国際連合食糧農業機関(FAO)が提供した最新データによれば、イラクの馬の飼養数は1961年の192,000頭をピークに減少し、その後は変動を繰り返しながら現在まで推移しています。2022年には50,666頭となり、近年は安定的な水準で推移しています。減少の背景には、経済的要因、地域紛争、社会インフラの変化などが影響していると考えられます。
イラクの馬飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 50,666 |
2021年 | 50,530 |
2020年 | 50,411 |
2019年 | 50,084 |
2018年 | 49,629 |
2017年 | 49,716 |
2016年 | 50,192 |
2015年 | 51,072 |
2014年 | 53,000 |
2013年 | 52,000 |
2012年 | 50,000 |
2011年 | 48,500 |
2010年 | 48,000 |
2009年 | 48,000 |
2008年 | 47,000 |
2007年 | 47,000 |
2006年 | 47,000 |
2005年 | 47,000 |
2004年 | 47,000 |
2003年 | 47,000 |
2002年 | 48,000 |
2001年 | 48,000 |
2000年 | 48,000 |
1999年 | 46,000 |
1998年 | 48,000 |
1997年 | 47,000 |
1996年 | 45,780 |
1995年 | 46,650 |
1994年 | 50,630 |
1993年 | 51,000 |
1992年 | 52,000 |
1991年 | 50,000 |
1990年 | 60,000 |
1989年 | 58,000 |
1988年 | 55,000 |
1987年 | 55,000 |
1986年 | 53,000 |
1985年 | 50,000 |
1984年 | 53,000 |
1983年 | 55,000 |
1982年 | 55,000 |
1981年 | 55,000 |
1980年 | 53,000 |
1979年 | 52,925 |
1978年 | 60,000 |
1977年 | 65,000 |
1976年 | 69,140 |
1975年 | 75,000 |
1974年 | 86,443 |
1973年 | 90,000 |
1972年 | 93,000 |
1971年 | 95,000 |
1970年 | 98,000 |
1969年 | 102,000 |
1968年 | 105,000 |
1967年 | 110,000 |
1966年 | 115,000 |
1965年 | 122,000 |
1964年 | 140,000 |
1963年 | 160,000 |
1962年 | 180,000 |
1961年 | 192,000 |
イラクにおける馬飼養数のデータは、歴史的・社会的背景を反映した重要な統計です。このデータに注目すると、1961年の192,000頭を起点に急速な減少が見られ、1970年代には10万頭以下となっています。これは、当時進行していた都市化や産業化、さらに農業の機械化といった社会経済の変化が主要因であると推察されます。また、石油資源の発展と農業の相対的地位低下も畜産産業への影響を及ぼしました。
1970年代半ば以降のデータに見る急激な減少は、地域的な不安定さや政府による政策変更が寄与している可能性があります。この時期にイラクは政情不安が続き、特に1980年のイラン・イラク戦争(1980-1988年)は農業・畜産業全般に深刻なダメージを与えました。しかし1980年代中頃には一部復調し、55,000頭前後での横ばいが見られます。
1990年代に入ると湾岸戦争や国際制裁の継続が農業・家畜分野への圧力を強め、馬の飼養数は再度減少傾向を示しました。この時期に記録されているおよそ45,000~50,000頭の水準は、経済的制約および家畜飼料不足による影響と結びついています。
2000年代以降は、馬飼養数は概ね47,000~50,000頭の範囲で推移しています。この安定は、イラク国内の地方農業と牧畜文化が一定程度持続可能な方法で維持されていることを示しています。ただし、この統計は紛争やインフラ破壊の影響、さらに馬の果たす役割が経済的・文化的にどのように変遷したかを十分に考慮して解釈する必要があります。
2022年のデータでは50,666頭とわずかに増加傾向にあるものの、今後この安定が続くかどうかについては地政学的情勢も含めた総合的な判断が求められます。気候変動や干ばつによる水不足、さらに都市部への人口集中化も畜産業全般へのリスクを高める要因として挙げられます。一方で、伝統的な牧畜や馬文化が根付いた地域では、小規模ながらも飼養数が守られていることが現行の安定に寄与しているとみられます。
課題として、紛争地帯での家畜や畜産業の保護が未だに不十分であることが挙げられます。イラクは地域衝突やインフラ整備の遅れなど、多くの開発上の困難に直面しています。また、馬は観光資源や農業補佐としても活用され得るため、これらの活用促進には国際的な協力や支援が不可欠です。
将来的には、イラクが馬飼養環境を向上するためには、牧草供給の拡大や感染症対策の強化に取り組むべきです。さらに、地球規模の気候変動に対応した持続可能な牧畜政策を立案することが重要です。これには国際機関や近隣諸国との連携が必要不可欠であり、イラク国内の馬文化や畜産分野の振興を目的とした政策支援が期待されます。国際市場へ向けた畜産製品の輸出拡大もまた、農村経済の活性化に役立つでしょう。
結論として、現在のデータが示すようにイラクの馬飼養数は安定傾向にあるものの、依然として経済や気候、地政学的影響に脆弱であることを忘れてはなりません。未来に向けては、持続可能な畜産戦略と地域開発の強化に注力することが、イラクの馬飼養環境の改善につながると考えられます。