国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、ノルウェーの馬飼養数は1961年に101,800頭を記録して以来、1970年代前半まで急激に減少。その後は1980年代後半から1990年代後半にかけて緩やかに回復し、2000年代以降は安定的な増加傾向を見せました。しかし、2013年以降は再び減少や横ばい状況が見られ、2022年時点の飼養数は35,800頭となっています。この半世紀以上の推移を通じ、ノルウェーの馬使用目的や農業機械の発展、社会経済の変化がその背景に影響しています。
ノルウェーの馬飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 35,800 |
2021年 | 36,133 |
2020年 | 34,249 |
2019年 | 34,387 |
2018年 | 34,069 |
2017年 | 33,239 |
2016年 | 34,996 |
2015年 | 37,005 |
2014年 | 38,794 |
2013年 | 34,452 |
2012年 | 36,340 |
2011年 | 36,424 |
2010年 | 36,712 |
2009年 | 35,625 |
2008年 | 34,387 |
2007年 | 32,946 |
2006年 | 31,154 |
2005年 | 30,019 |
2004年 | 29,029 |
2003年 | 28,531 |
2002年 | 29,503 |
2001年 | 28,883 |
2000年 | 28,468 |
1999年 | 26,959 |
1998年 | 25,651 |
1997年 | 23,737 |
1996年 | 22,736 |
1995年 | 22,353 |
1994年 | 21,752 |
1993年 | 20,915 |
1992年 | 20,600 |
1991年 | 20,700 |
1990年 | 18,800 |
1989年 | 17,407 |
1988年 | 17,200 |
1987年 | 16,400 |
1986年 | 16,200 |
1985年 | 16,200 |
1984年 | 15,800 |
1983年 | 14,900 |
1982年 | 15,400 |
1981年 | 15,900 |
1980年 | 17,700 |
1979年 | 20,704 |
1978年 | 20,187 |
1977年 | 21,395 |
1976年 | 21,750 |
1975年 | 22,459 |
1974年 | 23,657 |
1973年 | 24,728 |
1972年 | 27,293 |
1971年 | 30,943 |
1970年 | 35,177 |
1969年 | 41,884 |
1968年 | 46,591 |
1967年 | 53,351 |
1966年 | 61,401 |
1965年 | 67,049 |
1964年 | 77,365 |
1963年 | 86,200 |
1962年 | 94,037 |
1961年 | 101,800 |
ノルウェーにおける馬の飼養数は、1960年代から急速に減少していました。この大幅な減少の背景には、農業および運送業における機械化の進展があります。トラクターをはじめとする農業機械の普及により、従来の労働手段として使用されていた馬の需要が著しく低下しました。また、この時期には都市化が進み、農村部の人口減少と農家の数自体の減少が馬飼養数の減少を加速させたと考えられます。
1970年代後半以降、馬飼養数の減少は次第に緩やかになり、1980年代を境に一部の分野では再び馬の需要が増加し始める傾向が見られました。この段階では、馬が主に農業用の動力としてではなく、娯楽やスポーツ、レジャー目的での利用を中心に人気を取り戻したとされています。近年、乗馬や競馬、馬を活用した観光産業が拡大するにつれ、馬飼養数が緩やかに回復する傾向が見られました。
2000年代以降は、国内外の馬関連の競技・産業活動が盛んになる中で飼養数も上昇しました。例えば、乗馬の普及や馬術競技の人気が高まり、またノルウェーの自然環境を活かした乗馬ツアーなどが観光の新たな要素として注目されました。一方、2013年以降は再び横ばいもしくは減少の傾向が見られ、2022年現在ではやや減少が止まりつつあるものの明確な増加には至っていません。
この変動の理由として、現代の都市化進展や飼養コストの上昇が考えられます。馬の飼養には飼料や医療、施設維持などに高額なコストが必要で、特にノルウェーのように物価水準の高い国では、個人で馬を飼うことが容易ではありません。また、気候変動による農産物価格や飼料供給への影響も、馬飼養業への負担を増大させています。
今後の課題としては、多様化する目的に対応した馬産業の振興が挙げられます。乗馬やレジャー産業としての需要を更なる政策で促進し、馬飼養の価値を見出す新たなアプローチが求められます。また、農村地域での馬を利用した伝統文化の維持や、馬を通じた教育・療育活動への支援も重要です。こうした分野への投資や補助金の供給は、飼養数の安定化と馬を介した地域振興に貢献するでしょう。
地政学的観点では、ノルウェーの馬産業は国内のみならず、他国の馬産業との連携や国際競技会など、グローバルでの活動機会を増やす可能性もあります。一方で、新型コロナウイルスのパンデミックによる経済不況と旅行制限は一部の乗馬関連産業に影響を与え、馬飼養数の横ばい傾向を助長した可能性も示唆されます。この点でも、困難な状況を乗り越えるための持続可能な産業戦略が必要です。
結論として、ノルウェーの馬飼養数の推移は、農業や産業構造、社会的価値観の変化に大きく影響されてきました。馬が現在および未来においても社会的、文化的、経済的に重要な存在であり続けるためには、政府の支援政策や関連産業の革新が不可欠です。また、自然環境や地域文化を活かしたアプローチにより、ノルウェー独自の馬産業を更に発展させる可能性もあります。