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アルゼンチンの天然蜂蜜生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したアルゼンチンの天然蜂蜜生産量に関するデータによると、アルゼンチンは1960年代から一貫して世界的な蜂蜜生産大国として知られています。1961年の生産量は20,000トンでしたが、その後大きな変動を経ており、2005年には110,000トンでピークを迎えました。最近のデータでは、2022年の生産量が70,437トンと、ピーク時から減少傾向にあります。このデータから、過去数十年におけるアルゼンチンの蜂蜜生産量の推移を読み解き、特に近年の持続的減少の理由と影響について検討する必要があります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 73,395
4.2% ↑
2022年 70,437
-0.39% ↓
2021年 70,715
-2.03% ↓
2020年 72,183
-8.79% ↓
2019年 79,140
-0.41% ↓
2018年 79,468
4.04% ↑
2017年 76,379
12.12% ↑
2016年 68,123
29.51% ↑
2015年 52,600
-30.79% ↓
2014年 76,000
12.59% ↑
2013年 67,500
-11.18% ↓
2012年 76,000
5.56% ↑
2011年 72,000
22.03% ↑
2010年 59,000
-4.84% ↓
2009年 62,000
-13.89% ↓
2008年 72,000
-11.11% ↓
2007年 81,000
-22.86% ↓
2006年 105,000
-4.55% ↓
2005年 110,000
37.5% ↑
2004年 80,000
6.67% ↑
2003年 75,000
-9.64% ↓
2002年 83,000
3.75% ↑
2001年 80,000
-13.98% ↓
2000年 93,000
-5.1% ↓
1999年 98,000
30.67% ↑
1998年 75,000 -
1997年 75,000
31.58% ↑
1996年 57,000
-18.57% ↓
1995年 70,000
9.38% ↑
1994年 64,000
6.67% ↑
1993年 60,000
-1.64% ↓
1992年 61,000
12.96% ↑
1991年 54,000
14.89% ↑
1990年 47,000
17.5% ↑
1989年 40,000
-13.04% ↓
1988年 46,000
4.55% ↑
1987年 44,000
15.79% ↑
1986年 38,000
-24% ↓
1985年 50,000
42.86% ↑
1984年 35,000
-2.78% ↓
1983年 36,000
2.86% ↑
1982年 35,000
-7.89% ↓
1981年 38,000
1.06% ↑
1980年 37,600
4.44% ↑
1979年 36,000
2.86% ↑
1978年 35,000
94.44% ↑
1977年 18,000
-25% ↓
1976年 24,000
33.33% ↑
1975年 18,000
-40% ↓
1974年 30,000
36.36% ↑
1973年 22,000
4.76% ↑
1972年 21,000
16.67% ↑
1971年 18,000
-28% ↓
1970年 25,000
19.05% ↑
1969年 21,000
10.53% ↑
1968年 19,000
-32.14% ↓
1967年 28,000
55.56% ↑
1966年 18,000
-35.71% ↓
1965年 28,000
27.27% ↑
1964年 22,000
4.76% ↑
1963年 21,000
23.53% ↑
1962年 17,000
-15% ↓
1961年 20,000 -

アルゼンチンは、豊かな自然環境と広大な農地を持ち、高品質の天然蜂蜜を世界中に供給する重要な生産国です。1961年には20,000トンの蜂蜜を生産し、1970年代から1980年代にかけて生産量は着実に増加しています。特に1985年の生産量50,000トンを皮切りに、1990年代にかけて安定した成長を見せ、1999年には初めて98,000トンの大台を突破しました。2005年には110,000トンと過去最高値を達成しましたが、その後は上下の変動を繰り返しつつ、次第に減少に転じています。2022年には70,437トンを記録しており、明らかにピーク時から下降傾向にあります。

このような生産量の変動要因には、いくつかの背景が考えられます。まず第一に、気候変動の影響が挙げられます。近年、アルゼンチンを含む南米全域で天候パターンが不安定になっており、特に干ばつや異常気象が農業に与える影響が顕著です。蜂蜜の生産には、蜜蜂の活動を支える豊かな植物相と安定した季節パターンが必要であり、これらが乱れると蜜蜂の健全性や花蜜の供給が減少してしまいます。

また、農薬の多用による環境への影響も一つの原因として考えられます。アルゼンチンは大豆をはじめとする作物の大規模栽培が盛んであり、それに伴う農薬散布の増加が蜜蜂の生息環境を悪化させている可能性があります。さらに、病害虫や蜂群崩壊症候群(CCD:突然の蜂群の大量損失)も、世界的な蜂蜜生産量減少の一因とされており、これらはアルゼンチンにも影響を及ぼしている可能性があります。

地政学的要因も重要です。アルゼンチンは主要な蜂蜜輸出国であり、経済状況や貿易政策が生産量や輸出市場に影響を与えると言えます。例えば、近年ではドル高や輸出関税政策の変化が養蜂業の収益性を左右し、その結果として生産者の意欲が低下する可能性があります。また、国際市場での競争激化や拡大する中国の蜂蜜生産量も、アルゼンチンの輸出市場にプレッシャーを与えています。

解決策として、まず気候変動に対する適応策を積極的に講じる必要があります。具体的には、蜜蜂が利用可能な植物種を植えることで生態系の回復を図り、気温や降水量の変動に耐えられる持続可能な養蜂システムの構築が求められます。また、環境に優しい農業政策を推進し、蜂に有害な農薬の使用制限や代替農薬の開発を検討するべきです。

さらに、国内外双方での養蜂分野への投資を増やし、研究開発の支援を強化することも重要です。例えば、蜜蜂を保護するための管理技術や予防医療の研究を進めることで、病害虫対策を強化できるでしょう。国際協力を通じて、他国からの知見を取り入れることも有効です。

結論として、アルゼンチンの蜂蜜生産量は過去半世紀にわたり大きく波を打ちながら成長してきましたが、近年は減少の兆候が見られます。この減少は主に気候変動や環境問題、経済的要素によるものと考えられます。この状況に対応するためには、政府だけでなく、産業界や学術分野、地域コミュニティが一体となって持続可能な養蜂産業を構築することが不可欠です。これにより、アルゼンチンは世界的な蜂蜜生産国としての地位を再び強化し、未来の課題に対応することができるでしょう。