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イラクの牛飼養数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、イラクの牛飼養数は1961年の約155万頭から2022年には約210万頭に増加しています。この一貫した長期的増加傾向は、国内の食肉需要の高まりや酪農業の拡大を反映しています。しかし、戦争や経済制裁、水資源不足などの影響により、大きな減少を経験した時期もありました。また、直近のデータでは回復の兆しが見られるものの、増加速度は停滞しています。

年度 飼養数(頭) 増減率
2023年 2,147,569
2.07% ↑
2022年 2,104,057
2.07% ↑
2021年 2,061,427
2.07% ↑
2020年 2,019,660
2.07% ↑
2019年 1,978,740
2.07% ↑
2018年 1,938,649
2.07% ↑
2017年 1,899,370
2.07% ↑
2016年 1,860,887
2.07% ↑
2015年 1,823,184
-37.13% ↓
2014年 2,900,000
4.32% ↑
2013年 2,780,000
2.21% ↑
2012年 2,720,000
0.48% ↑
2011年 2,707,000
2.97% ↑
2010年 2,629,000
3.02% ↑
2009年 2,552,000
61.52% ↑
2008年 1,580,000
37.99% ↑
2007年 1,145,000
1.33% ↑
2006年 1,130,000
-31.43% ↓
2005年 1,648,000
8.71% ↑
2004年 1,516,000
6.39% ↑
2003年 1,425,000
-5% ↓
2002年 1,500,000
2.88% ↑
2001年 1,458,000
8% ↑
2000年 1,350,000
1.89% ↑
1999年 1,325,000
0.38% ↑
1998年 1,320,000
1.51% ↑
1997年 1,300,375
23.85% ↑
1996年 1,050,000
-11.76% ↓
1995年 1,190,000
-12.14% ↓
1994年 1,354,380
-8.49% ↓
1993年 1,480,000
17.46% ↑
1992年 1,260,000
26% ↑
1991年 1,000,000
-34.21% ↓
1990年 1,520,000
-3.68% ↓
1989年 1,578,000
-1.38% ↓
1988年 1,600,000
1.27% ↑
1987年 1,580,000
0.1% ↑
1986年 1,578,418
-3.46% ↓
1985年 1,635,000
-3.71% ↓
1984年 1,698,000
0.77% ↑
1983年 1,685,000
0.6% ↑
1982年 1,675,000
0.3% ↑
1981年 1,670,000
-1.88% ↓
1980年 1,702,000
0.26% ↑
1979年 1,697,665
-0.02% ↓
1978年 1,698,000
-5.89% ↓
1977年 1,804,235
0.01% ↑
1976年 1,804,000
-2.49% ↓
1975年 1,850,000
-9.67% ↓
1974年 2,048,000
7.79% ↑
1973年 1,900,000
1.06% ↑
1972年 1,880,000
1.08% ↑
1971年 1,860,000
1.64% ↑
1970年 1,830,000
5.78% ↑
1969年 1,730,000
4.85% ↑
1968年 1,650,000
3.13% ↑
1967年 1,600,000
5.26% ↑
1966年 1,520,000
4.47% ↑
1965年 1,454,923
-3.01% ↓
1964年 1,500,000
-3.23% ↓
1963年 1,550,000 -
1962年 1,550,000 -
1961年 1,550,000 -

FAOが発表したイラクの牛飼養数データからは、イラクの農業・畜産業が経験してきた長期的な変動が読み取れます。特に、1961年から約60年間を通じた全体的な飼養頭数の増加は注目されますが、その過程では地政学的リスクや不安定な経済状況、環境問題が深く影響を及ぼしてきました。

1960年代には、イラクの牛飼養頭数は約155万頭で安定していました。この時期は、農業基盤が比較的堅固で食料生産も安定しており、国内需要を満たしていました。しかし1970年代には若干の変動が見られ、1974年には204万頭のピークに達した後、1976年には180万頭程度に減少しています。この期間は、イラクの農業政策が近代化を推進する一方で、石油産業の急速な成長による農業の相対的な重要性の低下も影響した可能性があります。

1990年代にかけて、飼養頭数は顕著に減少しました。特に1991年の約100万頭への急激な落ち込みは、湾岸戦争やその後の経済制裁による影響が大きかったと推測されます。この時期、国内の農業・畜産業が大きく打撃を受けただけでなく、基礎インフラの破壊や農村部の貧困が深刻化しました。その後、2009年には再び急速な増加が見られ、255万頭を記録しています。この回復は、戦後の農業復興政策と地域協力の枠組みが効果を上げた結果と考えられます。

近年では、イラクの水資源不足や気候変動の影響が、依然として課題となっています。農業用水が不足する中、畜産業も生産性と効率の向上が求められています。2022年時点で210万頭に達したものの、2015年以降の増加速度は緩やかであり、今後も持続的な発展には政策的介入が必要です。

イラクにおける牛飼養数の推移は、地政学的な背景とも深く結びついています。戦争や内乱が畜産業に直接的な影響を及ぼしたことは明らかですが、これを乗り越えるためには国際的な協力の強化や技術的支援、地域間の連携が重要です。また、気候変動の影響を緩和するための対策も急務です。たとえば、効率的な水資源管理や、乾燥地帯向けの耐久性のある牧草の育成プログラムを導入することは、畜産業の安定性を高めるための有効な手段と考えられます。

結論として、イラクの牛飼養数推移は、過去の紛争や経済危機の影響だけでなく、気候や資源問題などの地政学的背景を映し出しています。今後の持続可能な牛産業の発展のためには、基盤インフラの整備、農業技術の向上、さらには地域協力を基礎とした包括的な政策が必要です。同時に、国際社会と連携して、イラクの伝統的な畜産業を未来志向で支援することも重要だといえます。