世界の羊の毛生産量ランキング【1961〜2023】国別推移・年間比較データ

国際連合食糧農業機関（FAO）が提供した2022年のデータによれば、世界の羊の毛生産量ランキングでは、1位が中国（356,193トン）、2位がオーストラリア（328,000トン）、3位がニュージーランド（126,880トン）となっています。これら3カ国が特に高い生産量を誇っており、その他の国との差が顕著に見られます。また、上位10カ国にヨーロッパ、アジア、アフリカ、オセアニア、中東地域の国々が名を連ねており、非常に多様な地理的背景が特徴的です。

順位	国名	地域	生産量(トン)
1	中国	アジア	356,193
2	オーストラリア	オセアニア	328,000
3	ニュージーランド	オセアニア	126,880
4	トルコ	アジア	84,885
5	イギリス	ヨーロッパ	72,010
6	モロッコ	アフリカ	62,426
7	イラン（イスラム共和国）	アジア	54,357
8	トルクメニスタン	アジア	48,742
9	ロシア連邦	ヨーロッパ	46,037
10	南アフリカ	アフリカ	45,063
11	パキスタン	アジア	43,510
12	カザフスタン	アジア	41,582
13	アルゼンチン	南アメリカ	37,995
14	ウズベキスタン	アジア	37,307
15	インド	アジア	36,374
16	アルジェリア	アフリカ	33,950
17	ウルグアイ	南アメリカ	25,600
18	インドネシア	アジア	24,361
19	シリア・アラブ共和国	アジア	20,444
20	アゼルバイジャン	アジア	15,767
21	モンゴル	アジア	14,757
22	サウジアラビア	アジア	14,374
23	イラク	アジア	13,204
24	アフガニスタン	アジア	12,108
25	エジプト	アフリカ	11,733
26	キルギスタン	アジア	10,496
27	リビア	アフリカ	10,255
28	アメリカ合衆国	北アメリカ	10,081
29	チュニジア	アフリカ	9,333
30	イエメン	アジア	9,125
31	ブラジル	南アメリカ	8,884
32	ペルー	南アメリカ	7,984
33	タンザニア連合共和国	アフリカ	7,712
34	タジキスタン	アジア	7,654
35	エチオピア	アフリカ	7,307
36	チリ	南アメリカ	6,626
37	ヨルダン	アジア	4,623
38	コロンビア	南アメリカ	4,429
39	メキシコ	南アメリカ	3,786
40	レソト	アフリカ	3,622
41	ノルウェー	ヨーロッパ	3,443
42	ジンバブエ	アフリカ	3,069
43	セルビア	ヨーロッパ	2,890
44	レバノン	アジア	2,763
45	バングラデシュ	アジア	2,479
46	アルバニア	ヨーロッパ	2,341
47	ケニア	アフリカ	2,182
48	グルジア	アジア	2,100
49	ボリビア (多民族国家)	南アメリカ	2,058
50	ボスニア・ヘルツェゴビナ	ヨーロッパ	1,408
51	エリトリア	アフリカ	1,318
52	モルドバ共和国	ヨーロッパ	1,276
53	ウクライナ	ヨーロッパ	1,237
54	カナダ	北アメリカ	1,212
55	イスラエル	アジア	1,189
56	ナミビア	アフリカ	1,185
57	アルメニア	アジア	1,117
58	クウェート	アジア	1,003
59	エクアドル	南アメリカ	944
60	北マケドニア	ヨーロッパ	823
61	ミャンマー	アジア	776
62	アイスランド	ヨーロッパ	755
63	スイス	ヨーロッパ	667
64	パラグアイ	南アメリカ	603
65	ネパール	アジア	567
66	マリ	アフリカ	274
67	モンテネグロ	ヨーロッパ	240
68	マレーシア	アジア	169
69	ベラルーシ	ヨーロッパ	98
+ すべての国を見る

羊の毛生産は、衣料品、特にウール製品の原材料として重要な産業です。データによれば、中国、オーストラリア、ニュージーランドが世界の羊の毛生産量のトップ3を占めています。この3カ国の生産量を合計すると、世界全体の生産量の大部分を占めていることが理解できます。中国はその広大な面積と多様な気候条件を活かし、農業と畜産業を総合的に強化しており、羊毛の生産量においても圧倒的な存在感を示しています。一方、オーストラリアとニュージーランドは世界的に高品質のウールを輸出する主要国として知られており、特に衣料品業界ではこれらの国の羊毛が高い評価を受けています。

ランキングをさらに見ると、トルコ、イギリス、モロッコといった国々が上位にランクインしており、それぞれの地域的な特徴や文化的背景が羊毛生産の基盤となっています。また、中東や中央アジアの国々、例えばイランやトルクメニスタン、カザフスタンなども高順位に位置しており、これらの地域では伝統的に牧畜業が生活の基盤であることが影響していると考えられます。

一方、日本における羊毛生産はランキングに記載されていないほど少量で、国内における羊毛産業は非常に限られた規模で運営されています。日本での羊毛需要は主に輸入で賄われており、日本消費者の羊毛製品への依存度を考えると、輸入先国の生産状況や価格動向の影響を大きく受けると言えます。

羊毛生産にはいくつかの課題も指摘されています。気候変動による草原や放牧地の減少は、羊の飼育環境に影響を与え、高品質の羊毛を安定的に供給することが難しくなる可能性があります。特にオーストラリアやニュージーランドでは干ばつの問題が深刻化しており、これが将来的に生産量や品質に影を落とす懸念があります。また、中国や中央アジア地域では、紛争や地政学的リスクが生産チェーンや輸出に潜在的な脅威を及ぼすことも予測されます。

さらに、羊の毛生産が抱える社会的課題として労働条件の改善が挙げられます。特に発展途上国においては、牧畜業従事者の賃金や労働環境が厳しいものとなりがちです。このような背景から、国際的な協力の枠組みにおいて、牧畜業者を支援するための技術移転や資金援助が求められています。

これらの課題に対処するため、いくつかの具体的な政策や対策を提案します。第一に、持続可能な放牧技術の導入やエコシステムの保護を目的とした政策を地域ごとに強化することが重要です。例えば、草地の再生や灌漑技術の改良を支援するための国際的な基金の設立は一つの解決策となり得ます。第二に、輸出に依存する生産国では、輸出体制の透明性を確保し、紛争地域でのリスク回避につながる輸送ルートの多様化が必要です。第三に、地域経済を活性化させるために、地元自治体と連携して羊毛加工や製品化に至る産業チェーンの育成を進めることも重要です。

将来的には、新型コロナウイルス等の疫病の流行や自然災害がもたらした供給網の混乱を教訓に、より強固な供給体制と、地域間の協力を推進することが鍵となるでしょう。国際的なウール市場が安定することで、消費者も質の高い羊毛製品を手に入れやすくなり、生産国も経済的な恩恵を享受できます。このように、羊毛生産量データは、世界の産業や環境を深く理解するための重要な指標となるでしょう。