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イラクの大麦生産量推移(1961年~2023年)

イラクの大麦生産量は、1961年の約91.2万トンから2023年の約10.6万トンに至るまで、長期的には大きな変動を伴っています。特に、1990年以降のデータでは、1,854,300トンに達したピークと、それに続く大幅な下降が確認されています。近年、2020年には1,756,200トンを記録したものの、その後わずか3年で生産量が約94%減少しており、生産基盤の持続的な低迷が大きな懸念となっています。この変動の背後には、気候条件、地政学的リスク、政策的要因が複合的に影響していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 105,903
-26.71% ↓
2022年 144,493
-45.8% ↓
2021年 266,581
-84.82% ↓
2020年 1,756,200
15.66% ↑
2019年 1,518,471
696.48% ↑
2018年 190,647
-37.1% ↓
2017年 303,114
-39.28% ↓
2016年 499,222 -
2015年 499,222
-60.93% ↓
2014年 1,277,796
27.37% ↑
2013年 1,003,198
20.58% ↑
2012年 831,990
1.44% ↑
2011年 820,152
-27.88% ↓
2010年 1,137,169
126.75% ↑
2009年 501,508
24.14% ↑
2008年 403,999
-45.99% ↓
2007年 748,000
-18.61% ↓
2006年 919,000
21.88% ↑
2005年 754,000
-6.34% ↓
2004年 805,000
-6.5% ↓
2003年 861,000
-16.61% ↓
2002年 1,032,470
87.72% ↑
2001年 550,000
37.5% ↑
2000年 400,000
-20% ↓
1999年 500,000
-41.79% ↓
1998年 859,000
10.41% ↑
1997年 778,000
-40.15% ↓
1996年 1,300,000
45.74% ↑
1995年 892,000
-8.14% ↓
1994年 971,000
-37.84% ↓
1993年 1,562,000
3.51% ↑
1992年 1,509,000
96.38% ↑
1991年 768,400
-58.56% ↓
1990年 1,854,300
179.51% ↑
1989年 663,400
-53.83% ↓
1988年 1,436,800
93.4% ↑
1987年 742,900
-28.98% ↓
1986年 1,046,000
-21.44% ↓
1985年 1,331,400
176.22% ↑
1984年 482,000
-42.31% ↓
1983年 835,500
-7.37% ↓
1982年 902,000
-2.45% ↓
1981年 924,700
35.51% ↑
1980年 682,400
19.43% ↑
1979年 571,400
-7.42% ↓
1978年 617,200
34.85% ↑
1977年 457,700
-20.99% ↓
1976年 579,300
32.56% ↑
1975年 437,000
-18.01% ↓
1974年 533,000
15.37% ↑
1973年 462,000
-52.86% ↓
1972年 980,000
126.85% ↑
1971年 432,000
-36.66% ↓
1970年 682,000
-29.18% ↓
1969年 963,000
-2.92% ↓
1968年 992,000
16.02% ↑
1967年 855,000
2.75% ↑
1966年 832,090
3.12% ↑
1965年 806,903
29.53% ↑
1964年 622,927
-21.18% ↓
1963年 790,328
-29.76% ↓
1962年 1,125,257
23.49% ↑
1961年 911,194 -

イラクの大麦生産量は、過去数十年にわたって著しい変動を見せています。例えば、1961年から1990年の間に一時的な増加と減少を繰り返しましたが、1990年に1,854,300トンという最高記録を達成しました。しかし、その後、特に21世紀に入ってからは生産量の安定性に欠け、シリアスな低迷傾向が確認されています。2023年には、ついに100,000トンを下回る異常な低生産となり、1961年の90万トンに遠く及ばない状況です。

この長期的な推移の背後には、いくつかの重要な背景要因があります。まず、イラクの農業は伝統的に降水量に大きく依存していますが、近年の気候変動が深刻な干ばつを引き起こしていることが影響を与えています。降水量不足による水資源の枯渇や、農地の砂漠化が進行する中で、農業の生産性は低迷せざるを得ない状況にあります。特に2017年以降の減少は、旱魃の影響が顕著になったことを指摘できます。

さらに、地政学的状況も大きな影響を及ぼしています。イラクは長年にわたり戦争や地域紛争に巻き込まれた歴史を持ち、特に2003年以降のイラク戦争は農業インフラに深刻な損害をもたらしました。灌漑施設の破壊や農村部の広範な不安定性は、大麦生産に対する投資の停滞を招きました。これに加えて、国際的な制裁や経済的制約も、農業改革の実現を妨げてきました。

また、近年の大幅な生産の減少には、新型コロナウイルス感染症の影響も無視できません。パンデミックの間、国家経済の停滞や国際交易の中断が農業セクターの復興をさらに遅らせました。さらに、イラクはトルコやイランなど周辺国からの水資源供給に依存しており、上流国のダム建設などが水の利用を制約する要因になっています。これらの複合的要因が、大麦生産量の持続的な減少を引き起こしているのです。

未来への課題として、持続可能な農業を構築するための対策が急務です。例えば、灌漑システムの再構築や省水型農法の導入を進めることで、水資源の効率的な利用を図る必要があります。また、地域協力によって、上流国との外交関係を強化し、公平な水資源分配を実現するための多国間枠組みの構築が求められます。さらに、国際援助機関と連携し、農家への技術的支援や耐乾性の高い作物の導入を推進することで、緊急の生産力回復を図るべきです。

結論として、大麦生産量の安定には、気候変動への適応と農業インフラ再構築が不可欠です。また、地政学的リスクを低減しつつ、国際社会との協力を通じて、イラク農業の持続可能な発展を支援することが重要です。これにより、イラクの農業セクターは将来の食糧安全保障に向けた新たな基盤を築くことが可能となるでしょう。