Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、2023年におけるイラクのクルミ生産量は1,465トンと報告されています。全体的に、1960年代初頭から1970年代にかけて生産量が増加し、1980年代に比較的安定して高い水準に達しました。その後、1990年代以降は減少傾向が続き、2000年代中頃からは生産量が1,500トン前後で低迷しています。この推移は、気候変動、地政学的リスク、農業政策など複数の要因による影響を受けていると考えられます。
イラクのクルミ(胡桃)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 1,465 |
-0.37% ↓
|
2022年 | 1,471 |
-0.54% ↓
|
2021年 | 1,479 |
-0.54% ↓
|
2020年 | 1,487 |
0.66% ↑
|
2019年 | 1,477 |
-0.07% ↓
|
2018年 | 1,478 |
-1.94% ↓
|
2017年 | 1,507 |
-1.65% ↓
|
2016年 | 1,533 |
-1.29% ↓
|
2015年 | 1,553 |
1.86% ↑
|
2014年 | 1,525 |
-3.1% ↓
|
2013年 | 1,573 |
-10.09% ↓
|
2012年 | 1,750 |
7.24% ↑
|
2011年 | 1,632 |
-0.57% ↓
|
2010年 | 1,641 |
-1.05% ↓
|
2009年 | 1,659 |
-0.12% ↓
|
2008年 | 1,661 |
0.65% ↑
|
2007年 | 1,650 |
-8.33% ↓
|
2006年 | 1,800 |
16.13% ↑
|
2005年 | 1,550 |
-9.18% ↓
|
2004年 | 1,707 |
6.66% ↑
|
2003年 | 1,600 |
-5.88% ↓
|
2002年 | 1,700 |
-8.11% ↓
|
2001年 | 1,850 |
-2.63% ↓
|
2000年 | 1,900 |
-5% ↓
|
1999年 | 2,000 |
-6.98% ↓
|
1998年 | 2,150 |
2.71% ↑
|
1997年 | 2,093 |
-0.32% ↓
|
1996年 | 2,100 |
-6.67% ↓
|
1995年 | 2,250 |
-2.17% ↓
|
1994年 | 2,300 |
-2.13% ↓
|
1993年 | 2,350 |
2.17% ↑
|
1992年 | 2,300 |
15% ↑
|
1991年 | 2,000 |
-16.67% ↓
|
1990年 | 2,400 |
2.13% ↑
|
1989年 | 2,350 |
2.17% ↑
|
1988年 | 2,300 |
2.22% ↑
|
1987年 | 2,250 |
-11.76% ↓
|
1986年 | 2,550 |
2% ↑
|
1985年 | 2,500 |
2.04% ↑
|
1984年 | 2,450 |
-2% ↓
|
1983年 | 2,500 | - |
1982年 | 2,500 | - |
1981年 | 2,500 | - |
1980年 | 2,500 |
4.17% ↑
|
1979年 | 2,400 |
4.35% ↑
|
1978年 | 2,300 |
4.55% ↑
|
1977年 | 2,200 |
4.76% ↑
|
1976年 | 2,100 |
5% ↑
|
1975年 | 2,000 |
-13.04% ↓
|
1974年 | 2,300 |
27.78% ↑
|
1973年 | 1,800 |
-18.18% ↓
|
1972年 | 2,200 |
-0.68% ↓
|
1971年 | 2,215 |
47.67% ↑
|
1970年 | 1,500 |
-25% ↓
|
1969年 | 2,000 |
53.85% ↑
|
1968年 | 1,300 |
-25.71% ↓
|
1967年 | 1,750 |
45.83% ↑
|
1966年 | 1,200 |
-20% ↓
|
1965年 | 1,500 |
15.38% ↑
|
1964年 | 1,300 |
8.33% ↑
|
1963年 | 1,200 |
9.09% ↑
|
1962年 | 1,100 |
10% ↑
|
1961年 | 1,000 | - |
イラクのクルミ生産量は、1960年代の1,000トンから始まり、1970年代末には2,500トンまで増加しました。この時期の増加は、適切な農業政策と気候条件に支えられたとして説明できます。しかし、1990年代以降、特に2000年以降は下降傾向が顕著になり、2023年には1,465トンまで減少しています。これは、イラクが直面してきた経済的・地政学的な課題、ならびに気候変動の影響が大きな要因として挙げられるでしょう。
この長期的な減少の背景にはいくつかの要因があります。一つは、1990年代以降の長期的な紛争や地域的な不安定性が農業インフラに悪影響を与えたことです。灌漑施設の損壊、耕地の荒廃、農業技術支援の不足などが挙げられます。また、近年では気温上昇や水不足といった気候変動の影響が、クルミの育成に重要な要素である適切な温度と水供給を脅かしています。これらは生産量の減少に直接つながる要因です。
さらに、戦争や政治的緊張が生産効率や農業従事者の状況に悪影響を及ぼしています。農家が戦火や経済危機によって農業から離れるケースも多く、高齢化が進む中で農業労働力が不足しています。他にも、農業イノベーションや効率化のための技術導入が遅れていることも課題として挙げられます。
国際的な比較を行うと、イラクのクルミ生産量は他の主要生産国と比較して非常に低い水準にとどまっています。例えば、中国、アメリカ、イランなどではクルミの年間生産量が数百万トン単位に達しており、これと比べるとイラクの生産量は微々たるものです。この差は、耕地面積の使い方、生産技術の進歩、農業政策の違いによるものと考えられます。
将来的な改善のためには、いくつかの具体的な施策が求められます。まず、灌漑設備の再整備や近代化を進め、乾燥地でも作物を安定して生産できる環境を整える必要があります。また、農業におけるイノベーションを促進するために、国際的な技術支援や投資を受け入れることが重要です。さらに、農業労働力の育成に向けて、若者への研修プログラムや農業教育への投資を拡充することが求められます。
イラクの地政学的なリスクを考えると、持続可能な農業政策がこの地域の安定に寄与する可能性が高いといえます。クルミのような換金性の高い作物を安定して生産できる仕組みを構築することで、農家の収入が向上し、経済基盤が強化されるでしょう。また、地域の協力関係を深めるため、近隣諸国との共同農業プロジェクトや災害対策の枠組みを構築することも有効な提案の一つといえます。
結論として、イラクが直面しているクルミ生産の課題は、単に農業分野のみに限定されず、広範な地政学的・環境的・経済的要因とも密接に関連しています。この生産減少の鍵を解消するためには、国内外での連携と戦略的な施策が不可欠です。国際機関や支援団体との協力を深め、持続可能な農業体制を構築することが、この地域の食料安全保障と経済的な繁栄を支える鍵となるでしょう。