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イラクのオレンジ生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が2024年7月に発表した最新データによると、イラクのオレンジ生産量は、1961年の14,000トンを皮切りに、1990年代にはピークの318,000トンを記録しました。しかし、2000年代以降、生産量は急激に減少し、一時は78,000トンに落ち込むほど深刻な状況となりました。その後、2020年以降は回復の兆しを見せ、2022年には175,058トンに達しています。この推移は、地政学的要因や気候変動、農業インフラの整備状況が大きく影響を及ぼしていると見られます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 158,000
-9.74% ↓
2022年 175,058
11.01% ↑
2021年 157,690
10.49% ↑
2020年 142,717
6.9% ↑
2019年 133,500
83.34% ↑
2018年 72,816
-2.62% ↓
2017年 74,774
1.79% ↑
2016年 73,460
8.94% ↑
2015年 67,430
-41.65% ↓
2014年 115,562
2.72% ↑
2013年 112,501
21.65% ↑
2012年 92,481
1.71% ↑
2011年 90,923
-7.13% ↓
2010年 97,907
-3.58% ↓
2009年 101,543
9.72% ↑
2008年 92,551
26.01% ↑
2007年 73,447
-5.84% ↓
2006年 78,000
-1.27% ↓
2005年 79,000
-13.19% ↓
2004年 91,000
-54.5% ↓
2003年 200,000
-39.06% ↓
2002年 328,200
-0.55% ↓
2001年 330,000
22.22% ↑
2000年 270,000
-10% ↓
1999年 300,000
-5.06% ↓
1998年 316,000
1.94% ↑
1997年 310,000
-1.59% ↓
1996年 315,000
-0.94% ↓
1995年 318,000
0.82% ↑
1994年 315,400
0.38% ↑
1993年 314,200
4.73% ↑
1992年 300,000
21.78% ↑
1991年 246,345
36.86% ↑
1990年 180,000
2.86% ↑
1989年 175,000 -
1988年 175,000
-2.78% ↓
1987年 180,000
10.43% ↑
1986年 163,000
3.82% ↑
1985年 157,000
2.61% ↑
1984年 153,000
-1.29% ↓
1983年 155,000
8.92% ↑
1982年 142,300
9.46% ↑
1981年 130,000
23.81% ↑
1980年 105,000
-23.91% ↓
1979年 138,000
0.97% ↑
1978年 136,670
24.25% ↑
1977年 110,000
22.22% ↑
1976年 90,000
50% ↑
1975年 60,000
50% ↑
1974年 40,000
14.29% ↑
1973年 35,000
16.67% ↑
1972年 30,000 -
1971年 30,000 -
1970年 30,000
20% ↑
1969年 25,000 -
1968年 25,000
13.64% ↑
1967年 22,000 -
1966年 22,000
-12% ↓
1965年 25,000 -
1964年 25,000
25% ↑
1963年 20,000 -
1962年 20,000
42.86% ↑
1961年 14,000 -

イラクのオレンジ生産量の推移を見ると、過去数十年にわたり農業事情が大きく変化してきたことがうかがえます。1960年代から1970年代にかけて生産量が増加した背景には、農業技術の向上や農地の拡大が挙げられます。この時期、イラクは農業政策を積極的に推進し、特にオレンジのような果実栽培が重要な産業として注目されました。1978年には136,670トンの収穫があり、その後1980年まで安定して10万トンを超える生産量を維持しました。

1990年代は、イラクがオレンジ栽培で最も成功した期間と言えます。この時期には、1991年の246,345トンを皮切りに、1995年まで生産量は30万トンを上回り続けました。しかし、2000年代初頭に入り、地政学的リスクが増大したことが農業に深刻な影響を及ぼす結果となりました。2003年以降の生産量の急激な減少は、イラク戦争とその後の混乱に関連しており、農地の荒廃や農業インフラの喪失が主要な要因と考えられます。当時のデータでは、2004年には91,000トンまで減少し、以降2010年代には8万トン前後の低い水準で推移しました。

この減少には、気候変動の影響も無視できません。イラクはもともと乾燥地帯であるため、水資源が農業生産の成否に直結します。近年の降水量の減少やダム建設による河川の水量制限は、特に灌漑を必要とするオレンジの生産に大きな制約をもたらしました。また、植生や土壌状況の劣化も一因となり、生産コストの上昇を招きました。

一方、2020年以降には回復の兆しも見られます。2020年には142,717トン、2022年には175,058トンの生産量となり、顕著に増加しています。この回復には、農業インフラの再構築や地方政府による農家支援の強化が影響していると考えられます。具体的には、灌漑設備の改善や農業技術の導入、さらには農業資金の助成が進められたことが寄与しています。

イラクが今後も持続可能なオレンジの生産を目指すためには、いくつかの課題に取り組む必要があります。第一に、水資源管理の強化が求められます。隣国との交渉を通じて河川の水利用を調整し、農産物に必要な灌漑水を確保することが重要です。また、異常気象に耐える品種の開発や導入も必要です。このほか、農家への技術支援や教育プログラムを拡充し、生産効率を高める取り組みが考えられます。さらに、地域紛争の影響を最小限にするため、安全性の向上や政策の安定化が鍵となります。

結論として、イラクのオレンジ生産量のデータは、社会的および環境的要因が農業に与える影響の顕著な例を示しています。国際機関や政府が協力し、持続可能な農業を推進していくことで、イラクのオレンジ産業が再びかつての水準を上回る繁栄を迎える可能性があります。特に気候変動への対策や、テクノロジーを活用した農業モデルの確立が、今後の大きな鍵を握るでしょう。