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アルゼンチンの茶葉生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)のデータによれば、アルゼンチンの茶葉生産量は1960年代には1万トン未満から始まり、その後、1990年代初頭に急激な増加を見せ、20万トンを超えました。2000年代以降も増加傾向が一時的に続きましたが、2020年代に入ってからは安定しつつもやや停滞気味の状況が見受けられます。特に、2022年の生産量は355,144トンと、最高記録の2011年(404,000トン)に比べて減少していることが特徴です。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 369,022
3.91% ↑
2022年 355,144
5.66% ↑
2021年 336,130
0.27% ↑
2020年 335,225
-7.4% ↓
2019年 362,000
0.56% ↑
2018年 360,000
1.69% ↑
2017年 354,000
-4.32% ↓
2016年 370,000
3.06% ↑
2015年 359,000
-0.55% ↓
2014年 361,000
3.14% ↑
2013年 350,000
-2.78% ↓
2012年 360,000
-10.89% ↓
2011年 404,000
0.5% ↑
2010年 402,000
28.85% ↑
2009年 312,000
-10.34% ↓
2008年 348,000
5.45% ↑
2007年 330,000
5.1% ↑
2006年 314,000
6.44% ↑
2005年 295,000
-3.59% ↓
2004年 306,000
0.66% ↑
2003年 304,000
-0.65% ↓
2002年 306,000
-0.97% ↓
2001年 309,000
-4.33% ↓
2000年 323,000
32.92% ↑
1999年 243,000
-2.02% ↓
1998年 248,000
5.53% ↑
1997年 235,000
14.63% ↑
1996年 205,000
-8.48% ↓
1995年 224,000
0.9% ↑
1994年 222,000
-6.72% ↓
1993年 238,000
17.82% ↑
1992年 202,000
1% ↑
1991年 200,000
296% ↑
1990年 50,505
1.88% ↑
1989年 49,575
55.87% ↑
1988年 31,806
-29.79% ↓
1987年 45,303
9.47% ↑
1986年 41,385
-11% ↓
1985年 46,500
12.11% ↑
1984年 41,478
1.65% ↑
1983年 40,804
23.59% ↑
1982年 33,015
44.9% ↑
1981年 22,785
-35.95% ↓
1980年 35,572
22.4% ↑
1979年 29,062
21.36% ↑
1978年 23,947
-38.69% ↓
1977年 39,060
26.41% ↑
1976年 30,900
-19.53% ↓
1975年 38,400
17.79% ↑
1974年 32,600
9.03% ↑
1973年 29,900
-1.97% ↓
1972年 30,500
2.01% ↑
1971年 29,900
15.89% ↑
1970年 25,800
18.89% ↑
1969年 21,700
16.67% ↑
1968年 18,600
6.9% ↑
1967年 17,400
-7.44% ↓
1966年 18,799
35.85% ↑
1965年 13,838
10.54% ↑
1964年 12,519
11.73% ↑
1963年 11,205
92.26% ↑
1962年 5,828
-10.14% ↓
1961年 6,486 -

アルゼンチンは、南米においてパラグアイ、ブラジルなどと並ぶ茶葉の主要生産国のひとつです。特にアルゼンチン北部のミシオネス州を中心に茶葉の栽培が盛んで、その多くが「ブラックティー」として世界市場に輸出されています。この50年以上の生産量データを見ると、アルゼンチンの茶産業がどのような発展を遂げてきたのかが明らかになります。

1960年代のアルゼンチン茶葉生産量は1万トン以下の水準で推移していましたが、1970年代に徐々に成長を見せ、1980年代後半には5万トンを安定して超える状況となりました。本質的な変化が起きたのは1990年代で、1991年から1993年にかけて生産量が一気に200,000トンを突破し、その後も20万トン以上を維持するようになっています。この急激な成長は、国内農業技術の向上や茶葉の国際需要増加、とりわけアメリカや欧州向けの輸出拡大が背景にあります。

2000年代に入ると30万トンを超える水準に到達し、特に2010年から2011年には40万トン台という歴史的な最高水準に達しました。これは、主に国際市場における茶の需要増加や、アルゼンチン政府の輸出促進策が実を結んだ結果と考えられます。しかし、それ以降は生産量が若干不安定になり、近年(2020〜2022年)は35万トン前後で推移しています。この原因として、近年の気候変動による天候不順、土壌の劣化、そして茶農業に対する労働力不足が挙げられます。

アルゼンチン茶産業の課題のひとつは、特定市場に依存した輸出構造です。アメリカやヨーロッパ諸国への依存度が高い一方で、アジア市場へ進出する努力が十分になされていない点が指摘されています。例えば、日本、中国、インドでは、近年、健康志向や多様な茶の嗜好の広がりから茶葉の需要が高まっていますが、アルゼンチンの茶葉がこれらの市場で広く認知されるにはまだ時間がかかると考えられます。

また、地政学的背景として、国際市場の価格変動や物流の問題も無視できません。新型コロナウイルスの蔓延およびその後の供給網の混乱は、輸出業界全体に負担をかけました。こうした不確実性は、輸出型産業である茶生産にも多大な影響を与える可能性があります。

さらに、自然災害や気候変動の影響にも注意が必要です。近年、ミシオネス州では異常降雨や干ばつが報告されており、これが茶葉の生産性に影響を及ぼしています。このような事態に対応するためには、灌漑技術の改良や、持続可能な農業実践への投資が必要です。

これらの課題を解消し、アルゼンチンが茶葉生産国としての地位をさらに強化するためには、いくつかの具体的な対策が考えられます。まず、新しい輸出市場を開拓するために、アジア市場に特化したマーケティング戦略を構築することが重要です。例えば、日本のような厳しい品質基準を持つ国に対しては、「有機栽培」や「サステイナブル」という特徴を打ち出すことで競争力を高めることができます。また、国内外の研究機関と連携し、気候変動対応型の茶栽培技術の開発にも注力する必要があります。

結論として、アルゼンチンの茶葉生産量は、過去数十年にわたり持続的な成長を遂げてきましたが、近年は停滞傾向にあります。この停滞を打破するためには、技術革新や新興市場への進出、さらには気候変動への対応策を強化することが重要です。これにより、アルゼンチンは南米のみならず世界をリードする茶生産・輸出国としての地位を確立し、さらなる発展を遂げることが期待されます。