Food and Agriculture Organization(国連食糧農業機関)が提供したデータによると、アルゼンチンの羊飼養数は1961年の約5,015万匹から長期的に減少傾向にあります。特に1990年代には急激な減少を見せ、2022年には約1,246万匹にまで低下しました。一方で、2000年代中盤には一時的に持ち直した時期も見られましたが、その後も再び減少傾向が続いています。
アルゼンチンの羊飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(匹) |
---|---|
2022年 | 12,461,845 |
2021年 | 13,347,911 |
2020年 | 14,571,766 |
2019年 | 14,774,196 |
2018年 | 14,339,908 |
2017年 | 14,746,566 |
2016年 | 14,864,321 |
2015年 | 14,859,486 |
2014年 | 14,534,000 |
2013年 | 14,574,880 |
2012年 | 14,697,000 |
2011年 | 14,731,000 |
2010年 | 15,024,744 |
2009年 | 15,278,000 |
2008年 | 15,988,000 |
2007年 | 16,180,000 |
2006年 | 15,838,000 |
2005年 | 15,497,000 |
2004年 | 15,158,000 |
2003年 | 13,829,000 |
2002年 | 12,400,000 |
2001年 | 13,500,000 |
2000年 | 13,561,600 |
1999年 | 13,703,400 |
1998年 | 13,500,000 |
1997年 | 13,197,800 |
1996年 | 14,308,000 |
1995年 | 15,244,600 |
1994年 | 16,922,600 |
1993年 | 18,436,200 |
1992年 | 25,706,000 |
1991年 | 26,500,000 |
1990年 | 28,571,008 |
1989年 | 29,345,008 |
1988年 | 29,167,008 |
1987年 | 28,750,000 |
1986年 | 29,167,008 |
1985年 | 28,750,000 |
1984年 | 28,000,000 |
1983年 | 30,000,000 |
1982年 | 30,400,608 |
1981年 | 31,417,696 |
1980年 | 31,000,000 |
1979年 | 32,000,000 |
1978年 | 33,499,000 |
1977年 | 35,219,616 |
1976年 | 34,485,008 |
1975年 | 34,691,008 |
1974年 | 34,691,424 |
1973年 | 40,000,000 |
1972年 | 40,000,000 |
1971年 | 41,000,000 |
1970年 | 43,000,000 |
1969年 | 44,319,840 |
1968年 | 46,000,000 |
1967年 | 49,000,000 |
1966年 | 48,500,000 |
1965年 | 49,000,000 |
1964年 | 47,500,000 |
1963年 | 46,157,904 |
1962年 | 47,305,408 |
1961年 | 50,150,000 |
アルゼンチンでは、羊の飼養が伝統的に重要な農業活動の一つとして行われてきましたが、データが示す通り、その数は過去数十年にわたり大きな減少を続けています。特に1960年代初頭には約5,015万匹とピークを迎えましたが、それ以降減少傾向が明確となり、1990年代における急減期では1993年に約1,843万匹、さらに1996年には約1,431万匹とほぼ半減しています。この大きな変動は、経済的、環境的、そして地政学的な要因が複雑に絡み合った結果と考えられます。
まず、長期的な羊飼養数の減少には市場動向が大きく影響しました。アルゼンチンの羊毛や羊肉の輸出競争力が低下し、代わりに牛肉などの他の畜産品目が国内外で需要を拡大したことが主な要因です。このシフトはアルゼンチンの畜産産業全体の構造転換を促し、牧草地の利用も牛の放牧へと移行していきました。また、90年代の急激な減少は政策的な変化、例えば農業補助金の削減や国際貿易における競争激化といった経済的プレッシャーと符合しています。
さらに環境的な課題も影響を与えています。特に気候変動が進む中、アルゼンチンの乾燥地帯や草原地帯では干ばつや降雨の不安定化が影響を及ぼし、牧草生産や水資源の確保が難しくなっています。このような環境条件の悪化は羊飼育をさらに困難なものにしています。また、土地劣化や過放牧といった問題が、牧草地の持続可能性に深刻な影響を与えてきたことも不可避です。
地政学的リスクも考慮すべき点です。アルゼンチンの一部地域では、土地利用を巡る争いや家畜窃盗の増加といった社会的問題が報告されています。これらは、地域社会の安定と畜産業の持続可能性に直接的な負の影響を及ぼしています。
近年のデータを見ると、2000年代中盤において一時的に持ち直した時期があります。この回復は、国内外での需要増加や牧場経営の効率化が進んだことに起因する可能性がありますが、全体的な傾向としては再び下落しています。2022年には約1,246万匹を記録し、現状は過去最低水準の状態にあります。新型コロナウイルスの影響下での物流制限や経済の低成長も羊飼養業にさらなる困難をもたらしたと考えられます。
今後の課題としては、まず第一に関係産業の競争力強化が挙げられます。アルゼンチンの羊毛や羊肉の品質向上やブランド化を目指し、輸出市場における地位を再確立することが重要です。また、環境的な視点では、持続可能な牧草地管理や気候変動適応型の農業技術の導入が必要不可欠です。このためには研究開発の促進や政府の支援政策が求められます。
具体的な政策提言として、アルゼンチン国内および隣国との協力を深めることが考えられます。地域間での資源共有や協同事業の推進は、地政学的リスクの軽減にもつながります。また、小規模農業者への支援を強化し、新たな融資制度を提供することで、羊飼育を続ける農家の基盤を安定させることができます。
アルゼンチンの羊飼養数が減少し続けることは、単に一国の畜産業の問題にとどまらず、地域経済、環境、さらに地域社会の安定に関わる広範な課題です。多角的な対策と国際協力の強化によって、将来的に持続可能な発展を実現できる可能性があります。データが示す現状を見据え、政策立案者や業界関係者が包括的な戦略を練ることが期待されます。