Skip to main content

イラクの大豆生産量推移(1961-2022)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによれば、イラクの大豆生産量の推移は1970年代から安定的な増加を見せる時期があったものの、1999年以降急激に減少し、その後は低水準に停滞しています。特に2000年代半ば以降、年間生産量はほぼ30トン前後で推移しており、大豆の生産が国全体で深刻な停滞状態にあることが窺えます。このデータは、地政学的なリスクや農業政策の変化、および外的要因がイラクの農業分野に大きな影響を与えてきたことを示しています。

年度 生産量(トン)
2022年 33
2021年 34
2020年 33
2019年 33
2018年 35
2017年 33
2016年 31
2015年 41
2014年 25
2013年 26
2012年 26
2011年 26
2010年 26
2009年 26
2008年 26
2007年 26
2006年 26
2005年 39
2004年 50
2003年 50
2002年 50
2001年 60
2000年 100
1999年 550
1998年 1,780
1997年 1,750
1996年 1,650
1995年 1,750
1994年 1,800
1993年 2,000
1992年 1,850
1991年 1,500
1990年 1,900
1989年 1,800
1988年 1,750
1987年 1,700
1986年 1,700
1985年 1,600
1984年 1,500
1983年 1,600
1982年 1,600
1981年 1,600
1980年 1,600
1979年 1,500
1978年 1,300
1977年 1,000
1976年 500
1975年 200

イラクは1970年代から1980年代にかけて、安定的に大豆の生産量を拡大していました。1975年に200トンだった生産量は、1990年には1,900トンと大幅に増加し、力強い成長が見られました。この時期の背景には、政府による農業振興政策や安定した国内環境がありました。しかしながら、1990年代に入り湾岸戦争が発生すると、農業生産を含む経済活動全般に深刻な打撃が及び、1991年には生産量が1,500トンに減少しました。同じく戦争によるインフラの破壊、農業に必要な灌漑システムや種子・肥料供給の制限が主な原因と考えられます。

特に1999年以降、大豆生産量は激減し、2000年代に入ると年間生産量が50トン以下という厳しい状況にまで落ち込みました。この急激な減少には、内戦や過度な旱魃(かんばつ)、地政学的な不安定さ、国際社会からの経済制裁など、複数の要因があります。また、2003年のイラク戦争や、その後の国内混乱が農業全体に悪影響を与えたことも要因の一つです。農業における機械化や効率的な灌漑技術の導入が進まず、さらにはクルド地域や南部における水資源の管理問題も生産低迷の大きな理由として挙げられます。

近年の年間生産量は30トン前後で推移しており、イラクの大豆生産は事実上衰退の一途をたどっています。これは、近隣諸国と比較しても非常に低い水準です。例えば、同じ中東地域のイランでは数十万トン規模の大豆生産が行われており、トルコもまた農業技術と政策支援により高い生産量を維持しています。これに対してイラクは、農業分野への投資や現代的農業技術の導入が遅れているため、競争力を持つ経済的基盤を欠いている現状があります。

将来的には、長期的な視点での農業復興が必要不可欠です。まず第一に、灌漑施設や農業インフラの再整備を進めることが挙げられます。これに加えて、近代的な農機具や技術指導に焦点を当てた国際協力プログラムを受け入れることも重要です。また、旱魃への対応として水資源管理システムを強化することや、耐久性のある種子の研究・普及を進めるべきです。さらには、地政学的リスクを軽減するために、国内の安定化を図り、安全な農業環境を整えるとともに、国際貿易政策や地域の協力体制を再構築する必要があります。

このような政策を実行するためには、国内の政治的安定と国際社会からの支援が欠かせません。国連や地域間協力の枠組みを活用し、財政支援や技術提供を求めることがポイントとなります。最終的に、イラクが持つ豊かな耕地と気候条件を活かし、大豆などの農業生産を復興させることで、国内経済や食料安全保障の安定につなげることが期待されます。この課題を乗り越えるには、多角的なアプローチと長期的視点が求められます。