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イラクのトウモロコシ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、イラクのトウモロコシ生産量はこれまで大きな変動を繰り返してきました。特に1990年代初頭、2000年代後半、そして2010年代後半に顕著な増加や減少が見られました。2022年には496,003トンの生産量を記録し、2013年のピーク(831,345トン)にはおよびませんが、近年の中では比較的高い水準となっています。この推移から、政策や地政学的な要因に強い影響を受けていることがうかがえます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 538,251
8.52% ↑
2022年 496,003
32.48% ↑
2021年 374,400
-10.72% ↓
2020年 419,345
-11.36% ↓
2019年 473,064
110.25% ↑
2018年 225,000
21.43% ↑
2017年 185,291
-28.61% ↓
2016年 259,546
42.34% ↑
2015年 182,340
-36.97% ↓
2014年 289,288
-65.2% ↓
2013年 831,345
65.15% ↑
2012年 503,389
49.95% ↑
2011年 335,710
25.88% ↑
2010年 266,699
12.01% ↑
2009年 238,113
-17.31% ↓
2008年 287,955
-25.01% ↓
2007年 384,000
-3.76% ↓
2006年 399,000
-0.5% ↓
2005年 401,000
-3.61% ↓
2004年 416,000
78.54% ↑
2003年 233,000
-6.05% ↓
2002年 248,000
6.9% ↑
2001年 232,000
321.82% ↑
2000年 55,000
-52.17% ↓
1999年 115,000
-13.53% ↓
1998年 133,000
9.92% ↑
1997年 121,000
-3.2% ↓
1996年 125,000
38.89% ↑
1995年 90,000
-29.69% ↓
1994年 128,000
-54.29% ↓
1993年 280,000
7.69% ↑
1992年 260,000
10.17% ↑
1991年 236,000
37.29% ↑
1990年 171,900
65.93% ↑
1989年 103,600
34.2% ↑
1988年 77,200
25.94% ↑
1987年 61,300
15.66% ↑
1986年 53,000
29.42% ↑
1985年 40,951
32.4% ↑
1984年 30,930
10.07% ↑
1983年 28,100
-0.35% ↓
1982年 28,200
-28.24% ↓
1981年 39,300
-34.06% ↓
1980年 59,600
1.71% ↑
1979年 58,600
-21.66% ↓
1978年 74,800
-9.01% ↓
1977年 82,210
49.53% ↑
1976年 54,980
134.72% ↑
1975年 23,424
60.01% ↑
1974年 14,639
-23.39% ↓
1973年 19,108
7.94% ↑
1972年 17,703
11.21% ↑
1971年 15,919
169.72% ↑
1970年 5,902
23.34% ↑
1969年 4,785
9.02% ↑
1968年 4,389
-1.75% ↓
1967年 4,467
3.47% ↑
1966年 4,317
18.02% ↑
1965年 3,658
30.64% ↑
1964年 2,800
39.1% ↑
1963年 2,013
1.51% ↑
1962年 1,983
4.48% ↑
1961年 1,898 -

イラクのトウモロコシ生産量データの過去数十年の推移を見ると、その変動は経済的要因、気象条件、そして地政学的背景に大きく左右されていることが確認できます。1960年代は生産量が年間数千トンの小規模で推移していましたが、1970年代半ばには急増し、1977年には82,210トンの生産量を達成しました。その背景には、1960~70年代の近代化政策や農業技術の導入があったと考えられます。

しかし、1980年代に入ると、イラン・イラク戦争(1980年~1988年)が始まり、農業生産には深刻な影響を及ぼしました。同時期に、農地の荒廃や労働力不足により生産量が激減しましたが、1989年には103,600トンと回復基調を見せました。それでも、その後の1990年代初頭にかけて湾岸戦争や国際的な制裁を受け、農業全体が再び大きな打撃を受けました。1993年の280,000トンから1994年には128,000トンまで急減したことは、これらの影響が色濃く反映されたものです。

2000年代に入ると、戦争や制裁の影響が軽減される一方、新たな問題として水資源の不足や気候変動の影響が挙げられます。2004年の416,000トンへの増加は一時的な基盤強化の成果と考えられるものの、その後の生産水準は安定せず、地政学的安定と農業技術の進展が生産量のカギを握っていることが明白です。

もっとも注目すべきは2013年、イラクのトウモロコシ生産量が過去最大の831,345トンに達したことです。この急増は、当時の農業政策や灌漑の改善、新しい品種の導入などの成功によるものと言われています。同時期の世界的なトウモロコシ需要の増加に応じ、輸出を目指した施策も影響していました。しかし、その後の2014年には289,288トンと激減し、これはイスラム国(IS)の台頭による混乱が主要な原因であるとされています。

近年のデータでは、生産量は再び増加の兆しを見せています。例えば2022年には496,003トンを記録しており、この数字は2010年代後半の停滞期を上回るものです。しかしながら、将来を見据えた際には、水不足、内戦やテロによる農地破壊、そして気候変動の影響をどのように克服していくかが大きな課題として浮上しています。

イラクの農業振興に向けた解決策としては、まず灌漑施設や水資源管理の改善が必要です。また、国際機関や他国との協力を通じて、耐乾性の高いトウモロコシ品種の開発や環境負荷の少ない農法の普及を進めることが現実的な手段となります。さらに農地の保護を目的とした法整備や補助金制度の導入も重要です。

地政学的背景を考慮すると、地域の安定化も非常に重要な要因です。特に紛争地域における農家支援や移民労働者の受け入れ促進、さらには国内外向け輸出ルートの確保が求められます。内戦や資源争奪のリスクは農業だけでなく全体的な経済基盤を蝕むため、平和的共存を目的とした国際間協力の枠組みづくりが急務です。

総じて、データの動向が指し示すのは、イラクのトウモロコシ生産量が地政学的課題と深い関連性を持つという事実です。農業セクターの復興を通じて国全体の経済回復を目指すと同時に、気候や地政学的リスクへの対策を講じることで、安定した農業生産基盤を築くことが今後の目標となるでしょう。