Skip to main content

イラクのキャベツ生産量推移(1961年~2023年)

イラクにおけるキャベツの生産量は、1961年の5,387トンから2022年の10,664トンまで、約60年にわたり大きな変動を繰り返しています。特に1990年代以降には最大で23,000トンを記録した年もある一方で、2000年代前半や2018年頃には大幅な減少が観察されます。この変動の背景には、地政学的なリスクや水資源の問題、気候変動の影響が指摘されています。近年、再び生産量が持ち直している兆しが見られますが、安定性に欠けており、持続可能な農業政策の確立が重要な課題となっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 7,266
-31.86% ↓
2022年 10,664
-8.75% ↓
2021年 11,687
32.97% ↑
2020年 8,789
52.35% ↑
2019年 5,769
-5.89% ↓
2018年 6,130
-14.81% ↓
2017年 7,196
-55.48% ↓
2016年 16,164
37.5% ↑
2015年 11,756
-38.66% ↓
2014年 19,165
-5.78% ↓
2013年 20,340
34.61% ↑
2012年 15,110
-17.58% ↓
2011年 18,334
-38.68% ↓
2010年 29,898
19.69% ↑
2009年 24,979
18.12% ↑
2008年 21,147
-12.62% ↓
2007年 24,202
15.25% ↑
2006年 21,000
23.53% ↑
2005年 17,000
41.67% ↑
2004年 12,000
-25% ↓
2003年 16,000
220% ↑
2002年 5,000
-50% ↓
2001年 10,000
-41.18% ↓
2000年 17,000
6.25% ↑
1999年 16,000
-23.81% ↓
1998年 21,000
2.44% ↑
1997年 20,500
-2.38% ↓
1996年 21,000
-8.7% ↓
1995年 23,000
4.55% ↑
1994年 22,000
-4.35% ↓
1993年 23,000
9.52% ↑
1992年 21,000
176.32% ↑
1991年 7,600
-58.92% ↓
1990年 18,500
112.64% ↑
1989年 8,700
-36.96% ↓
1988年 13,800
105.97% ↑
1987年 6,700
-36.79% ↓
1986年 10,600
0.95% ↑
1985年 10,500
-28.57% ↓
1984年 14,700
126.15% ↑
1983年 6,500
30% ↑
1982年 5,000
6.38% ↑
1981年 4,700
-25.4% ↓
1980年 6,300
6.78% ↑
1979年 5,900
18.62% ↑
1978年 4,974
-0.14% ↓
1977年 4,981
-24.24% ↓
1976年 6,575
-24.93% ↓
1975年 8,758
26.76% ↑
1974年 6,909
-41.22% ↓
1973年 11,753
-27.16% ↓
1972年 16,136
3.97% ↑
1971年 15,520
6.71% ↑
1970年 14,544
-0.55% ↓
1969年 14,625
-0.08% ↓
1968年 14,636
-0.94% ↓
1967年 14,775
8.08% ↑
1966年 13,670 -
1965年 13,670
95.29% ↑
1964年 7,000
-0.28% ↓
1963年 7,020
-14% ↓
1962年 8,163
51.53% ↑
1961年 5,387 -

国連の食糧農業機関(FAO)が提供するデータに基づくと、イラクのキャベツ生産量は1960年代から現在に至るまで顕著な変動を示しています。1960年代初期の5,000~8,000トンという生産量は、1965年に一気に13,670トンへ増加し、その後1970年代前半には15,000トン以上を安定的に維持しました。しかしながら、1973年以降から1970年代後半にかけて、生産量は6,000トン以下に落ち込むなど停滞傾向を見せます。この原因として考えられるのは、中東全域の政治的緊張や農業の技術的限界です。

1980年代には再び上昇し、1984年には14,700トンを記録しましたが、それ以降再び大きな波が見られます。注目すべきは1990年代の増加で、特に1993年から1995年は23,000トンに達する安定した高水準を示しました。この背景には、当時の国内政策の影響や地域間協力による農業支援の成功が影響している可能性があります。しかし2000年以降、気候変動や国際制裁による経済停滞の影響を受け、5,000~17,000トン程度のゆらぎが続きます。とりわけ2002年には5,000トンの大幅減少が記録されました。これには農地の荒廃や灌漑インフラの老朽化が影響していると考えられます。

さらに近年、2017年以降では再度生産量の減少傾向が見られます。2018年の生産量は6,130トンと低迷しましたが、2020年以降には徐々に回復しており、2022年には10,664トンを記録しました。この回復は、紛争地域の安定化や農業技術の改善、地域間の協力体制の進展が一因といえます。一方で、キャベツは水資源を大量に消費する作物であり、イラクの厳しい気候や水不足問題が引き続き課題となっています。

地政学的背景もこのデータには影響を及ぼしています。中東特有の紛争や不安定な政情、また国際社会との関係性が農業面でも重大な課題を引き起こしてきました。例えば、農地の荒廃や疎水施設の破損、さらに都市部への過度な集中が農村部の労働力不足を招いています。また、気候変動の影響も無視できません。近年、平均気温の上昇と降水量の減少が進んでおり、これにより灌漑需要が増加し、さらなる水資源の管理の難しさを悪化させています。

今後、イラクがキャベツを含む農業生産を安定させるためには、いくつかの具体的な対策が求められます。まず第一に、効率的な水資源管理が急務です。これには、用水路や灌漑技術の改善を含む新しいインフラ整備が含まれます。次に、気候変動への対応を目的とした気候適応型農業の導入が必要です。これにより、例えば耐乾性の作物の研究開発や、農作業における持続可能な技術の普及が挙げられます。さらに、地域紛争の緩和や復興支援を進めることで農村部の安定性を高め、農家が安心して耕作を行える環境作りが求められます。

結論として、イラクのキャベツ生産量は過去60年間で大きな変化を経験してきましたが、そこには時代的背景や地政学的要素が深く影響しています。持続可能な生産体制の確立とそれを支える緊急的な政策対応が必要不可欠です。この取り組みは単に国内の農業の安定だけでなく、国全体の食料安全保障や地域間の平和構築にも寄与するでしょう。