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イラクのブドウ生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、イラクのブドウ生産量は過去60年以上にわたり大きく変動しており、2019年以降急激な回復を見せたものの、2023年には再び減少しています。1960年代には5万トン台で安定していた生産量が1970年代に急増し、1984年にはピークの46万トンを記録しました。しかし、その後は政治的混乱や地政学リスクなどの影響で大きな変動を見せ、2023年に27万トン台に減少しています。本データは、イラクの農業政策や地域情勢、気候変動の影響を分析するうえで重要な指標となるものです。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 272,110
-29.32% ↓
2022年 384,984
-9.91% ↓
2021年 427,356
1.3% ↑
2020年 421,868
0.33% ↑
2019年 420,466
241.61% ↑
2018年 123,083
23.77% ↑
2017年 99,444
5.68% ↑
2016年 94,103
0.51% ↑
2015年 93,629
-62.81% ↓
2014年 251,788
-6.77% ↓
2013年 270,072
11.67% ↑
2012年 241,842
6.67% ↑
2011年 226,718
6.62% ↑
2010年 212,649
9.2% ↑
2009年 194,731
-4.18% ↓
2008年 203,223
10.45% ↑
2007年 184,000
-0.54% ↓
2006年 185,000 -
2005年 185,000
-5.46% ↓
2004年 195,675
-41.59% ↓
2003年 335,000 -
2002年 335,000
11.67% ↑
2001年 300,000
8.3% ↑
2000年 277,000
1.09% ↑
1999年 274,000
-10.16% ↓
1998年 305,000
1.67% ↑
1997年 300,000
-3.23% ↓
1996年 310,000
3.33% ↑
1995年 300,000
6.38% ↑
1994年 282,000
-31.9% ↓
1993年 414,100
2.25% ↑
1992年 405,000
6.58% ↑
1991年 380,000
-16.48% ↓
1990年 455,000
1.11% ↑
1989年 450,000
1.12% ↑
1988年 445,000
1.14% ↑
1987年 440,000
-2.22% ↓
1986年 450,000
2.27% ↑
1985年 440,000
-4.35% ↓
1984年 460,000
76.92% ↑
1983年 260,000
4% ↑
1982年 250,000
24.38% ↑
1981年 201,000
26.42% ↑
1980年 159,000
-47% ↓
1979年 300,000
-29.22% ↓
1978年 423,820
17.73% ↑
1977年 360,000
12.5% ↑
1976年 320,000
18.52% ↑
1975年 270,000
22.73% ↑
1974年 220,000
29.41% ↑
1973年 170,000
41.67% ↑
1972年 120,000
53.8% ↑
1971年 78,024
4.03% ↑
1970年 75,000
2.74% ↑
1969年 73,000
4.29% ↑
1968年 70,000
2.94% ↑
1967年 68,000
4.62% ↑
1966年 65,000
44.44% ↑
1965年 45,000 -
1964年 45,000 -
1963年 45,000 -
1962年 45,000 -
1961年 45,000 -

イラクのブドウ生産量は、1961年以降から現在までの60年以上にわたるデータに基づくと、極端な増減を繰り返してきたことがわかります。初期の1960年代から1970年代にかけては着実な増加を見せ、1970年代後半には年間42万トン以上の生産量を記録するまで成長しました。この急増は、農業技術の進展や経済成長に伴う灌漑インフラの整備などが大きく寄与したと考えられます。しかし、1980年代にはイラン・イラク戦争やその後の国際経済制裁が影響し、生産量が急減しています。

特に1984年にはピークとなる46万トンを記録したものの、その後の国の経済的・政治的混乱により1990年代には30万トン前後で推移しています。2000年代に入るとイラク戦争やその後の不安定な社会状況が農業に深刻な影響を及ぼし、生産量は20万トン台にまで減少しました。この時期には、農地の荒廃やインフラの損壊、さらには国際的な農業支援の不足が原因として挙げられます。

このような中、特筆すべきは2019年以降の回復傾向です。この年の生産量は42万トンを超え、2021年にはさらに増加し42万7千トンを記録しました。この成長は、国や国際機関が進めた農業振興計画や、地域的な安定が部分的に回復した影響だと考えられます。しかし、2023年には再び27万トンに減少しています。この減少の一因として、近年世界的に深刻化している気候変動や水不足、さらに地域的な衝突が再び生じたことが挙げられます。

イラクのブドウ生産の将来を考える上では、まず気候変動に対応した具体的な政策が重要です。例えば、耐乾性の高い品種の開発や、水資源を効率的に利用する灌漑技術の導入が挙げられます。また、国際機関や地域間の協力体制を活用し、農業インフラの再構築や農業労働力の再配置を進めることも有効です。さらに、農家への支援を強化することで、生産者の意欲を高めることが求められるでしょう。

他国と比較すると、日本や韓国は主に消費者マーケットとしてのブドウ需要が高く、一方でアメリカやフランスといった国々はワイン製造にも関連するブドウ生産で世界的評価を得ています。一方、イラクは自国消費向けに集中しているため、輸出可能な余剰分がほとんど存在していません。今後、品質向上や物流ネットワークの整備により、余剰分を国際市場に供給する取り組みが経済的利益をもたらす可能性もあります。

地政学的なリスクを考慮する場合、イラク周辺の不安定な安全保障状況も重要な課題です。農地に影響を与える紛争や水資源を巡る紛争がブドウの生産に悪影響を及ぼしてきた歴史があり、これらを重視した政策が検討されるべきです。国際的な調停機関を活用し、水資源の公平な分配を目指すことが、農業全体の安定化にもつながるでしょう。

これらの課題を踏まえた上で、未来には持続可能な農業体制を構築し、地域経済の活性化を進めることがイラクにとって鍵となります。特に国際社会との連携を強化し、技術や資金の支援を得ることで、長期間安定したブドウ生産を実現できる可能性があります。このような取り組みがイラク農業の競争力を高め、地域の平和的発展にも寄与するでしょう。