Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が2024年7月に更新した最新データによると、イラクのヤギ肉生産量は、1961年以降、増減を繰り返してきました。生産量は1960年代の初期にピークを迎えた後、徐々に減少し、1990年代以降は政治的、地政学的な要因が影響し大幅に落ち込みました。その後、2000年代半ばに一部回復が見られましたが、近年は停滞気味となっています。2023年における生産量は8,428トンで、2013年のピーク時(11,648トン)よりも約28%減少しています。
イラクのヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 8,428 |
-8.03% ↓
|
2022年 | 9,164 |
0.7% ↑
|
2021年 | 9,100 |
0.71% ↑
|
2020年 | 9,036 |
-0.58% ↓
|
2019年 | 9,089 |
14.14% ↑
|
2018年 | 7,963 |
-4.9% ↓
|
2017年 | 8,373 |
-18.7% ↓
|
2016年 | 10,299 |
2.48% ↑
|
2015年 | 10,050 |
-7.81% ↓
|
2014年 | 10,901 |
-6.41% ↓
|
2013年 | 11,648 |
1.29% ↑
|
2012年 | 11,500 |
0.88% ↑
|
2011年 | 11,400 |
-1.72% ↓
|
2010年 | 11,600 |
3.57% ↑
|
2009年 | 11,200 |
6.06% ↑
|
2008年 | 10,560 |
11.75% ↑
|
2007年 | 9,450 |
50% ↑
|
2006年 | 6,300 |
31.36% ↑
|
2005年 | 4,796 |
24.9% ↑
|
2004年 | 3,840 |
6.67% ↑
|
2003年 | 3,600 |
-6.25% ↓
|
2002年 | 3,840 |
-3.03% ↓
|
2001年 | 3,960 |
-44.07% ↓
|
2000年 | 7,080 |
-7.09% ↓
|
1999年 | 7,620 |
-3.79% ↓
|
1998年 | 7,920 |
-2.22% ↓
|
1997年 | 8,100 |
32.7% ↑
|
1996年 | 6,104 |
-24.53% ↓
|
1995年 | 8,088 |
2.84% ↑
|
1994年 | 7,865 |
-6.37% ↓
|
1993年 | 8,400 |
28.44% ↑
|
1992年 | 6,540 |
32.66% ↑
|
1991年 | 4,930 |
-37.01% ↓
|
1990年 | 7,827 |
5.2% ↑
|
1989年 | 7,440 |
-4.62% ↓
|
1988年 | 7,800 |
3.17% ↑
|
1987年 | 7,560 |
1.27% ↑
|
1986年 | 7,465 |
0.5% ↑
|
1985年 | 7,428 |
-8.43% ↓
|
1984年 | 8,112 |
-3.84% ↓
|
1983年 | 8,436 |
7.16% ↑
|
1982年 | 7,872 |
-14.9% ↓
|
1981年 | 9,250 |
1.43% ↑
|
1980年 | 9,120 |
0.66% ↑
|
1979年 | 9,060 |
0.67% ↑
|
1978年 | 9,000 |
-12.79% ↓
|
1977年 | 10,320 |
-23.11% ↓
|
1976年 | 13,421 |
34.53% ↑
|
1975年 | 9,976 |
0.77% ↑
|
1974年 | 9,900 |
3.13% ↑
|
1973年 | 9,600 |
2.56% ↑
|
1972年 | 9,360 |
1.3% ↑
|
1971年 | 9,240 |
1.32% ↑
|
1970年 | 9,120 |
1.33% ↑
|
1969年 | 9,000 |
2.74% ↑
|
1968年 | 8,760 |
1.39% ↑
|
1967年 | 8,640 |
1.41% ↑
|
1966年 | 8,520 |
1.43% ↑
|
1965年 | 8,400 |
-6.67% ↓
|
1964年 | 9,000 |
-6.25% ↓
|
1963年 | 9,600 |
-11.11% ↓
|
1962年 | 10,800 |
-8.16% ↓
|
1961年 | 11,760 | - |
イラクのヤギ肉生産量推移のデータは、同国における農業生産の現状や、それを取り巻く影響要因を見極めるための重要な指標です。ここでは、歴史的な変動要因や、地域的背景、さらには今後の課題と対策について詳しく解説します。
1961年の11,760トンという記録はこの時期の生産量の高さを示しています。しかしこの後、1970年代中盤まで一時的な増加を挟みつつも、生産量は全体的には下降傾向にありました。特に1980年代からイラン・イラク戦争が始まり、農畜産業全般が打撃を受けたことが明確に反映されています。1991年の湾岸戦争やその後の国際的な制裁も生産能力に深刻な影響を与え、この時期の数値は4,930トンと、それまでの水準を大幅に下回りました。
2000年代以降、イラク戦争とその余波が農業全般に長期的な影響を与えました。2003年から2004年には最低水準の3,600トンまで落ちましたが、安定化に向けた努力や技術の再導入を受けて、一部の年では生産量が増加しました。2009年から2013年にかけては比較的好調で、11,000トンを超える水準が続きましたが、これは農業政策の再編や地域経済の回復などの影響と考えられます。
しかし近年、特に2017年以降は不安定な状況が再び生じています。これは紛争の再発や気候変動の影響、さらには水不足問題が絡み合っている可能性が高いです。ヤギは乾燥地帯で耐久性がある家畜とされていますが、重要な水資源の不足や牧草の減少は、飼育環境に直接的な悪影響を及ぼします。
イラクのヤギ肉生産量の不安定さは、地政学的なリスクとも密接に関連しています。特にイラク国内の紛争や政治的不安定性は、農業に従事する人口の減少や、生産活動そのものの停滞を引き起こしています。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響も経済の縮小と物流の停滞を招き、ヤギ肉の生産と流通量に影響を与えた可能性が指摘されています。
今後の課題としては、気候変動への対策や地政学的リスクへの対応が挙げられます。具体的な対策としては、耐乾旱性の高い牧草の導入や、農業技術の革新を図ることが求められます。また、政府が中心となり、ヤギの飼育を支える流通インフラを整備し、農家に対する金融支援を推進することも必要です。さらに、地域間協力を基礎とした農業支援プログラムの創設が考えられます。
国際的な観点からは、FAOや他の国際機関との連携を通じて特別な技術支援や資源の分配を行う枠組みを設けることが重要です。たとえば、水資源管理に関する技術支援や、農業従事者を対象とした教育プログラムが有益でしょう。生産性を向上させるだけでなく、農民の生活基盤の安定化を図ることで、持続的な成長が期待されます。
イラクのヤギ肉生産は、国家の食料安全保障や経済の持続可能性にとって非常に重要な役割を果たしています。過去の傾向を踏まえると、生産量の安定化と持続的な増加を実現するために必要なのは、柔軟かつ効果的な政策決定と国際協力です。それを通じて、ヤギ肉の生産だけでなく、イラクの農業全体や地域経済もより明るい未来へと向かうことができるでしょう。