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イラクのカボチャ・スクワッシュ・ヒョウタン生産量推移(1961年~2023年)

国連食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、イラクのカボチャ・スクワッシュ・ヒョウタンの生産量は、1961年から2023年にかけて著しい変動を見せています。1960年代には6万トン前後で推移していましたが、2005年以降、急激な増産期が始まり、2012年にはピークの16万7,576トンに達しました。しかしその後、2015年以降は急激に減少し、2023年にはわずか11,095トンと、この60年間で最低水準にまで落ち込んでいます。このデータは、イラクの農業を取り巻く経済的、地政学的な要因が生産量に大きな影響を与えていることを示しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 11,095
-71.39% ↓
2022年 38,783
9.01% ↑
2021年 35,579
-8.15% ↓
2020年 38,737
73.23% ↑
2019年 22,361
3.38% ↑
2018年 21,629
8.89% ↑
2017年 19,864
17.36% ↑
2016年 16,925
-44.67% ↓
2015年 30,589
-77.69% ↓
2014年 137,123
-16.62% ↓
2013年 164,465
-1.86% ↓
2012年 167,576
1.41% ↑
2011年 165,239
14.34% ↑
2010年 144,514
9.62% ↑
2009年 131,836
13.55% ↑
2008年 116,100
-18.7% ↓
2007年 142,800
29.82% ↑
2006年 110,000
10% ↑
2005年 100,000
21.95% ↑
2004年 82,000
32.26% ↑
2003年 62,000
31.91% ↑
2002年 47,000
17.5% ↑
2001年 40,000
14.29% ↑
2000年 35,000
-23.91% ↓
1999年 46,000
-25.2% ↓
1998年 61,500
2.5% ↑
1997年 60,000
-1.64% ↓
1996年 61,000
-1.61% ↓
1995年 62,000
1.64% ↑
1994年 61,000
-1.61% ↓
1993年 62,000
3.33% ↑
1992年 60,000
1.75% ↑
1991年 58,970
-17.52% ↓
1990年 71,500
45.62% ↑
1989年 49,100
-5.94% ↓
1988年 52,200
7.85% ↑
1987年 48,400
-10.7% ↓
1986年 54,200
9.72% ↑
1985年 49,400
-27.99% ↓
1984年 68,600
49.46% ↑
1983年 45,900
-7.65% ↓
1982年 49,700
48.8% ↑
1981年 33,400
-3.47% ↓
1980年 34,600
36.76% ↑
1979年 25,300
-50.59% ↓
1978年 51,200
29.9% ↑
1977年 39,415
-24.06% ↓
1976年 51,901
25.08% ↑
1975年 41,494
-6.85% ↓
1974年 44,547
0.41% ↑
1973年 44,363
-17.33% ↓
1972年 53,662
-25.75% ↓
1971年 72,268
7.29% ↑
1970年 67,356
3.09% ↑
1969年 65,337
-5.17% ↓
1968年 68,902
-18.19% ↓
1967年 84,218
29.01% ↑
1966年 65,281
0.69% ↑
1965年 64,834
9.47% ↑
1964年 59,223
28.6% ↑
1963年 46,053
8.21% ↑
1962年 42,560
-12.8% ↓
1961年 48,806 -

イラクのカボチャ・スクワッシュ・ヒョウタンの生産量データは、同国の農業および社会経済状況を考察するうえで非常に示唆的です。1960年代から1970年代にかけては年平均約5万トンから8万トンで安定して推移していました。この期間、イラクの農業は比較的安定しており、生産量も堅調でした。しかし、1970年代後半から1980年代初頭にかけての政治的不安定やイラン・イラク戦争の影響により、生産量は大きく減少しました。

2005年以降、イラクの農業には一時的な復興の兆しが見られました。この時期には内戦後の復興支援や国内インフラの再建が進められた影響もあり、農産物の生産量は急激に増加しました。2007年から2013年にかけては生産量が年々増加し、2012年には過去最高の16万7,576トンに達しました。これは、国内外からの農業投資や技術支援が一定の成果を上げたことを示しています。

しかし、2014年以降、イスラム国(IS)の台頭に伴う紛争や治安の悪化、農業インフラの破壊が深刻な影響を及ぼしました。この時期には灌漑施設の損壊や農村地域の避難民の増加が進み、生産体制が弱体化しました。その結果、2015年には生産量が30,589トンに急減し、2016年には16,925トンとさらに低下しました。このような地政学的背景が生産量の減少を直接的に引き起こしています。

また、近年の気候変動もイラクの農業に深刻な影響を与えています。2023年のデータを見ると、生産量は11,095トンと過去最低を記録していますが、この背景には干ばつや地中海沿岸諸国での水資源争奪問題が関連しています。イラクはティグリス川やユーフラテス川に多くを依存していますが、これらの河川の水量減少や下流地域への流域制約が農地の灌漑に大きな障害をもたらしています。

今後の課題として、第一に気候変動への対応が挙げられます。旱魃耐性のある種子の普及や高効率な灌漑システムの導入が急務です。また、地政学的リスクの軽減も重要であり、農業インフラの再建と地域の治安改善が不可欠です。さらに、国際機関や隣接国と共同で、水資源管理の持続可能な枠組みを構築する必要があります。イラクは農業技術を他国から学ぶだけでなく、地域協力の中で優れた知見を活用するべきです。

結論として、この生産量データはイラクにおける農業の脆弱性と潜在能力の両方を際立たせています。国際社会による積極的な技術支援や資本提供があれば、イラクの農業は持続可能な発展の道を歩むことができるでしょう。同時に国内では農家支援策を強化し、復興後の持続的な発展に向けた具体的な施策を講じるべきです。このような取り組みがなされることで、イラクのカボチャ・スクワッシュ・ヒョウタン生産が再び安定し、その成果が地域住民の生活向上や食料安全保障に寄与することが期待されます。