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アルゼンチンの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新のデータによると、アルゼンチンの羊肉生産量は1960年代に最も高い水準を記録した後、長期的な減少傾向を示しています。1966年から1968年にかけて生産量が20万トン以上に達したピーク期がありましたが、その後急激に減少しました。特に1990年代後半から2000年初期には生産量が激減し、直近の2023年は44,381トンまで低下しています。このデータは、畜産業の変化や需要の低迷、その他の社会経済的および環境要因を反映している可能性があります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 44,381
8.41% ↑
2022年 40,939
-9.47% ↓
2021年 45,221
-14.28% ↓
2020年 52,752
-1.2% ↓
2019年 53,392
8.68% ↑
2018年 49,126
-2.94% ↓
2017年 50,616
-1.89% ↓
2016年 51,590
-10.45% ↓
2015年 57,609
-4.52% ↓
2014年 60,338
6.5% ↑
2013年 56,657
-3.91% ↓
2012年 58,962
-10.59% ↓
2011年 65,947
-11.38% ↓
2010年 74,412
65.36% ↑
2009年 45,000
-2.17% ↓
2008年 46,000
-5.93% ↓
2007年 48,900
-1.21% ↓
2006年 49,500
-4.26% ↓
2005年 51,700
15.66% ↑
2004年 44,700
-13.54% ↓
2003年 51,700
2.78% ↑
2002年 50,300
-38.73% ↓
2001年 82,093
64.19% ↑
2000年 50,000
11.11% ↑
1999年 45,000
-6.25% ↓
1998年 48,000
-17.24% ↓
1997年 58,000
-9.38% ↓
1996年 64,000
-20.99% ↓
1995年 81,000
-4.26% ↓
1994年 84,600
30.46% ↑
1993年 64,846
-1.38% ↓
1992年 65,755
-22.46% ↓
1991年 84,800
-0.24% ↓
1990年 85,000
0.65% ↑
1989年 84,448
1.31% ↑
1988年 83,353
-7.39% ↓
1987年 90,000
-8.16% ↓
1986年 98,000
-0.11% ↓
1985年 98,106
-9.99% ↓
1984年 109,000
-1.26% ↓
1983年 110,388
-0.41% ↓
1982年 110,848
-2.58% ↓
1981年 113,778
2% ↑
1980年 111,546
-14.42% ↓
1979年 130,339
0.04% ↑
1978年 130,281
-2.04% ↓
1977年 132,991
4.68% ↑
1976年 127,051
2.99% ↑
1975年 123,361
10.26% ↑
1974年 111,878
-12.26% ↓
1973年 127,506
-3.5% ↓
1972年 132,135
-24.54% ↓
1971年 175,101
-0.59% ↓
1970年 176,142
-8.76% ↓
1969年 193,043
-7.58% ↓
1968年 208,876
2.47% ↑
1967年 203,848
8.66% ↑
1966年 187,600
15.12% ↑
1965年 162,966
20.36% ↑
1964年 135,397
-10.11% ↓
1963年 150,629
-9.33% ↓
1962年 166,136
-0.17% ↓
1961年 166,416 -

アルゼンチンは伝統的に畜産が重要な産業となっている国であり、中でも牛肉が主力である一方で、羊肉は地域限定的な需要を持つ存在となっています。歴史的に見ると、1960年代後半にアルゼンチンの羊肉生産は記録的な水準に達しており、最盛期の1968年には208,876トンを生産しました。しかし、その後は長期的な生産量の低下を経験しています。この現象は、国内外での羊肉需要の低下、他の畜産物(特に牛肉や豚肉)へのシフト、さらには生産主体となる牧草地の利用方針の変化に関連していると考えられます。

1960年代のピーク期の後、アルゼンチンの羊肉生産は徐々に減少しました。1980年には生産量が10万トンを割り込み、1990年代後半にはさらなる激しい落ち込みを見せました。このような減少の要因の一つには、国際市場における羊肉の価格競争力の低下が挙げられます。他国、特にオセアニア地域(オーストラリアやニュージーランド)は、アルゼンチンよりも効率的な羊の牧養体制を構築しており、輸出市場を支配しています。また、国内的には主要な消費者層が牛肉に偏った嗜好を持つことが影響し、羊肉の需要が拡大しませんでした。

さらに、経済的および環境的な要因もアルゼンチンの羊肉生産量に影響を与えています。1990年代から2000年代にかけて、牧草地の利用が他の作物や牛の牧畜に転換され、羊の飼育頭数が減少しました。また、地球温暖化に伴う気候変動が牧草地に直接的な影響を与え、羊の生育条件が厳しくなったことも、生産量減少の一因とみられます。加えて、2021年以降の減少は、新型コロナウイルス感染症の影響による物流の混乱や経済の停滞、輸出需要の悪化とも結びついている可能性があります。

現状を鑑みると、アルゼンチンにおける羊肉生産の課題は明確です。まず、需要供給の構造が安定しておらず、国内の羊肉消費を拡大する施策が欠けています。さらに、輸出面での競争力を高めるためには、オセアニアのような効率的な生産体制の導入も必要とされています。地政学的な観点からも、アルゼンチンの経済的枠組みを強化し、貿易パートナーとの連携を深めることが重要です。

未来に向けた対策として、まず国内市場の育成が挙げられます。アルゼンチン国内で羊肉の価値を再評価し、特に健康志向の高まりを利用して、羊肉が持つ栄養面での利点をアピールするキャンペーンを展開することが考えられます。また、牧草地の利用を見直し、気候変動対策を講じつつ、より持続可能な生産体制を導入する必要があります。さらに、輸出市場の拡大のため、オーガニックやグラスフェッド羊肉を主力商品化し、これを需要主体とする高所得国へのアピールを強化すべきです。

結論として、アルゼンチンの羊肉生産の現在の下降傾向を逆転させるためには、国内外の市場ニーズに即した政策を打ち出し、競争力を再構築する必要があります。そのためには、国内消費促進と持続可能な農業形態への転換、そして輸出市場の開拓が鍵となるでしょう。国際的な協力関係の強化や、牧草地経営の効率化を国レベルで主導していくことが、長期的な安定に繋がるのではないでしょうか。