Skip to main content

イラクのニンジン・カブ類生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表した最新データによると、イラクのニンジン・カブ類の生産量は、1961年から2023年にかけて大きな変動を繰り返してきた後、2023年には3,222トンに到達しました。1970年代から1980年代後半にかけては比較的安定した増加傾向を示しており、1988年には21,900トンというピークを記録しました。2003年以降、生産量が劇的に伸び2008年には38,502トンに達しましたが、2015年以降は大幅に減少し、不安定な生産状況が続いています。2023年の生産量は、1970年代以降のピークと比較すると大きく下回る水準です。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 3,222
10.99% ↑
2022年 2,903
67.42% ↑
2021年 1,734
-49.06% ↓
2020年 3,404
-7.1% ↓
2019年 3,664
50.1% ↑
2018年 2,441
48.84% ↑
2017年 1,640
-42.74% ↓
2016年 2,864
-63.46% ↓
2015年 7,839
-80.01% ↓
2014年 39,208
16.74% ↑
2013年 33,587
-25.65% ↓
2012年 45,175
100.6% ↑
2011年 22,520
-18.51% ↓
2010年 27,636
-10.97% ↓
2009年 31,041
-19.38% ↓
2008年 38,502
14.79% ↑
2007年 33,542
1.64% ↑
2006年 33,000
-5.71% ↓
2005年 35,000
25% ↑
2004年 28,000 -
2003年 28,000
359.02% ↑
2002年 6,100
-6.15% ↓
2001年 6,500
-35% ↓
2000年 10,000
25% ↑
1999年 8,000
-23.81% ↓
1998年 10,500
5% ↑
1997年 10,000
-2.91% ↓
1996年 10,300
-2.83% ↓
1995年 10,600
6% ↑
1994年 10,000
-4.76% ↓
1993年 10,500
5% ↑
1992年 10,000
15.07% ↑
1991年 8,690
-30.48% ↓
1990年 12,500
42.05% ↑
1989年 8,800
-59.82% ↓
1988年 21,900
135.48% ↑
1987年 9,300
-23.14% ↓
1986年 12,100
-32.02% ↓
1985年 17,800
-10.55% ↓
1984年 19,900
165.33% ↑
1983年 7,500
-12.79% ↓
1982年 8,600
-18.1% ↓
1981年 10,500
-29.05% ↓
1980年 14,800
8.82% ↑
1979年 13,600
21.67% ↑
1978年 11,178
-8.39% ↓
1977年 12,202
18.67% ↑
1976年 10,282
20.54% ↑
1975年 8,530
-13.99% ↓
1974年 9,918
-6.87% ↓
1973年 10,650
-5.33% ↓
1972年 11,250
7.88% ↑
1971年 10,428
26.14% ↑
1970年 8,267
-14.83% ↓
1969年 9,706
1.93% ↑
1968年 9,522
8.5% ↑
1967年 8,776
-10.14% ↓
1966年 9,766
16.19% ↑
1965年 8,405
61.39% ↑
1964年 5,208
-20.38% ↓
1963年 6,541
49.37% ↑
1962年 4,379
69.99% ↑
1961年 2,576 -

イラクのニンジン・カブ類生産量の推移を見ると、1961年から2023年にかけて、一貫した成長ではなく、政治的・経済的混乱や環境条件の影響を受けた大きな変動の中で生産が行われてきたことがわかります。1960年代から1970年代には生産量が比較的安定して増加し、1979年に13,600トン、1980年に14,800トンと安定期を迎えました。この時期の増加は、当時の農業政策や水資源の活用に関連していると考えられます。

しかし、1980年代中盤からは戦争や地政学的リスクが生産量に影響を与えたことが見られます。特に1980年代のイラン・イラク戦争や1990年代の湾岸戦争、さらにその後の経済制裁が農業生産基盤を弱め、生産量が大幅に減少しました。一方で、2003年のイラク戦争後には生産が急激に回復し、2005年から2008年にかけては30,000トンを超える生産水準を記録しました。この一時的な増加は、復興プランや国際援助による農業再建の影響と考えられます。

ただし、この安定期も長くは続かず、2015年以降は再び急激な減少に転じ、特に2017年には1,640トンと、記録開始以来の最低水準を記録しました。この下降の背景には、気候変動や水不足といった環境的要因、新型コロナウイルスによる流通の停滞、さらには国境を超えた地域紛争が影響していると考えられます。また、灌漑施設の老朽化や農業従事者の減少も、農業生産にマイナスの影響を及ぼしている要因です。

イラクにおける環境問題と地政学的要因は、農業生産量に特に顕著な影響を与えています。ティグリス川とユーフラテス川という重要な水源に依存するイラクですが、近隣諸国でのダム建設による水資源の減少が課題となっています。さらに、国内のインフラ不足や灌漑技術の遅れが問題を深刻化させています。特にカブ類やニンジンのような水消費量が多い作物は、水不足の影響を受けやすい品種であるため、生産の安定性が欠けている現状です。

現在の課題に対応するために、まずは灌漑システムの近代化や効率的な水資源管理を進めることが重要です。近年、持続可能な農法として注目される「ドリップ灌漑」や雨水の活用を取り入れることで、限られた水資源の中でも生産量の安定化が期待できます。また、地政学的影響下にあるイラクでは、国際的な協力が欠かせません。特に水源を共有するトルコ、シリアとの地域協力と交渉を通じて、水資源確保の持続可能な枠組みづくりを目指すべきです。さらには、農業技術の近代化や教育支援を通じて、新しい農業従事者を育成することも課題解決の鍵となります。

結論として、イラクのニンジン・カブ類の生産量推移は、農業が地政学的な課題、環境的な制約、内政的不安定性といった多重の影響を受けやすいことを示しています。持続可能な農業と水管理の取り組みを強化することで、今後の生産の回復と安定化が実現する可能性があります。また、国際社会との連携を深めることで、食糧安全保障の確保と農業の発展に向けた基盤を築くことも可能でしょう。