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アルゼンチンのブドウ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、アルゼンチンのブドウ生産量は長期的な波動を見せながらも、近年は顕著な減少傾向が見られます。2023年の生産量は1,455,312トンと、1960年代以降で最も低い水準となっています。一方で、1980年代後半から1990年代前半の減少、2000年代中頃の回復、そして近年の再度の減少は、気候変動や経済状況といった多様な要因が絡んでいる可能性があります。この傾向は地域の農業政策や国際ワイン市場への影響を与える重要な課題を示しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,455,312
-24.86% ↓
2022年 1,936,803
-13.59% ↓
2021年 2,241,420
9.03% ↑
2020年 2,055,746
-18.42% ↓
2019年 2,519,886
-2.08% ↓
2018年 2,573,311
30.94% ↑
2017年 1,965,206
11.76% ↑
2016年 1,758,418
-27.2% ↓
2015年 2,415,571
-8.33% ↓
2014年 2,635,109
-8.24% ↓
2013年 2,871,749
27.96% ↑
2012年 2,244,220
-22.35% ↓
2011年 2,890,296
10.33% ↑
2010年 2,619,661
20.08% ↑
2009年 2,181,567
-22.69% ↓
2008年 2,821,696
-8.76% ↓
2007年 3,092,509
7.34% ↑
2006年 2,880,927
1.81% ↑
2005年 2,829,711
6.74% ↑
2004年 2,650,972
13.32% ↑
2003年 2,339,460
2.55% ↑
2002年 2,281,190
-8.07% ↓
2001年 2,481,530
0.88% ↑
2000年 2,459,860
0.75% ↑
1999年 2,441,660
21.98% ↑
1998年 2,001,673
-19.35% ↓
1997年 2,481,910
21.67% ↑
1996年 2,039,893
-28.55% ↓
1995年 2,854,814
14.31% ↑
1994年 2,497,360
28.66% ↑
1993年 1,940,981
-8.73% ↓
1992年 2,126,620
2.16% ↑
1991年 2,081,620
-11.13% ↓
1990年 2,342,350
-21.15% ↓
1989年 2,970,586
-6.93% ↓
1988年 3,191,750
-13.59% ↓
1987年 3,693,546
44.1% ↑
1986年 2,563,235
13.78% ↑
1985年 2,252,870
-14.62% ↓
1984年 2,638,509
-24.71% ↓
1983年 3,504,470
-1.86% ↓
1982年 3,571,000
21.88% ↑
1981年 2,929,914
-5.08% ↓
1980年 3,086,772
-10.59% ↓
1979年 3,452,505
23.3% ↑
1978年 2,800,000
-17.65% ↓
1977年 3,400,000
-9.57% ↓
1976年 3,760,000
21.29% ↑
1975年 3,100,000
-12.13% ↓
1974年 3,528,000
35.17% ↑
1973年 2,610,000
0.38% ↑
1972年 2,600,000
-9.91% ↓
1971年 2,886,000
8.17% ↑
1970年 2,668,000
13.34% ↑
1969年 2,354,000
-9.11% ↓
1968年 2,590,000
-28.53% ↓
1967年 3,624,000
30.5% ↑
1966年 2,777,000
18.57% ↑
1965年 2,342,000
-7.94% ↓
1964年 2,544,000
-5% ↓
1963年 2,678,000
8.86% ↑
1962年 2,460,000
13.16% ↑
1961年 2,174,000 -

アルゼンチンは歴史的にブドウ生産量が多い国であり、特にワイン産業は国の輸出業の柱の一つです。FAOのデータによれば、アルゼンチンのブドウ生産量は1960年代から波を描きながら推移してきたものの、全体的にはピークと谷が周期的に繰り返される傾向が見られます。例えば、1967年には3,624,000トンと大きな生産量を記録しましたが、その後、1976年の過去最高値3,760,000トンの後、断続的に低下し1980年代半ばには再び最低水準に近づきました。

2000年代に入り、一時的な回復の兆しが見られました。2007年に3,092,509トン、2011年に2,890,296トンと、堅調な生産量が記録されました。しかし、近年は気候変動の影響とアルゼンチン国内の経済的課題が重なった結果、ブドウ生産量が大きく低下しています。2023年の生産量は1,455,312トンで、1961年からのデータの中で最低水準に至っています。

これを理解するためには、具体的な背景を探る必要があります。まず、気候変動の影響による極端な天候条件が、収穫量の変動を招いていることが考えられます。例えば、干ばつや洪水の増加は、ブドウ栽培に致命的な影響を与えることがあります。さらに、国内外での経済不安定性が農業生産を抑制している要因として挙げられます。アルゼンチンのインフレ率の高さや農業投資の停滞は、農家の生産意欲を低下させています。また、輸出産業としてのワインの需要変化や国際市場での競争力低下も加わり、ブドウ生産に影響を及ぼしているでしょう。

このままでは、アルゼンチンの伝統的なワイン輸出産業が国際的な競争において不利な立場に立たされる可能性があります。この課題に取り組むためには、いくつかの政策的、技術的対策が求められます。第一に、水の効率的利用を促進する灌漑技術や、耐乾燥性の高いブドウ品種の導入が有効です。このような技術の利用は、干ばつなどの気候変動リスクを軽減する助けになります。第二に、農業従事者への補助金や税制の優遇措置を提供し、生産コスト負担を軽減することで、農家を支援することが重要です。さらに、国際市場への輸出促進を目指した品質向上施策やマーケティングの充実も必要です。

地政学的リスクの観点から見ると、アルゼンチンのブドウ生産量の減少は、南米全般の農産物供給体制に波及効果を及ぼす可能性があります。特に、アジア市場におけるブドウやワインの供給減少は、価格の高騰や代替品の需要増加を引き起こす懸念があります。同時に、域内の他の主要栽培地との連携や技術共有は、地域全体の農業力の底上げに寄与するでしょう。

結論として、アルゼンチンのブドウ生産量の推移は、同国の産業競争力を占う重要な指標となっています。気候変動、経済的不安定性、国際市場の変化といった多面的な問題が絡み合う中で、持続可能な農業経営を目指すための革新的で協調的な取り組みが急務となっています。国際機関や地域的協力の枠組みを活用し、状況に適応した政策展開を進めることで、再び生産量の安定と増加が期待されるでしょう。