国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、イラクのアーモンド生産量は、1961年に300トンから始まり、その後徐々に増加を見せましたが、1970年代から1980年代にかけて生産量は顕著に上昇しました。そのピークは1986年の750トンでした。しかしながら、1990年代以降は変動が激しくなり、2000年代以降は大きく減少しました。最近のデータを見ると、2023年の生産量は430トンと、長期的な減少傾向が続いていることが明らかです。このような推移には、政治的、環境的要因が大きく影響していると考えられます。
イラクのアーモンド生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 430 |
-0.93% ↓
|
2022年 | 434 |
-0.42% ↓
|
2021年 | 435 |
-0.42% ↓
|
2020年 | 437 |
0.99% ↑
|
2019年 | 433 |
1.24% ↑
|
2018年 | 428 |
-1.18% ↓
|
2017年 | 433 |
-2.14% ↓
|
2016年 | 442 |
-3% ↓
|
2015年 | 456 |
3.04% ↑
|
2014年 | 443 |
-4.9% ↓
|
2013年 | 465 |
-16.9% ↓
|
2012年 | 560 |
19.33% ↑
|
2011年 | 469 |
3.6% ↑
|
2010年 | 453 |
-2.5% ↓
|
2009年 | 465 |
5.31% ↑
|
2008年 | 441 |
13.12% ↑
|
2007年 | 390 |
-27.42% ↓
|
2006年 | 537 |
34.34% ↑
|
2005年 | 400 |
-15% ↓
|
2004年 | 471 |
9.44% ↑
|
2003年 | 430 |
-2.27% ↓
|
2002年 | 440 |
-15.23% ↓
|
2001年 | 519 |
3.82% ↑
|
2000年 | 500 |
-9.09% ↓
|
1999年 | 550 |
-9.84% ↓
|
1998年 | 610 |
3.21% ↑
|
1997年 | 591 |
-1.49% ↓
|
1996年 | 600 |
-1.64% ↓
|
1995年 | 610 |
-10.29% ↓
|
1994年 | 680 |
-2.86% ↓
|
1993年 | 700 |
7.69% ↑
|
1992年 | 650 |
8.33% ↑
|
1991年 | 600 |
-20% ↓
|
1990年 | 750 |
1.35% ↑
|
1989年 | 740 |
2.78% ↑
|
1988年 | 720 |
2.86% ↑
|
1987年 | 700 |
-6.67% ↓
|
1986年 | 750 |
7.14% ↑
|
1985年 | 700 | - |
1984年 | 700 | - |
1983年 | 700 |
7.69% ↑
|
1982年 | 650 |
8.33% ↑
|
1981年 | 600 | - |
1980年 | 600 |
1.69% ↑
|
1979年 | 590 |
1.72% ↑
|
1978年 | 580 |
1.75% ↑
|
1977年 | 570 |
1.79% ↑
|
1976年 | 560 |
1.82% ↑
|
1975年 | 550 |
37.5% ↑
|
1974年 | 400 |
-11.11% ↓
|
1973年 | 450 |
-11.76% ↓
|
1972年 | 510 |
0.79% ↑
|
1971年 | 506 |
5.42% ↑
|
1970年 | 480 |
6.67% ↑
|
1969年 | 450 |
28.57% ↑
|
1968年 | 350 | - |
1967年 | 350 |
-7.89% ↓
|
1966年 | 380 |
2.7% ↑
|
1965年 | 370 |
5.71% ↑
|
1964年 | 350 | - |
1963年 | 350 |
16.67% ↑
|
1962年 | 300 | - |
1961年 | 300 | - |
イラクのアーモンド生産量は1961年以降、ゆるやかに増加を続け、1980年代に最大で750トンを記録しました。この期間は、国内の農業技術の発達や比較的安定した政治状況が生産の拡大を後押ししたと考えられます。しかし、1990年代以降になると、大幅な生産量の減少が見られます。この変化には、湾岸戦争や国際社会による制裁といった地政学的なリスクが影響を与えた可能性があります。その結果、経済的混乱が広がり、農業インフラの劣化や資源不足が農作物の生産にマイナスの影響を与えたと考えられます。
また、2000年代以降は特に自然環境の変化も無視できない要因となっています。イラクでは気温の上昇や水不足が顕著となり、これが農作物全体、特に水資源の多くを必要とするアーモンドの栽培には逆風となっています。このような背景が、2000年代の長期的な生産量の低迷、特に2023年時点での430トンという数値につながっています。
他国と比較してみると、例えばアーモンド生産の世界的リーダーであるアメリカのカリフォルニア州では、生産量が数百万トンに達しており、イラクとは圧倒的な差があることがわかります。カリフォルニア州の成功要因としては、高度な農業技術、良好な灌漑システム、地域全体の生産者支援体制が挙げられます。一方、中国やインドといったアジアの主要生産国も急速に技術を導入し、生産量の増加を図っています。これらの国々と比較すると、イラクのアーモンド農業は著しく劣後している現状にあります。
イラクにおけるアーモンド生産の将来的な課題としては、まず地政学的な安定性回復が挙げられます。紛争や不安定な政治状況が続く限り、農業インフラの整備や投資環境の改善は期待し難い状況です。さらに、気候変動がもたらす干ばつや水不足への具体的な対応も急務といえます。これらの課題に対応するためには、国際的な協力が欠かせません。例えば、国際的な資金援助を活用して最新の灌漑設備を導入し、水資源管理を効果的に進めることが必要です。また、地元農業者への技術教育を強化し、収穫量の向上につながる栽培方法を広めることも重要です。
イラクが抱える天然資源や農地は潜在力が高いため、適切な政策と技術の導入がなされれば、将来的には安定したアーモンド生産を取り戻すことが可能です。さらに、中東の近隣諸国との農業協力体制を構築することで、地域全体としての競争力を高めるとともに、地元経済の活性化につながる可能性も広がります。イラクがこれらの課題に積極的に取り組むことができれば、かつての生産量のピークを再び超えるような成果が期待されるでしょう。