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イラクのナシ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、イラクのナシ生産量は1961年の1,000トンから2003年には25,000トンと急激に増加しました。しかし、その後、政治的混乱や地政学的要因、気候変動などによる影響を受け生産量は大きく変動し、2023年には10,613トンと一時期のピークに比べて減少しています。このデータは、イラクの農業生産の不安定性と、その背景にある要因を示しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 10,613
-22.01% ↓
2022年 13,609
-12.53% ↓
2021年 15,559
-0.05% ↓
2020年 15,567
-0.54% ↓
2019年 15,652
100.1% ↑
2018年 7,822
0.86% ↑
2017年 7,755
4.19% ↑
2016年 7,443
9.71% ↑
2015年 6,784
-50.43% ↓
2014年 13,686
-4.47% ↓
2013年 14,326
7.6% ↑
2012年 13,314
3.61% ↑
2011年 12,850
0.48% ↑
2010年 12,789
2.4% ↑
2009年 12,489
-0.15% ↓
2008年 12,508
4.66% ↑
2007年 11,951
-0.41% ↓
2006年 12,000
9.09% ↑
2005年 11,000 -
2004年 11,000
-56% ↓
2003年 25,000
41.59% ↑
2002年 17,657
10.36% ↑
2001年 16,000
-11.11% ↓
2000年 18,000
5.88% ↑
1999年 17,000
6.25% ↑
1998年 16,000
6.67% ↑
1997年 15,000
25% ↑
1996年 12,000
20% ↑
1995年 10,000
25% ↑
1994年 8,000
-7.49% ↓
1993年 8,648
33.04% ↑
1992年 6,500
-7.14% ↓
1991年 7,000
-17.65% ↓
1990年 8,500
6.25% ↑
1989年 8,000
6.67% ↑
1988年 7,500
25% ↑
1987年 6,000
3.45% ↑
1986年 5,800
16% ↑
1985年 5,000
19.05% ↑
1984年 4,200
5% ↑
1983年 4,000
14.29% ↑
1982年 3,500
16.67% ↑
1981年 3,000
3.45% ↑
1980年 2,900
3.57% ↑
1979年 2,800
3.7% ↑
1978年 2,700
3.85% ↑
1977年 2,600
4% ↑
1976年 2,500
4.17% ↑
1975年 2,400
4.35% ↑
1974年 2,300
4.55% ↑
1973年 2,200
10% ↑
1972年 2,000
-7.62% ↓
1971年 2,165
13.95% ↑
1970年 1,900
5.56% ↑
1969年 1,800 -
1968年 1,800
5.88% ↑
1967年 1,700 -
1966年 1,700
13.33% ↑
1965年 1,500 -
1964年 1,500
7.14% ↑
1963年 1,400
16.67% ↑
1962年 1,200
20% ↑
1961年 1,000 -

イラクのナシ生産量は、長い歴史を通じてその変動を明確に示しています。データは1961年の1,000トンから始まり、1980年代から1990年代初頭にかけて急激な成長を遂げ、1990年には8,500トンに達しました。その後1995年には10,000トン、さらに1990年代後半には18,000トン以上の生産量を記録し、2003年には25,000トンというピークに達しました。この成長は、国内の農業技術の向上やインフラ整備が進んだこと、さらに気候条件に恵まれたことなどが背景にあると考えられます。しかしながら、2003年以降、生産量は大幅に減少し、現在に至るまで不安定な推移を続けています。

最も顕著に注目されるべきは、2004年の11,000トンへの急落です。この時期、イラクでは地政学的混乱が極まったアメリカによる軍事介入の影響が強く、農業インフラが破壊されただけでなく、一時的に労働力や流通網に深刻な影響が生じました。また、2015年以降をみると生産量が6,784トンまで落ち込み、その後も徐々に持ち直してはいるものの、2019年には15,652トン、2020年と2021年はほぼ横ばいで15,559トンを記録したものの、直近2023年には10,613トンに減少しており、再び停滞が見られています。

この背景にはいくつかの要因が考えられます。第一に、イラクは近年も地政学的なリスクに直面しており、国内の不安定性が農業生産にも影響を及ぼしています。これに伴い、灌漑設備や農業インフラの老朽化が進み、充分に機能していないと考えられます。第二に、気候変動の影響が見逃せません。イラクでは水資源の枯渇や降水量の減少が深刻化しており、作物全般の収量が落ち込む可能性があります。また、他国と比較すると、イラクのナシ生産量は規模が小さいと言えますが、隣国イランでは同じ地域的条件でも農業の効率化が進んでいるため、この分野での差は顕著です。

解決策として、まず第一にイラク国内の農業インフラを再整備することが急務です。最新の灌漑技術の導入やマイクロ灌漑システムの活用が、限られた水資源で効率的な農業を可能にするでしょう。第二に、小規模農家への金融支援や補助金制度の整備も重要です。これにより、高品質な農業機械や種子の導入を促進し、生産の安定性を高めることが期待されます。また、地域間協力を進めることも必要です。トルコやイランなど周辺国と共同で水管理政策を構築し、持続可能な農業インフラを構築する取り組みが求められます。

結論として、イラクのナシ生産量推移は同国の農業および経済の全体的な課題を如実に反映しています。国際社会や国連の支援を受けつつ、技術革新と地域間協力を進めることで、イラク農業の復興と持続可能な発展が期待されます。今後も気候変動や地政学的リスクにどのように対処するかが鍵となるでしょう。