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イラクのトマト生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、イラクのトマト生産量は1961年から2022年にかけて長期的な変動と波を伴いながら推移しています。1961年には約14万トンであった生産量は、1997年に初めて100万トンを超え、2002年には最大で約132万トンに到達しました。その後、地域情勢や天候の変動によって生産量は減少と増加を繰り返し、2022年の記録では約63万トンとなっています。このデータは、農業基盤の拡充や環境条件の影響、また地政学的リスクの影響の大きさをうかがわせます。

年度 生産量(トン)
2022年 630,160
2021年 744,166
2020年 754,759
2019年 619,543
2018年 467,579
2017年 123,611
2016年 286,596
2015年 388,674
2014年 770,564
2013年 903,809
2012年 768,375
2011年 1,059,537
2010年 1,013,177
2009年 913,493
2008年 802,386
2007年 955,000
2006年 1,042,000
2005年 939,000
2004年 988,000
2003年 234,000
2002年 1,309,000
2001年 1,321,000
2000年 989,000
1999年 1,113,000
1998年 1,000,000
1997年 1,021,515
1996年 900,000
1995年 870,000
1994年 863,489
1993年 794,269
1992年 410,000
1991年 437,900
1990年 721,500
1989年 709,800
1988年 558,400
1987年 594,700
1986年 523,100
1985年 611,800
1984年 531,100
1983年 439,200
1982年 467,900
1981年 425,200
1980年 347,800
1979年 266,600
1978年 432,272
1977年 401,800
1976年 491,842
1975年 389,018
1974年 349,557
1973年 355,205
1972年 368,000
1971年 383,000
1970年 310,680
1969年 220,163
1968年 232,157
1967年 241,371
1966年 216,405
1965年 195,817
1964年 189,147
1963年 143,163
1962年 140,341
1961年 138,695

イラクのトマト生産量は、約60年の期間にわたり、顕著な増加と減少の波をたどってきました。この長期データを分析すると、いくつかの重要な要因が生産量に影響を与えていることが浮き彫りとなります。

1961年から1980年代までの初期段階では、緩やかな増加傾向が見られました。特に1970年代には灌漑技術の進歩や農業政策の支援により、生産の安定が図られました。一方で、1980年代後半にはイラン・イラク戦争やその後の経済悪化が生産に影響を与え、一部の年では大幅な減少を記録しました。

その後、1990年代にかけてトマト生産量は再び上昇傾向を示し、1997年以降から1,000,000トンを超える水準が安定して維持されていました。当時の政策的な背景として、国内農業への投資拡大や干ばつに対する対策などが一定の効果をもたらしていたと考えられます。

しかし、2003年のイラク戦争時期には生産量急減が見られ、234,000トンという大きな減少を記録しました。この減少は、紛争によるインフラ破壊や物流の停滞、農地荒廃によるものと関連していると考えられます。その後も天候不順や水不足、さらには2014年以降のイスラム国(IS)の活動による不安定な情勢の影響を受け、生産量の回復は不安定な形となりました。

特に2015年以降、トマト生産は混迷を深め、2017年には123,611トンと記録的な減少に至っています。これには、紛争による農地喪失や、国全体の気候変動リスク、さらには水資源管理の不十分さが絡んでいます。2020年から2021年にかけて一時的な回復が見られるものの、再生可能な農業基盤整備が遅れているため、2022年時点でも63万トンにとどまっています。

イラクのトマト産業の未来には、多くの課題が残されています。第一に農業インフラの再構築が不可欠です。特に、灌漑システムの近代化や効率的な水資源管理が、生産の持続的な発展に向けた核となるでしょう。また、紛争や地域衝突による農地荒廃に対し、土地回復プロジェクトを国際的な協力のもとで進めることも重要です。さらに、気候変動対策としての高耐性品種の導入や、農家への技術支援によって生産の安定化を図ることが求められます。

イラクのトマト生産が持つ潜在力は計り知れません。特に平和と安定が確保されれば、この作物は国内消費だけでなく、近隣諸国への輸出市場で重要な役割を果たす可能性を秘めています。したがって、政府に求められるのは、地域情勢の改善だけでなく、環境・経済・技術の全分野にわたる包括的な農業政策の策定です。国際社会もまた、技術協力や資金援助などの形で支援し続ける必要があります。このような取り組みが実現されれば、イラクのトマトは世界に向けてその品質と量の両面で注目される存在となるでしょう。