国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、イラクのキュウリ類生産量は1961年の47,686トンから1984年には大幅に増加し、357,800トンに達しました。その後、1990年代は安定的な成長が見られ、2000年代に入ると生産量がさらに拡大。2005年には526,000トンを記録しました。しかし、2014年以降は急激な減少が起こり、その後の生産量は大きく変動しました。特に2023年には66,472トンまで落ち込みました。これらの変化には、地政学的リスクや気候変動、インフラの未整備など、さまざまな要因が関与しています。
イラクのキュウリ類生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 66,472 |
-66.07% ↓
|
2022年 | 195,924 |
5.63% ↑
|
2021年 | 185,484 |
-23.55% ↓
|
2020年 | 242,614 |
62.5% ↑
|
2019年 | 149,302 |
7.91% ↑
|
2018年 | 138,353 |
43.13% ↑
|
2017年 | 96,664 |
5.66% ↑
|
2016年 | 91,487 |
-41.48% ↓
|
2015年 | 156,334 |
-42.74% ↓
|
2014年 | 273,005 |
-32.69% ↓
|
2013年 | 405,610 |
-1.95% ↓
|
2012年 | 413,691 |
-16.53% ↓
|
2011年 | 495,616 |
14.76% ↑
|
2010年 | 431,868 |
2.59% ↑
|
2009年 | 420,945 |
10.48% ↑
|
2008年 | 381,004 |
-9.78% ↓
|
2007年 | 422,302 |
2.75% ↑
|
2006年 | 411,000 |
-21.86% ↓
|
2005年 | 526,000 |
21.48% ↑
|
2004年 | 433,000 |
17.34% ↑
|
2003年 | 369,000 |
-25.45% ↓
|
2002年 | 495,000 |
37.12% ↑
|
2001年 | 361,000 |
-7.44% ↓
|
2000年 | 390,000 |
-5.11% ↓
|
1999年 | 411,000 |
19.48% ↑
|
1998年 | 344,000 |
1.18% ↑
|
1997年 | 340,000 |
-0.58% ↓
|
1996年 | 342,000 |
-0.87% ↓
|
1995年 | 345,000 |
1.47% ↑
|
1994年 | 340,000 |
-2.86% ↓
|
1993年 | 350,000 |
-6.67% ↓
|
1992年 | 375,000 |
25.98% ↑
|
1991年 | 297,670 |
-17.73% ↓
|
1990年 | 361,800 |
5.54% ↑
|
1989年 | 342,800 |
17.84% ↑
|
1988年 | 290,900 |
-9.94% ↓
|
1987年 | 323,000 |
-12.2% ↓
|
1986年 | 367,900 |
-10.38% ↓
|
1985年 | 410,500 |
14.73% ↑
|
1984年 | 357,800 |
25.99% ↑
|
1983年 | 284,000 |
2.31% ↑
|
1982年 | 277,600 |
15.91% ↑
|
1981年 | 239,500 |
7.79% ↑
|
1980年 | 222,200 |
31.71% ↑
|
1979年 | 168,700 |
6.36% ↑
|
1978年 | 158,605 |
-0.62% ↓
|
1977年 | 159,601 |
56.8% ↑
|
1976年 | 101,786 |
-4.89% ↓
|
1975年 | 107,023 |
15.12% ↑
|
1974年 | 92,963 |
-30.67% ↓
|
1973年 | 134,086 |
3.14% ↑
|
1972年 | 130,000 | - |
1971年 | 130,000 |
0.78% ↑
|
1970年 | 129,000 |
5.74% ↑
|
1969年 | 122,000 |
56.44% ↑
|
1968年 | 77,984 |
-0.03% ↓
|
1967年 | 78,005 |
7.39% ↑
|
1966年 | 72,635 |
-21.51% ↓
|
1965年 | 92,538 |
0.26% ↑
|
1964年 | 92,300 |
28.94% ↑
|
1963年 | 71,586 |
15.32% ↑
|
1962年 | 62,074 |
30.17% ↑
|
1961年 | 47,686 | - |
1961年からのイラクのキュウリ類生産量の推移は、この国の農業発展と社会的・経済的変動を反映しています。1960年代から1980年代にかけての増加は、農業政策による生産性向上や農地の拡充によるものと考えられます。特に1984年には357,800トンと、約20年間で約7倍以上の増加を記録しています。この期間の成長は、中東における農業大国としての地位を確立しつつあったことを意味します。
しかし、1990年代に入ると、湾岸戦争やその後の経済制裁の影響を受けて農業生産が停滞し、キュウリ類の生産もその他の作物と同様に伸び悩みました。イラクの経済的制約や国際市場へのアクセスの制限が、農業資源への投資を難しくしていたことが分かります。この時期の生産量は安定しているように見えますが、内実は停滞ともいえる状況でした。
2000年以降、特に2005年には526,000トンを記録するなど、一時的に回復がみられました。これはイラク戦争後の復興期における援助や国際協力による農業インフラの再構築が功を奏した結果だと考えられます。しかし、この成長は長く続かず、2014年以降に急減することになります。2014年からの急激な減少は、ISIS(イスラム国)の台頭による地域紛争や治安の悪化が主要な要因です。治安の不安定さは農業労働者の確保や、農地へのアクセスを困難にするばかりか、水資源の利用や灌漑施設の整備にも悪影響を及ぼしました。また、気候変動の影響で干ばつが発生し、農地が荒廃したことも生産量の低迷につながっています。
特に2023年には、66,472トンという過去数十年で最も低い水準を記録しました。この年の生産量低下には、気候変動による深刻な干ばつに加え、頻発する洪水や電力供給不足といった現代のインフラ問題、さらには継続的な地政学的リスクが影響を及ぼしています。同じ中東地域に位置する他国、特にトルコやイランはイラクと比較してはるかに安定した農業基盤を持つため、生産量が大きく減少することはありませんでした。この差異は、地政学的安定性や水管理能力の違いを示しています。
今後、この生産量減少の流れを食い止めるためには、いくつかの対策が考えられます。まず、農業用水の確保と効率的な配分を目的とした灌漑設備の整備が必要です。他国、特にトルコやイランとの水資源配分に関する交渉を強化することも重要です。また、持続可能な農業技術の導入や、気候変動の影響に対応した農地管理の実施が求められます。さらに、国際機関との連携を深めることで、先進的な農業技術の移転や資金援助を受け入れることも効果的です。
結論として、イラクのキュウリ類生産量の推移は、農業分野における可能性と課題の両方を明確に示すものです。特に長期的な視点で見ると、地政学的リスクの緩和やインフラの改善が農業復興の鍵を握っています。国際社会との協力関係を強化しながら、気候変動への適応策や地域間の争いを回避するための政策立案を進めていく必要があります。これにより、イラクの農業生産は再び復興する道筋を見いだせるでしょう。