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イラクのほうれん草生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、イラクのほうれん草生産量は1960年代から2022年にかけて大きく変動してきました。持続的に生産量が増加した時期もあれば、戦争や経済制裁、気候変動などの影響を受けて生産が急激に減少した時期もあります。特に1960年代後半から1970年代にかけての成長期や、2007年から2009年にかけての急増期が目立つのに対し、2015年以降は顕著に生産量が減少しています。最新データである2022年の生産量は3,198トンと、過去のピーク時と比べて大幅に減少しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 2,309
-27.8% ↓
2022年 3,198
-2.2% ↓
2021年 3,270
1.11% ↑
2020年 3,234
20.49% ↑
2019年 2,684
44.69% ↑
2018年 1,855
-42.44% ↓
2017年 3,223
39.77% ↑
2016年 2,306
-45.82% ↓
2015年 4,256
-60.76% ↓
2014年 10,846
-17.6% ↓
2013年 13,163
17.29% ↑
2012年 11,223
0.41% ↑
2011年 11,177
-7.28% ↓
2010年 12,055
-11.34% ↓
2009年 13,597
-6.87% ↓
2008年 14,600
16.8% ↑
2007年 12,500
35.87% ↑
2006年 9,200
41.54% ↑
2005年 6,500
30% ↑
2004年 5,000
35.14% ↑
2003年 3,700
-2.63% ↓
2002年 3,800
-3.24% ↓
2001年 3,927
-1.82% ↓
2000年 4,000
-16.67% ↓
1999年 4,800
-20% ↓
1998年 6,000
-3.23% ↓
1997年 6,200
-8.82% ↓
1996年 6,800
-15% ↓
1995年 8,000
2.56% ↑
1994年 7,800
-2.5% ↓
1993年 8,000
6.67% ↑
1992年 7,500
6.99% ↑
1991年 7,010
-7.76% ↓
1990年 7,600
11.76% ↑
1989年 6,800
4.62% ↑
1988年 6,500
41.3% ↑
1987年 4,600
15% ↑
1986年 4,000
-28.57% ↓
1985年 5,600
14.29% ↑
1984年 4,900
16.67% ↑
1983年 4,200
35.48% ↑
1982年 3,100
-11.43% ↓
1981年 3,500
-25.53% ↓
1980年 4,700
-30.88% ↓
1979年 6,800
-27.62% ↓
1978年 9,395
-18.12% ↓
1977年 11,474
19.88% ↑
1976年 9,571
-2.4% ↓
1975年 9,806
36.23% ↑
1974年 7,198
-22.08% ↓
1973年 9,238
0.62% ↑
1972年 9,181
7.92% ↑
1971年 8,507
5.13% ↑
1970年 8,092
-18.89% ↓
1969年 9,977
-5.16% ↓
1968年 10,520
-2.88% ↓
1967年 10,832
14.3% ↑
1966年 9,477
2.92% ↑
1965年 9,208
113.74% ↑
1964年 4,308
-33.35% ↓
1963年 6,464
7.73% ↑
1962年 6,000 -
1961年 6,000 -

イラクのほうれん草生産は、数十年にわたり多様な変動パターンを示しています。データを詳細に見ると、1961年に6,000トンだった生産量は、農業技術の発展や政府支援政策の影響を受けて1967年には10,832トンと急増しました。しかしながら、その後の不安定な政治・社会的状況が農業生産にも影響を与え、生産量は1970年代から1980年代前半にかけて総じて低迷し、1980年代には3,000トン台に落ち込む年もありました。

イラクのほうれん草生産に最も大きな影響を与えたのは断続的な戦争です。1980年代のイラン・イラク戦争や1991年の湾岸戦争、2003年のイラク戦争は、農業基盤を含めた国内のインフラに深刻な被害をもたらしました。これにより、農地へのアクセスが困難になり、作物の輸送や灌漑システムにも大きな障害が発生しました。さらに、国際的な経済制裁も資源不足を引き起こし、農業生産に悪影響を及ぼした要因と言えます。

一方で、2000年代後半に見られた急激な生産量の増加、特に2007年から2009年にかけての12,500トンから14,600トンへと伸びた時期は例外的です。この時期は、国際的な支援や農業技術の改善が功を奏したことに加え、降水量や気候条件が比較的安定していたことが背景にあると考えられます。しかし、この増加は一時的なもので、2014年以降は再び急速に減少し、2018年には1,855トンと過去最低を記録しました。この主な要因には、気候変動による降水量の減少や灌漑難、地域紛争の激化が挙げられます。

ほうれん草生産量の長期低迷の重大な原因の一つとして、水資源の不足が挙げられます。イラクはティグリス川とユーフラテス川の流域に位置していますが、上流国による水資源の利用増加や気候変動の影響で、イラクに流入する水量が減少しています。その結果、農業分野では灌漑水の不足に直面し、生産性の低下を招いています。また、新型コロナウイルスの世界的流行による物流の混乱や肥料・農薬などの供給難も、近年の生産減少に影響を与えている要因と考えられます。

今後の課題として、第一に水資源管理の改善が挙げられます。地下水の持続可能な利用を推進し、省水型の灌漑技術を導入することで、生産性を向上させる可能性があります。同時に、気候変動への適応策として、耐干ばつ性を持つ農作物の開発も重要です。第二に、行政の安定化と農業インフラの復興が必要です。農業従事者の技術教育や農地復興への資金投入により、作物の収穫量を再び増加させる努力が求められます。加えて、地域間協力の強化や国際機関の支援を得ることで、水資源紛争の解決に取り組むべきです。

さらに、戦争や内紛といった地政学的リスクは、単に農業だけでなくイラク全体の食糧安全保障に大きな脅威を与えています。このため、国際社会と連携して地域の安定を図り、農業従事者が安心して農作業に従事できる環境づくりが極めて重要です。

結論として、イラクのほうれん草生産量の推移は、農業と地政学的状況、そして気候要因の複雑な相互作用を反映していると言えます。生産量の復活には、多方面からの具体的な対策を講じる必要があります。イラク政府や国際機関による支援がこれまで以上に重要であり、特に気候変動への適応策と水資源管理に焦点を当てた長期的な計画が求められます。これらの努力が結実すれば、イラクの農業は再び持続可能な発展軌道に乗る可能性があります。