年 83,000
-71.77% ↓
2012年 294,000
12.64% ↑
2011年 261,000
-1.88% ↓
2010年 266,000
-11.33% ↓
2009年 300,000
20.09% ↑
2008年 249,813
-7.48% ↓
2007年 270,000
3.85% ↑
2006年 260,000
-4.59% ↓
2005年 272,500
0.02% ↑
2004年 272,442
6.51% ↑
2003年 255,785
20.7% ↑
2002年 211,922
-17.79% ↓
2001年 257,768
22.96% ↑
2000年 209,634
-12.65% ↓
1999年 240,000
-8.27% ↓
1998年 261,648
13.62% ↑
1997年 230,274
-11.43% ↓
1996年 260,000
30.65% ↑
1995年 199,000
-18.35% ↓
1994年 243,722
-2.51% ↓
1993年 250,000
6.38% ↑
1992年 235,000
-2.08% ↓
1991年 240,000
9.09% ↑
1990年 220,000
-11.82% ↓
1989年 249,500
-4.04% ↓
1988年 260,000
32.52% ↑
1987年 196,200
-6.12% ↓
1986年 209,000
-27.28% ↓
1985年 287,400
19.25% ↑
1984年 241,000
-5.86% ↓
1983年 256,000
40.66% ↑
1982年 182,000
-18.02% ↓
1981年 222,000
-6.72% ↓
1980年 238,000
-15.6% ↓
1979年 282,000
12.8% ↑
1978年 250,000
-11.66% ↓
1977年 283,000
-1.7% ↓
1976年 287,900
14.29% ↑
1975年 251,900
-5.05% ↓
1974年 265,300
193.47% ↑
1973年 90,400
-65.93% ↓
1972年 265,300
-4.47% ↓
1971年 277,700
17.62% ↑
1970年 236,100
-4.95% ↓
1969年 248,400
10.79% ↑
1968年 224,200
10.28% ↑
1967年 203,300
79.91% ↑
1966年 113,000
-52.52% ↓
1965年 238,000
50.63% ↑
1964年 158,000
-15.05% ↓
1963年 186,000
1.64% ↑
1962年 183,000
-1.61% ↓
1961年 186,000 -

アルゼンチンは南米有数の農業国であり、桃やネクタリンといった果物の栽培も国内の重要な農産業の一部分を担っています。しかし、FAOのデータから見ると、桃・ネクタリンの生産量は過去数十年にわたり甚だしい変動を見せ、その要因として気候条件、農業政策の運用、さらには国際市場の動向が複合的に影響を与えていることが伺えます。

データによると、生産量は1960年代末から1970年代にかけて一定の拡大を示しました。1976年には28.7万トンに達し、当時の世界的な生産量の規模としては大きな成長を遂げていました。しかしその後の数十年間は、生産力が安定しない状況が続いています。近年では特に2020年から生産量が大きく低下しており、2020年には10.1万トン、2023年には15.3万トンと長期的に見ても低い生産水準となっています。この背景には気候変動による極端な干ばつや洪水、あるいは霜による農作物の被害が大きく影響している可能性があります。

さらに、アルゼンチンは経済的に不安定な状況にあることから、農業の効率化や技術的投資が遅れる傾向があります。また、輸出志向型の農業政策が一部果樹農家に圧力をかけているとも推測されます。特に桃・ネクタリンは、主要作物である大豆やトウモロコシに比べて収益性が低いことから、その生産が後回しにされがちです。また、2020年代に入る直前に発生した新型コロナウイルス感染症のパンデミックも農業サプライチェーンを大きく乱し、人材、輸送コスト、インフラ設備の整備に遅れが生じ、生産量の伸びが抑制されました。

日本や韓国、中国などの東アジア諸国では、桃は重要な果実文化を持つ作物であり、特に品質の高いものが求められます。一方、アメリカやヨーロッパでも安定した生産基盤を持つ国が多いため、アルゼンチン産の桃が国際市場において競争力を維持するには、農業モダン化と共に輸出市場のニッチを見極めることが重要です。

アルゼンチンの桃・ネクタリン産業にとっての課題は、気候変動への対応策に加え、効率性の向上と国内及び国際市場での需要目標を明確に設定することです。具体的対策としては、灌漑技術の導入、気候リスクを低減するための農業保険プログラムの推進、農家への長期的な投資支援を挙げることができます。また、品質向上を目指した生産技術の学習や新たな品種育成の支援も重要です。

さらに、地政学的な観点からは、アルゼンチン国内の穀物生産が食料安全保障と輸出収益の観点で優先される中、果物の生産振興が後手に回るリスクがあります。これに対応するためには、国際機関と協調し、特定の品目について持続可能な農業政策を広げていくことが鍵となります。

結論として、アルゼンチンの桃・ネクタリンの生産は、これまで安定しない状況が続いていますが、国内外の需要に対応しつつ生産量・品質の両方を向上させるポテンシャルを秘めています。今後は政府と農家、さらには国際機関が協力し、気候適応型の生産技術、資源保全、輸出市場向けの戦略を押し進めることが必要です。この分野の持続可能な発展が、アルゼンチン農業全体の多様性強化にもつながるでしょう。