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イラクの鶏卵生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、イラクの鶏卵生産量は1961年の10,000トンから2023年の52,834トンへとおおむね増加傾向を示しています。しかし、特定の年度では大きな変動が見られ、特に2021年の134,952トンへの急増と2022、2023年の急減が注目されます。これは経済状況や社会的影響が鶏卵生産に大きく影響を及ぼすことを示唆しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 52,834
-33.77% ↓
2022年 79,776
-40.89% ↓
2021年 134,952
141.33% ↑
2020年 55,920
15.41% ↑
2019年 48,455
13.31% ↑
2018年 42,763
17.16% ↑
2017年 36,500
2.67% ↑
2016年 35,550
25.84% ↑
2015年 28,250
-47.69% ↓
2014年 54,000 -
2013年 54,000
1.89% ↑
2012年 53,000
4.04% ↑
2011年 50,940
10% ↑
2010年 46,310
31.19% ↑
2009年 35,300
-22.89% ↓
2008年 45,780
13.46% ↑
2007年 40,350
-13.41% ↓
2006年 46,600
-9.86% ↓
2005年 51,700
7.27% ↑
2004年 48,195
59.49% ↑
2003年 30,219
-43.09% ↓
2002年 53,100
27.34% ↑
2001年 41,700
40.69% ↑
2000年 29,640
18.56% ↑
1999年 25,000
4.17% ↑
1998年 24,000
6.67% ↑
1997年 22,500
2.97% ↑
1996年 21,850
5.05% ↑
1995年 20,800
-20.76% ↓
1994年 26,250
4.37% ↑
1993年 25,150
27.34% ↑
1992年 19,750
9.12% ↑
1991年 18,100
-77.81% ↓
1990年 81,550
-11.21% ↓
1989年 91,850
44.19% ↑
1988年 63,700
-14.04% ↓
1987年 74,100
-9.41% ↓
1986年 81,800
33.14% ↑
1985年 61,440
48.15% ↑
1984年 41,472
0.75% ↑
1983年 41,164
-13.9% ↓
1982年 47,810
1.59% ↑
1981年 47,060
-1.65% ↓
1980年 47,850
-4.63% ↓
1979年 50,175
-6% ↓
1978年 53,380
50.58% ↑
1977年 35,450
57.56% ↑
1976年 22,500
41.51% ↑
1975年 15,900
0.63% ↑
1974年 15,800
0.32% ↑
1973年 15,750
0.96% ↑
1972年 15,600
4% ↑
1971年 15,000
3.45% ↑
1970年 14,500
3.57% ↑
1969年 14,000
3.7% ↑
1968年 13,500
3.85% ↑
1967年 13,000
4% ↑
1966年 12,500
4.17% ↑
1965年 12,000
4.35% ↑
1964年 11,500
4.55% ↑
1963年 11,000
4.76% ↑
1962年 10,500
5% ↑
1961年 10,000 -

イラクの鶏卵生産量データは、この国の農業分野が様々な政治的、経済的、社会的要因に影響を受けることを端的に示しています。1960年代から1970年代初頭にかけたデータでは、農業技術の進歩や需要の増加に伴い、緩やかな生産量の増加が見られます。例えば、1961年に10,000トンだった生産量は、1975年には15,900トンに倍増しました。

ところが、1976年以降、鶏卵生産量は劇的な増加を経験しました。これは恐らく、石油収入の増加により農業インフラが急速に整備され、生産効率が向上したためだと考えられます。1978年には53,380トンという非常に高い水準に到達しました。しかし、その後1980年台初頭のイラン・イラク戦争の影響により生産量が落ち込みました。この期間のデータは特に、社会的不安定性が食料生産量に影響を及ぼすことを物語っています。

1991年には湾岸戦争の影響で、わずか18,100トンという過去最低水準を記録しました。このように、戦争や経済制裁など地政学的リスクが直接農業生産に大きく影響していることが確認できます。1990年代には徐々に回復が見られたものの、2003年のイラク戦争による影響で再び30,219トンに落ち込みました。慢性的なインフラの脆弱性がこうした低迷を支えている可能性があります。

一方で、2021年の134,952トンという記録的な生産量急増には注目すべきです。この急増は、新しい農業政策や外部からの技術支援、または養鶏業への特定の投資があった可能性が考えられます。しかし、この増加の持続可能性は限定的であり、翌2022年には79,776トン、2023年には52,834トンに急減しています。この波状変動の背景には、内部的な政策の継続性や外的要因である気候変動、そして地域情勢の変化などが影響を及ぼしている可能性があります。

また、新型コロナウイルス流行下において生産量は一時的に増加したものの、その後急激な調整局面に入っているとも解釈できます。他国、特に日本、中国、アメリカのような安定した鶏卵生産を維持する国々と比較すると、イラクの動向は非常に変動が大きく、その安定性確保が課題です。

今後の課題としては、農業インフラの整備や農業技術の促進に加え、政情不安定の影響を受けにくい生産体制の確立が求められます。地域ごとの協力体制も重要で、例えば近隣諸国との農業技術交流や市民啓発プログラムの展開が有効であると考えられます。また、気候変動の影響を軽減するため、より耐性の高い鶏種の導入や飼料の供給体制強化も重要です。

結論として、イラクの鶏卵生産量の推移は、経済・政治・社会的な変動が食糧生産に与える影響を如実に示しています。国際社会の支援を受けつつ、持続可能な農業政策を推進することが今後の安定した生産確保に向けた鍵となるでしょう。