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イラクの米生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによれば、イラクの米生産量は時期によって大きな変動を見せています。2022年の生産量は11,637トンと、過去数十年間の中で著しく低下しています。一方、直近のピークである2019年には574,705トンを記録しており、この両極端なデータは地政学的背景や環境要因などの複合的な影響を反映しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 12,602
8.29% ↑
2022年 11,637
-97.25% ↓
2021年 422,463
-8.98% ↓
2020年 464,159
-19.24% ↓
2019年 574,705
3058.41% ↑
2018年 18,196
-93.16% ↓
2017年 265,852
46.62% ↑
2016年 181,320
66.03% ↑
2015年 109,209
-72.9% ↓
2014年 403,028
-10.8% ↓
2013年 451,849
25.05% ↑
2012年 361,339
53.68% ↑
2011年 235,118
50.88% ↑
2010年 155,829
-9.96% ↓
2009年 173,074
-30.26% ↓
2008年 248,157
-36.86% ↓
2007年 393,000
8.26% ↑
2006年 363,000
17.48% ↑
2005年 309,000
23.6% ↑
2004年 250,000
177.78% ↑
2003年 90,000
-64% ↓
2002年 250,000
95.31% ↑
2001年 128,000
113.33% ↑
2000年 60,000
-66.67% ↓
1999年 180,000
-40% ↓
1998年 300,000
22.95% ↑
1997年 244,000
-9.63% ↓
1996年 270,000
-14.29% ↓
1995年 315,000
-17.75% ↓
1994年 383,000
85.92% ↑
1993年 206,000
14.44% ↑
1992年 180,000
-4.81% ↓
1991年 189,103
-17.35% ↓
1990年 228,800
-1.29% ↓
1989年 231,800
64.86% ↑
1988年 140,600
-28.23% ↓
1987年 195,900
38.74% ↑
1986年 141,200
-5.17% ↓
1985年 148,900
36.98% ↑
1984年 108,700
-1.63% ↓
1983年 110,500
-32.37% ↓
1982年 163,400
0.74% ↑
1981年 162,200
-2.82% ↓
1980年 166,900
5.77% ↑
1979年 157,800
-8.26% ↓
1978年 172,000
-13.67% ↓
1977年 199,240
21.96% ↑
1976年 163,360
169.84% ↑
1975年 60,540
-12.63% ↓
1974年 69,290
-55.76% ↓
1973年 156,620
-41.56% ↓
1972年 268,000
-12.62% ↓
1971年 306,700
70.2% ↑
1970年 180,200
-43.33% ↓
1969年 318,000
-10.04% ↓
1968年 353,500
12.25% ↑
1967年 314,921
72.95% ↑
1966年 182,087
2.05% ↑
1965年 178,434
-3.21% ↓
1964年 184,350
28.72% ↑
1963年 143,216
26.63% ↑
1962年 113,100
65.22% ↑
1961年 68,453 -

イラクはかつて豊かな農業地帯として知られ、特に1960年代から1970年代前半にかけて米生産が安定して増加していました。例えば、1967年には314,921トン、1968年には353,500トンを記録しています。しかし、1970年代後半から顕著な揺らぎが見られるようになります。この揺らぎの背景には、気候変動やインフラの老朽化、政策の失敗が指摘されます。また、1980年代から1990年代にかけてのイラン・イラク戦争や湾岸戦争の影響により、農業基盤は大きな被害を受けました。その結果、生産量は安定せず、この期間中も上下幅の大きいデータとなっています。

2000年代に入ると更なる地政学的な問題が影響を及ぼし、2003年のイラク戦争後はインフラ再建が急務となりました。しかし、内戦や国土の一部を占拠する武装勢力の活動により、農業資源は引き続き損耗していきました。例えば、2000年には60,000トンと過去最低レベルを記録しましたが、2005年以降やや回復が見られ、2007年には393,000トンまで増加しています。

しかし、最も特徴的なのは近年の大幅な変動です。2019年には574,705トンと飛躍的な増加を記録しましたが、その後の2022年にはわずか11,637トンと急激に低下しました。この劇的な変動の背景には少なくとも三つの要因が挙げられます。一つ目は、気候変動による干ばつの頻発です。イラクは元来乾燥した地域であり、水不足が農業に深刻な影響を与えています。二つ目は、河川流量の減少です。具体的には、周辺諸国でのダム建設や水資源管理政策によって、イラクに流れ込む水量が減少していることが影響しています。三つ目は、地政学的なリスクです。例えば、国内外での武力衝突や社会不安により農業活動が適切に行えない状況が続いています。

未来を見据えた場合、この状況を改善するためにはいくつかの具体策が必要となるでしょう。例えば、持続可能な農業技術の導入が挙げられます。これには、より効率的な灌漑システムの開発や、耐乾性の高い品種の導入が含まれます。また、国際的な水資源管理協定の締結も重要課題となります。イラクにとって、上流国との協力を強化し、公平かつ安定した水供給を確保することが急務です。さらに、農家への技術支援や金融支援を強化することで、小規模農家の経済的自立を促進し、全体的な生産能力を底上げすることも重要な施策となります。

結論として、イラクの米生産量の急激な変動は、気候や水資源、地政学的なリスクが密接に関わる複雑な課題を反映しています。これらの課題に対処するためには、政府および国際社会が協働し、長期的な視点で包括的な政策を推進する必要があります。具体的には、インフラ整備や農業技術の向上、そして水資源管理の国際協力が鍵となるでしょう。このような努力が実を結べば、イラクが再び安定した農業生産を実現できる可能性が高まると考えられます。