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イラクのニンニク生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)の最新データによれば、イラクのニンニク生産量は長期的に見ると大きな変動が見られます。特に1970年代から1980年代初頭にかけて増加した後、一時的な減少を経て1990年代後半に生産が安定しました。その後2003年に大幅に増加しピークを迎えましたが、2010年代以降は厳しい下落傾向に転じています。2023年はわずか3,505トンとなり、2005年の最高生産量93,000トンと比較して極めて低い値となっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 3,505
-4.1% ↓
2022年 3,655
-22.5% ↓
2021年 4,716
12.77% ↑
2020年 4,182
4.92% ↑
2019年 3,986
120.22% ↑
2018年 1,810
4.93% ↑
2017年 1,725
-37.5% ↓
2016年 2,760
-14.63% ↓
2015年 3,233
-52.95% ↓
2014年 6,872
-16.52% ↓
2013年 8,232
-27.27% ↓
2012年 11,318
-22.98% ↓
2011年 14,695
16.86% ↑
2010年 12,575
0.4% ↑
2009年 12,525
-65.38% ↓
2008年 36,179
-35.07% ↓
2007年 55,717
16.08% ↑
2006年 48,000
-48.39% ↓
2005年 93,000
272% ↑
2004年 25,000
-28.57% ↓
2003年 35,000
218.18% ↑
2002年 11,000
22.22% ↑
2001年 9,000
5.88% ↑
2000年 8,500
2.41% ↑
1999年 8,300
3.75% ↑
1998年 8,000
11.11% ↑
1997年 7,200
2.86% ↑
1996年 7,000
7.69% ↑
1995年 6,500
14.04% ↑
1994年 5,700
-5% ↓
1993年 6,000
-25% ↓
1992年 8,000
135.99% ↑
1991年 3,390
-36.04% ↓
1990年 5,300
-50.47% ↓
1989年 10,700
78.33% ↑
1988年 6,000
36.36% ↑
1987年 4,400
-60.36% ↓
1986年 11,100
20.65% ↑
1985年 9,200
55.93% ↑
1984年 5,900
126.92% ↑
1983年 2,600
-40.91% ↓
1982年 4,400
12.82% ↑
1981年 3,900
-33.9% ↓
1980年 5,900
31.11% ↑
1979年 4,500
14.39% ↑
1978年 3,934
49.13% ↑
1977年 2,638
271.03% ↑
1976年 711
-47.29% ↓
1975年 1,349
31.48% ↑
1974年 1,026
-7.57% ↓
1973年 1,110
-10.34% ↓
1972年 1,238
-31.9% ↓
1971年 1,818
1.79% ↑
1970年 1,786
4.81% ↑
1969年 1,704
5.25% ↑
1968年 1,619
7.93% ↑
1967年 1,500
17.28% ↑
1966年 1,279
0.95% ↑
1965年 1,267
30.89% ↑
1964年 968
0.21% ↑
1963年 966
9.52% ↑
1962年 882
14.69% ↑
1961年 769 -

イラクのニンニク生産動向を分析すると、いくつかの重要な特徴が浮かび上がります。1960年代から1970年代初頭にかけては、穏やかな生産量の増加傾向が観察されますが、1972年以降、生産量は急な減少を見せ、1976年にはわずか711トンにまで落ち込みました。しかし、1977年以降は急速に回復し、1985年には9,200トン、1986年には11,100トンへと達しました。この時期は石油収入によるイラクの農業投資が拡大した時期と一致しており、灌漑設備や農業技術の導入が生産向上につながったと考えられます。

なお、1980年代後半には一貫して増加傾向が見られましたが、その背景にはイラン・イラク戦争後の復興政策が絡んでいると推測されます。しかし、1990年に湾岸戦争が始まると経済制裁や農地への被害が原因で生産量は激減しました。1995年ごろには6,500トンまで回復しましたが、これは国の安定性回復や国連の「石油食糧交換プログラム」による部分的な影響もあるでしょう。

2003年のアメリカ主導のイラク戦争後、ニンニク生産は大幅に増加し、35,000トン(2003年)、その後2005年に記録的な93,000トンに達しました。しかし、この大増産を可能にした背景には、生産地拡大や海外市場への輸出重視がありました。この時期は農業がイラク経済の重要なセクターに位置づけられた時代を反映していたと考えられます。これに対して、2006年以降の減少傾向は、過剰生産後の市場調整や農地過利用による環境的制約が原因と見られます。特に2010年代初頭以降は乾燥化現象、灌漑施設の老朽化、地域的な紛争が生産量の阻害要因となり、2017年には最低値の1,725トンを記録しました。

ここ数年では少しずつ回復傾向が見られるものの、2023年の3,505トンという数値は、ピーク時の十分の一以下という現実を示しています。この背景には新型コロナウイルスによる物流の混乱、政府の補助政策の不十分さ、農業従事者不足といった複合的な問題があると考えるべきです。また、気候変動により水資源へのアクセスが悪化し、ニンニクの生産基盤が大きく揺らいでいることも一因です。

イラクの農業復興を実現するためには、以下のような具体的な対策が必要です。まず、灌漑施設の近代化と効率的な水資源管理が急務となります。ニンニクの生産には比較的多くの水が必要であり、持続可能な用水計画を策定することが鍵です。次に、災害対策や地政学的リスクへの対応を講じつつ、農地の土壌状態を改善し、生産効率を高める必要があります。さらに、農業技術の導入を進めることで、農家の収益性を向上させることが求められます。特に政府と民間が協力して、地域間の物流ネットワークを整備することで、国内市場の活性化を図るべきです。

また、国際協力を通じてイラクの農業セクターを応援することも重要です。例えば、近隣諸国との水管理協定や技術的支援は、生産性向上だけでなく、地域の安定にもつながります。紛争や気候変動の影響を抑制するためには、資源争奪のリスク管理を含む包括的な農業政策が必要不可欠です。今後、国際連合や地域機関との連携を強めることによって、イラクのニンニク生産は再び成長する可能性を秘めています。

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