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イラクの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、イラクの羊肉生産量は2023年時点で47,316トンとなり、記録が始まった1961年以降で最も高い水準となっています。この間、イラクは政策的・社会的な要因や紛争の影響を受けて、生産量の増減を経てきましたが、特に2008年以降はおおむね増加傾向を示しています。しかし、長期的な視点でみると、景気変動や地政学的リスクがこの成長に与える影響は依然として重要な課題となっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 47,316
0.45% ↑
2022年 47,104
0.45% ↑
2021年 46,893
0.45% ↑
2020年 46,683
0.45% ↑
2019年 46,474
0.45% ↑
2018年 46,266
0.45% ↑
2017年 46,058
0.45% ↑
2016年 45,852
0.45% ↑
2015年 45,647
0.45% ↑
2014年 45,442
21.67% ↑
2013年 37,348
-20.79% ↓
2012年 47,150
7.16% ↑
2011年 44,000
4.76% ↑
2010年 42,000
5% ↑
2009年 40,000
-9.09% ↓
2008年 44,000
18.38% ↑
2007年 37,170
22.37% ↑
2006年 30,375
16.11% ↑
2005年 26,160
30.8% ↑
2004年 20,000
-30.56% ↓
2003年 28,800
38.46% ↑
2002年 20,800 -
2001年 20,800
-13.33% ↓
2000年 24,000
19.05% ↑
1999年 20,160
0.8% ↑
1998年 20,000
5.49% ↑
1997年 18,960
17.5% ↑
1996年 16,136
-28.18% ↓
1995年 22,466
-12.24% ↓
1994年 25,600
-12.09% ↓
1993年 29,120
27.27% ↑
1992年 22,880
36.19% ↑
1991年 16,800
-40% ↓
1990年 28,000
20.69% ↑
1989年 23,200
-10.22% ↓
1988年 25,840
0.62% ↑
1987年 25,680
3.55% ↑
1986年 24,800
1.64% ↑
1985年 24,400
-9.6% ↓
1984年 26,992
-8.07% ↓
1983年 29,360
-5.9% ↓
1982年 31,200
-4.88% ↓
1981年 32,800
3.54% ↑
1980年 31,680
8.79% ↑
1979年 29,120
1.11% ↑
1978年 28,800
5.88% ↑
1977年 27,200
13.33% ↑
1976年 24,000
-1.64% ↓
1975年 24,400
-1.61% ↓
1974年 24,800
-13.41% ↓
1973年 28,640
-10.72% ↓
1972年 32,080
-9.68% ↓
1971年 35,520
-7.88% ↓
1970年 38,560
3.52% ↑
1969年 37,248
-3.68% ↓
1968年 38,672
2.98% ↑
1967年 37,552
1.16% ↑
1966年 37,120
0.87% ↑
1965年 36,800
2.22% ↑
1964年 36,000
0.45% ↑
1963年 35,840
0.45% ↑
1962年 35,680
1.36% ↑
1961年 35,200 -

イラクの羊肉生産量の推移は、その国の農業政策、社会状況、そして地政学的リスクの影響を象徴的に示しています。このデータは、家畜生産を中心とした農業セクターにおける柔軟性と脆弱性を同時に描き出しています。1960年代には、羊肉生産量は35,000トン台で安定していましたが、70年代には急激な減少を経験しました。この変化は、石油産業の急成長に伴う農村住民の都市移住や農業への投資不足、さらにはサイクル的な干ばつといった自然環境の要因と密接に関連しています。

1980年代から1990年代にかけては、特にイラン・イラク戦争や湾岸戦争の影響が生産量に深刻な影響を与えました。1991年には16,800トンまで減少しており、これは紛争による国内の混乱や家畜飼育基盤の崩壊が主な原因と考えられます。その後も、国際経済制裁の影響や治安の不安定性が回復を阻む要因となりました。一方で、2000年代以降は、戦争後の再建期を経て徐々に生産体制が整い、技術改善や農業支援政策の強化に伴い生産量は増加を続けています。

2007年には37,170トンまで増加し、2008年には44,000トンを記録しました。この増加の背景には、農業分野への国際支援プログラムや地域では珍しい降雨量の増加が関与しているとされます。その後も安定成長が続き、2023年には47,316トンと過去最高を更新しました。この安定的な成長において、イラクが昨今の紛争の影響から離脱しつつ、農業分野におけるインフラや教育、技術の導入を進めてきたことが重要な役割を果たしています。

しかし、課題も残されています。まず、地政学的リスクは依然として高く、特に気候変動がもたらす影響は今後の羊肉生産に大きく作用する可能性があります。一方で、産業インフラの脆弱性や、中小規模農家の低収益性も無視できない問題です。これらの要素は、自然災害や新たな紛争発生時に再度の減少を引き起こす潜在的なリスクとなり得ます。

次世代の持続可能な成長を目指すためには、具体的な施策が求められます。まず、気候適応型農業技術や耐干ばつ性飼料の導入が鍵となります。また、農業従事者の支援プログラムを通じたノウハウの共有や、農村地域の農業基盤を強化するインフラ整備が重要です。さらに、国際的な支援を活用し、羊肉の国内需要と輸出先の拡大を両立させるための戦略的な投資が期待されます。

まとめると、羊肉生産量の増加はイラク農業セクターのポテンシャルを示しており、これは国全体の経済や食糧安全保障にも寄与しています。しかし、持続可能性を重視した政策実行と、国内外における協調的な取り組みがなければ、成長の勢いは一時的なものに止まる可能性があります。イラク政府と国際機関が協力しながら、農業生産性の向上と地域全体での安定的な発展を目指していくことが重要です。