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イラクのジャガイモ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによれば、イラクにおけるジャガイモ生産量は、1960年代はおおよそ1万トンと小規模でしたが、1970年代からの急成長を経て1990年代後半には70万トンを超え、本格的な伸びを見せました。しかし、2000年代後半以降は地政学的リスクや気候変動、インフラ問題などの影響を受け、非常に不安定な動きを示しており、2020年に約67万トンに達したものの、2022年には約27万トンにまで再び減少しています。この変動の背景には、政策的・環境的・社会的要因が複雑に絡み合っていることが考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 229,069
-15.34% ↓
2022年 270,591
-41.95% ↓
2021年 466,127
-30.93% ↓
2020年 674,840
72% ↑
2019年 392,348
136.94% ↑
2018年 165,589
-37.93% ↓
2017年 266,794
39.9% ↑
2016年 190,702
17.06% ↑
2015年 162,915
-59.5% ↓
2014年 402,302
-37.85% ↓
2013年 647,337
10.47% ↑
2012年 586,000
5.13% ↑
2011年 557,401
172.44% ↑
2010年 204,597
-8.31% ↓
2009年 223,147
-36.02% ↓
2008年 348,773
-41.68% ↓
2007年 598,000
-24.69% ↓
2006年 794,000
-1.73% ↓
2005年 808,000
28.25% ↑
2004年 630,000
-27.75% ↓
2003年 872,000
-2.79% ↓
2002年 897,000
43.98% ↑
2001年 623,000
14.31% ↑
2000年 545,000
-25.34% ↓
1999年 730,000
23.73% ↑
1998年 590,000
0.51% ↑
1997年 587,000
0.17% ↑
1996年 586,000
40.53% ↑
1995年 417,000
-0.35% ↓
1994年 418,479
3.12% ↑
1993年 405,832
88.76% ↑
1992年 215,000
28.47% ↑
1991年 167,360
-14% ↓
1990年 194,600
-13.82% ↓
1989年 225,800
57.02% ↑
1988年 143,800
-14.51% ↓
1987年 168,200
33.7% ↑
1986年 125,800
-15.34% ↓
1985年 148,600
24.25% ↑
1984年 119,600
14.34% ↑
1983年 104,600
12.47% ↑
1982年 93,000
-10.66% ↓
1981年 104,100
7.32% ↑
1980年 97,000
10.35% ↑
1979年 87,900
-15.46% ↓
1978年 103,978
61.48% ↑
1977年 64,389
-13.19% ↓
1976年 74,173
67.99% ↑
1975年 44,152
76.61% ↑
1974年 25,000
-28.57% ↓
1973年 35,000
75% ↑
1972年 20,000
66.67% ↑
1971年 12,000
-40% ↓
1970年 20,000
33.33% ↑
1969年 15,000
50% ↑
1968年 10,000 -
1967年 10,000 -
1966年 10,000 -
1965年 10,000 -
1964年 10,000 -
1963年 10,000 -
1962年 10,000 -
1961年 10,000 -

イラクのジャガイモ生産量の推移を見ると、1960年代には年平均1万トン程度と非常に限られた生産規模でした。しかし、1970年代以降、農業技術の発展や育種改良による収量増加が影響し、特に1973年から1979年にかけて急成長が見られます。この増加の背景には、政府が進めた農業振興政策や灌漑システムの整備が寄与したと考えられます。しかしながら、1980年代のイラン・イラク戦争やその後の湾岸戦争は農業インフラに壊滅的な被害を与え、生産の進展を一時的に制限しました。

1990年代は一転して回復基調が顕著となり、1993年には約40万トン、さらには1999年には73万トンという数値を記録しました。この時期は経済制裁下でも地域的な農業改革が実施され、特に多様化された灌漑手法の導入が効果をあげる要因となりました。しかしながら、2000年代初頭に政治的混乱やインフラの老朽化が再び影響し、2008年から2010年にかけて生産量は激減、2010年には約20万トンと深刻な低下を記録しました。

2020年に再び生産量が増加し約67万トンまで回復しましたが、これは一部地域での平穏の回復と、農業用資材へのアクセス改善が関係しています。しかしながら、この回復は持続的なものではなく、2022年には約27万トンにまで再び減少しています。この最新データは、イラクがジャガイモ生産において依然として極めて脆弱な状況にあることを示しています。これは、長期的な干ばつや水資源の不足、また気温上昇などの気候変動の影響が農業生産に重大な負担を与えているためと考えられます。また、慢性的な治安の悪化や輸送インフラの欠如も影響を及ぼしている可能性があります。

イラクのジャガイモ生産の不安定性を克服するためには、いくつかの方策が求められます。まず第一に、安定的な水資源の確保が重要です。これは、隣国との水利交渉を強化し、合理的な利用枠の確保を図る必要があります。第二に、気候適応型の農業技術の導入を推進することが求められます。乾燥地での収量向上を目指した耐旱性のある品種の開発や、効率的な灌漑システムの普及が一例です。また、農家への教育プログラムの充実と金融支援も安定的な生産維持に繋がるでしょう。

さらに、地政学的リスクが経済活動全般に及ぼす影響を考慮すると、国際的な支援の枠組み作りも重要です。特に、国際連合や地域的な農業支援プログラムへの参画が具体的対策となり得ます。これに加え、平和的な地域間協力の促進と、輸送網などの基幹インフラを再建する取り組みは、長期的には生産の安定化や流通効率の改善に繋がるでしょう。

結論として、イラクのジャガイモ生産は過去数十年間で大きな浮き沈みを経ており、その脆弱性は地政学的背景や気候変動の影響を如実に反映しています。しかし、多面的かつ持続可能な農業政策と国際連携を進めることで、この状況を改善する可能性は十分にあります。