Skip to main content

サウジアラビアには1.5万人の王族がいる!? 王家だらけの国の秘密

サウジアラビアには1.5万人の王族がいる!? 王家だらけの国の秘密
サウジアラビアには1.5万人の王族がいる!? 王家だらけの国の秘密

中東の石油大国サウジアラビアには、なんと1万5,000人を超える王族が存在すると言われています。国家の名前に王家の姓を冠するこの国では、王族が政治・経済・宗教にまで深く関与し、その存在は国の中枢そのものです。本記事では、サウード家の起源から現代の統治体制、さらに直面する課題と未来への改革の道筋までを徹底解説します。

サウジアラビアとは?国名に隠された王家の影響力

世界で唯一、王家の名を冠する国家

「サウジアラビア(Kingdom of Saudi Arabia)」──この国名の“サウジ”は、支配王家である「サウード家」に由来します。国家に王家の名が冠される例は世界でも極めて珍しく、これはサウード家が国家形成に果たした役割の大きさと、現在に至るまでの影響力を端的に表しています。

宗教と地政の中枢を担う国家としての役割

サウジアラビアは、アラビア半島の大部分を占め、紅海とペルシャ湾という二つの重要な航路に面しており、中東の戦略的要衝に位置しています。加えて、イスラム教の最重要聖地であるメッカとメディナを擁することで、宗教的にもスンニ派世界の中心的地位を占めています。

このような地政学的・宗教的背景により、サウジアラビアは経済・外交・宗教のすべての側面で中東地域における主導的立場にあります。国王が「二聖モスクの守護者」の称号を持ち、サウード家の支配が宗教的権威とも深く結びついている点は、他国には見られない特異な統治構造と言えるでしょう。

サウード家の起源とサウジアラビア建国への道

ワッハーブ派との同盟による台頭

サウード家の歴史は18世紀半ば、ムハンマド・イブン=サウードによって始まりました。1744年、彼はイスラム改革派であるワッハーブ派の宗教指導者ムハンマド・イブン・アブドゥルワッハーブと手を結び、宗教と政治が融合した新たな支配体制を確立。アラビア半島中央部で勢力を伸ばし、初めての「サウジ国家」を築いたのです。

興亡を経て、現代国家へ

その後、最初のサウジ国家は1818年にオスマン帝国によって滅ぼされましたが、19世紀末から20世紀初頭にかけてサウード家は勢力を再興。1902年にリヤドを奪還したアブドゥルアズィーズ・イブン=サウードが半島の大半を統一し、1932年に「サウジアラビア王国」の建国を宣言しました。彼こそがサウジ初代国王であり、今日のサウジ体制の礎を築いた人物です。

人物名 活動時期 関係性 備考
ムハンマド・イブン=サウード 1744年頃 サウード家の創始者 第一サウジ国家の建設者
アブドゥルアズィーズ・イブン=サウード 1902年〜1953年 その直系子孫(玄孫) サウジアラビア王国の建国者・初代国王

1万5,000人の王族、驚くべき構成と影響力

王族はどれほど多いのか?

現在、サウジアラビアの王族(サウード家)に属する人々は、推定で1万2000人から1万5000人にのぼります。男性と女性を含めたこの数は、単なる名誉称号にとどまらず、政治・経済のあらゆる領域における実権と密接につながっています。

初代国王の子孫が築いた広大な王族ネットワーク

サウジの王族がこれほど多くなった背景には、初代国王アブドゥルアズィーズの存在があります。彼には少なくとも36人の息子と、多くの妃がいたとされ、子孫が何世代にもわたって急増しました。その後継者たちが国家の中核機関に配置され、王家は「血族政治」のモデルケースともなりました。

スデイリー・セブンの台頭

アブドゥルアズィーズの息子たちの中でも、特に「スデイリー・セブン(Sudairi Seven)」と呼ばれる7人兄弟は、サウジの政治体制において強い影響力を持ちました。彼らは国防大臣、内務大臣、国王などの要職を歴任し、現在の支配構造の基礎を作った一族とも言えます。

政治体制の特徴:絶対王政と憲法なき法治

「成文化された憲法」が存在しない国家

サウジアラビアには、西洋的な意味での「憲法」が存在しません。代わりに、イスラム法(シャリーア)、すなわちコーランとスンナが国家の最高法規として機能しています。国王は三権を掌握し、法律の制定、施行、裁定すべてに影響力を持ちます。

国会も選挙も存在しない政治構造

立法機関として「諮問評議会」が設けられていますが、その議員は国王が任命。大臣もまた国王、もしくは王族によって任命されるため、民主的プロセスは制度的に存在しません。この構造により、権力は一極集中型となり、サウード家による統治が盤石なものとなっています。

石油と富が支える王族国家の経済構造

アラムコと国家収益の源泉

サウジアラビアの国家収入の大半は石油から得られており、その中核を担うのが世界最大級の企業、サウジアラムコです。王族は同社の上層部や関連機関を通じて、資源管理・投資・財政政策に直接関与しています。

王族の莫大な資産と世界への影響

サウード家の資産は、推定で数百億〜数千億ドル規模に及びます。この莫大な富は、欧米の不動産・金融・航空・IT分野への投資にも活用されており、サウジ国内にとどまらず、世界経済への影響力も持ちます。

国民と福祉:豊かさの裏側にある課題

オイルマネーが支える社会保障

サウジの国民は、教育、医療、住宅支援といった分野で極めて手厚い福祉を享受しています。これらはすべて石油収入によって支えられており、王族が福祉国家としての顔を演出する基盤にもなっています。

レンティアメンタリティと労働意識の変化

ただし、このような恩恵に依存するあまり、国民の中には労働意欲が乏しくなりやすいという「レンティアメンタリティ」が蔓延しています。特に民間企業での就労率は低く、高給の公務員職への志向が強い傾向にあります。

Vision2030と王族主導の未来戦略

MBSが描く改革の青写真

現在の実質的な統治者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子(通称MBS)は、「Vision2030」と題する国家改革ビジョンを掲げ、サウジの脱石油依存と経済多角化を目指しています。観光、エンタメ、ハイテク産業などへの投資が進められています。

直面する具体的な課題

  • 石油依存からの脱却:財政は依然として石油に左右されやすく、経済構造の改革には時間を要します。
  • 若年層の高失業率:特に20代〜30代で30%を超える失業率が問題化しており、民間への就職支援が急務です。
  • 外国企業誘致と透明性:サウジ進出企業に対して拠点設置義務を課すなど、外資受け入れ政策にも課題が残ります。
  • 人権問題と外交的リスク:MBSの強硬な外交スタンスや国内統治への批判も、国際社会との摩擦要因となっています。

まとめ:王族国家サウジアラビアの現在とこれから

サウジアラビアは、王家の名を冠する世界唯一の国家であり、約1万5,000人の王族が政治・経済・宗教に深く関与しています。その影響力は国内外に及び、まさに王族国家と呼ぶにふさわしい体制です。

一方で、石油依存や若年層の高失業率、外資誘致の難航など、現代的な課題も山積しています。「Vision2030」による改革は、王族支配と近代化のバランスを模索する壮大な試みでもあります。

伝統と変革の狭間にあるこの国が、今後どのような国家像を描いていくのか。サウード家の動向は、世界が注視する重要なテーマとなり続けるでしょう。

キーワード検索
楽天おすすめ