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イラクのオリーブ生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した2024年最新データによると、イラクのオリーブ生産量は1961年から2022年までの間に大きな変動を経験しています。初期は8,000トンほどで安定していましたが、その後政治的混乱や地政学的リスクにより低下を続け、特に1980年代には最低水準の2,000トン台に落ち込みました。一方、2000年代以降には徐々に回復傾向が見られ、最近の2019年以降では30,000トンを超える大幅な増加が確認されています。ただし近年の減少傾向(2022年の31,511トン)は注意が必要です。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 29,210
-7.3% ↓
2022年 31,511
-5.41% ↓
2021年 33,314
-1.76% ↓
2020年 33,912
-1.71% ↓
2019年 34,501
180.68% ↑
2018年 12,292
20.47% ↑
2017年 10,203
9.33% ↑
2016年 9,332
12.87% ↑
2015年 8,268
-66.62% ↓
2014年 24,768
2.62% ↑
2013年 24,136
18.44% ↑
2012年 20,379
16.98% ↑
2011年 17,421
15.27% ↑
2010年 15,113
16.33% ↑
2009年 12,992
19.85% ↑
2008年 10,840
19.75% ↑
2007年 9,052
201.73% ↑
2006年 3,000 -
2005年 3,000 -
2004年 3,000
-25% ↓
2003年 4,000
-27.27% ↓
2002年 5,500
-8.33% ↓
2001年 6,000 -
2000年 6,000
-47.83% ↓
1999年 11,500
-14.81% ↓
1998年 13,500
3.85% ↑
1997年 13,000
4% ↑
1996年 12,500
-3.85% ↓
1995年 13,000
-7.14% ↓
1994年 14,000
-6.67% ↓
1993年 15,000
7.14% ↑
1992年 14,000
100% ↑
1991年 7,000
-41.67% ↓
1990年 12,000 -
1989年 12,000
9.09% ↑
1988年 11,000
22.22% ↑
1987年 9,000
28.57% ↑
1986年 7,000
16.67% ↑
1985年 6,000
20% ↑
1984年 5,000
66.67% ↑
1983年 3,000
20% ↑
1982年 2,500
25% ↑
1981年 2,000
-4.76% ↓
1980年 2,100
-40% ↓
1979年 3,500
-30% ↓
1978年 5,000
-23.08% ↓
1977年 6,500
-7.14% ↓
1976年 7,000
-12.5% ↓
1975年 8,000
-5.88% ↓
1974年 8,500
-5.56% ↓
1973年 9,000
-10% ↓
1972年 10,000 -
1971年 10,000 -
1970年 10,000
42.86% ↑
1969年 7,000
-22.22% ↓
1968年 9,000 -
1967年 9,000 -
1966年 9,000 -
1965年 9,000 -
1964年 9,000
12.5% ↑
1963年 8,000 -
1962年 8,000 -
1961年 8,000 -

1961年から2022年にわたるイラクのオリーブ生産量の推移データを見ると、その変動の背景には地政学的環境、気候条件、そして農業政策が深く影響を及ぼしていることがわかります。イラクのオリーブ産業は、地中海性気候に適した樹木栽培の一環として発展したものですが、内政の不安定さや戦争、経済制裁などがその成長を妨げる要因となってきました。

1961年から1970年代初頭までは、オリーブ生産量は8,000~10,000トンと比較的安定していました。しかし、1970年代後半から1980年代中頃にかけては、イラン・イラク戦争や経済構造の変化によって生産基盤が弱まり、生産量は1980年代に最低水準の2,000トン台にまで落ち込みました。この期間は、インフラ破壊や農業資源の枯渇が主な要因であると考えられます。

その後、1980年代後半から1990年代前半には一定の回復が見られ、1992年の14,000トンや1993年の15,000トンがその象徴的な結果です。しかし、2000年代に入ると再び大きな減少が起こり、2003年のイラク戦争以降、生産量は最低の3,000トンにまで達しました。この期間の減少は農業インフラが再び損壊し、サプライチェーンが寸断されたことが影響しています。

ただし、2007年以降のデータは希望を示しています。農業政策の見直しや国連や国際機関による支援を背景に、オリーブ生産は2007年の9,052トンから順調に増加し、2014年には24,768トンに達しました。特に2019年の34,501トンという数字は、それ以前との大きな差異を物語っており、国内農業の発展に向けた努力がある程度実を結んでいると考えられます。しかし、2020年以降の若干の減少傾向(2022年の31,511トンへの減少)は、新型コロナウイルス感染症の影響や気候変動の脅威によるものである可能性が指摘されています。

他国との状況比較を行うと、イラクのオリーブ生産量は依然として地中海諸国(例:スペインやギリシャ)の規模には及びません。スペインは年間約100万トンを超える生産量を誇り、技術と生産効率の面で大きなギャップがあります。これを縮めるためには、灌漑技術の向上や品種改良による収量増加が不可欠です。

今後の課題としては、まず灌漑インフラの整備と土壌改善を行い、生産の安定化を図ることが重要です。また、現代的な農法の導入による生産効率の向上を目指すべきです。このためには、農業技術者の育成や国際的な技術提供が鍵を握ります。さらに、オリーブオイルなどの加工品製造を通じて付加価値を高め、地域経済の活性化を図ることで持続可能な農業モデルを実現することが提案されます。

ただし、こうした改善は地政学的安定が前提条件となります。紛争地域での生産設備保護や民間農業従事者への保障制度の強化が直近の取り組みとして考えられます。また、気候変動への対応策として、耐乾燥性の高い品種の開発や、気候変動リスクを織り込んだ長期的な農業計画を策定する必要があります。

結論として、イラクのオリーブ生産量は過去数十年間にわたり大きな変動を経験しましたが、国家規模の協調的な政策と地域の持続可能な農業振興が実現すれば、その潜在力を引き出すことが可能です。国際機関や専門家の助力によって、イラクはより持続可能で高効率なオリーブ生産国へと転換できるでしょう。