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イラクのトマト生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、イラクのトマト生産量は1961年から2022年にかけて長期的な変動と波を伴いながら推移しています。1961年には約14万トンであった生産量は、1997年に初めて100万トンを超え、2002年には最大で約132万トンに到達しました。その後、地域情勢や天候の変動によって生産量は減少と増加を繰り返し、2022年の記録では約63万トンとなっています。このデータは、農業基盤の拡充や環境条件の影響、また地政学的リスクの影響の大きさをうかがわせます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 534,821
-15.13% ↓
2022年 630,160
-15.32% ↓
2021年 744,166
-1.4% ↓
2020年 754,759
21.83% ↑
2019年 619,543
32.5% ↑
2018年 467,579
278.27% ↑
2017年 123,611
-56.87% ↓
2016年 286,596
-26.26% ↓
2015年 388,674
-49.56% ↓
2014年 770,564
-14.74% ↓
2013年 903,809
17.63% ↑
2012年 768,375
-27.48% ↓
2011年 1,059,537
4.58% ↑
2010年 1,013,177
10.91% ↑
2009年 913,493
13.85% ↑
2008年 802,386
-15.98% ↓
2007年 955,000
-8.35% ↓
2006年 1,042,000
10.97% ↑
2005年 939,000
-4.96% ↓
2004年 988,000
322.22% ↑
2003年 234,000
-82.12% ↓
2002年 1,309,000
-0.91% ↓
2001年 1,321,000
33.57% ↑
2000年 989,000
-11.14% ↓
1999年 1,113,000
11.3% ↑
1998年 1,000,000
-2.11% ↓
1997年 1,021,515
13.5% ↑
1996年 900,000
3.45% ↑
1995年 870,000
0.75% ↑
1994年 863,489
8.71% ↑
1993年 794,269
93.72% ↑
1992年 410,000
-6.37% ↓
1991年 437,900
-39.31% ↓
1990年 721,500
1.65% ↑
1989年 709,800
27.11% ↑
1988年 558,400
-6.1% ↓
1987年 594,700
13.69% ↑
1986年 523,100
-14.5% ↓
1985年 611,800
15.19% ↑
1984年 531,100
20.92% ↑
1983年 439,200
-6.13% ↓
1982年 467,900
10.04% ↑
1981年 425,200
22.25% ↑
1980年 347,800
30.46% ↑
1979年 266,600
-38.33% ↓
1978年 432,272
7.58% ↑
1977年 401,800
-18.31% ↓
1976年 491,842
26.43% ↑
1975年 389,018
11.29% ↑
1974年 349,557
-1.59% ↓
1973年 355,205
-3.48% ↓
1972年 368,000
-3.92% ↓
1971年 383,000
23.28% ↑
1970年 310,680
41.11% ↑
1969年 220,163
-5.17% ↓
1968年 232,157
-3.82% ↓
1967年 241,371
11.54% ↑
1966年 216,405
10.51% ↑
1965年 195,817
3.53% ↑
1964年 189,147
32.12% ↑
1963年 143,163
2.01% ↑
1962年 140,341
1.19% ↑
1961年 138,695 -

イラクのトマト生産量は、約60年の期間にわたり、顕著な増加と減少の波をたどってきました。この長期データを分析すると、いくつかの重要な要因が生産量に影響を与えていることが浮き彫りとなります。

1961年から1980年代までの初期段階では、緩やかな増加傾向が見られました。特に1970年代には灌漑技術の進歩や農業政策の支援により、生産の安定が図られました。一方で、1980年代後半にはイラン・イラク戦争やその後の経済悪化が生産に影響を与え、一部の年では大幅な減少を記録しました。

その後、1990年代にかけてトマト生産量は再び上昇傾向を示し、1997年以降から1,000,000トンを超える水準が安定して維持されていました。当時の政策的な背景として、国内農業への投資拡大や干ばつに対する対策などが一定の効果をもたらしていたと考えられます。

しかし、2003年のイラク戦争時期には生産量急減が見られ、234,000トンという大きな減少を記録しました。この減少は、紛争によるインフラ破壊や物流の停滞、農地荒廃によるものと関連していると考えられます。その後も天候不順や水不足、さらには2014年以降のイスラム国(IS)の活動による不安定な情勢の影響を受け、生産量の回復は不安定な形となりました。

特に2015年以降、トマト生産は混迷を深め、2017年には123,611トンと記録的な減少に至っています。これには、紛争による農地喪失や、国全体の気候変動リスク、さらには水資源管理の不十分さが絡んでいます。2020年から2021年にかけて一時的な回復が見られるものの、再生可能な農業基盤整備が遅れているため、2022年時点でも63万トンにとどまっています。

イラクのトマト産業の未来には、多くの課題が残されています。第一に農業インフラの再構築が不可欠です。特に、灌漑システムの近代化や効率的な水資源管理が、生産の持続的な発展に向けた核となるでしょう。また、紛争や地域衝突による農地荒廃に対し、土地回復プロジェクトを国際的な協力のもとで進めることも重要です。さらに、気候変動対策としての高耐性品種の導入や、農家への技術支援によって生産の安定化を図ることが求められます。

イラクのトマト生産が持つ潜在力は計り知れません。特に平和と安定が確保されれば、この作物は国内消費だけでなく、近隣諸国への輸出市場で重要な役割を果たす可能性を秘めています。したがって、政府に求められるのは、地域情勢の改善だけでなく、環境・経済・技術の全分野にわたる包括的な農業政策の策定です。国際社会もまた、技術協力や資金援助などの形で支援し続ける必要があります。このような取り組みが実現されれば、イラクのトマトは世界に向けてその品質と量の両面で注目される存在となるでしょう。