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ノルウェーの馬肉推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が提供する最新データによると、ノルウェーにおける馬肉生産量は1961年の2,539トンをピークに長期的な減少傾向を辿っており、2023年には10トンとなりました。この減少の背景には、食文化の変化や動物福祉に対する関心の高まり、地政学的な影響、農業政策の変化など、さまざまな要因が考えられます。特に2000年代以降、減少ペースが加速し、現在の生産量は1960年代の水準の1%未満に過ぎません。

年度 (トン) 増減率
2023年 10 -
2022年 10
-23.08% ↓
2021年 13
-18.75% ↓
2020年 16
-48.39% ↓
2019年 31
-44.64% ↓
2018年 56
-8.2% ↓
2017年 61
-14.08% ↓
2016年 71
-22.83% ↓
2015年 92
-39.87% ↓
2014年 153
-48.14% ↓
2013年 295
-19.62% ↓
2012年 367
-14.85% ↓
2011年 431
3.61% ↑
2010年 416
-5.67% ↓
2009年 441
21.82% ↑
2008年 362
-5.73% ↓
2007年 384
-9.65% ↓
2006年 425
-8.99% ↓
2005年 467
-12.55% ↓
2004年 534
-6.15% ↓
2003年 569
-10.68% ↓
2002年 637
0.31% ↑
2001年 635
8.18% ↑
2000年 587
-3.29% ↓
1999年 607
-1.3% ↓
1998年 615
4.41% ↑
1997年 589
-10.35% ↓
1996年 657
-9% ↓
1995年 722
-12.27% ↓
1994年 823
-7.11% ↓
1993年 886
-5.24% ↓
1992年 935
7.35% ↑
1991年 871
2.71% ↑
1990年 848
-1.85% ↓
1989年 864
8% ↑
1988年 800
5.54% ↑
1987年 758
0.4% ↑
1986年 755
4.43% ↑
1985年 723
4.93% ↑
1984年 689
2.84% ↑
1983年 670
-8.84% ↓
1982年 735
-17.14% ↓
1981年 887
15.19% ↑
1980年 770
-5.17% ↓
1979年 812
-4.92% ↓
1978年 854
-1.04% ↓
1977年 863
2.37% ↑
1976年 843
-2.77% ↓
1975年 867
19.42% ↑
1974年 726
-7.52% ↓
1973年 785
-28.11% ↓
1972年 1,092
-16.26% ↓
1971年 1,304
-22.2% ↓
1970年 1,676
-18.72% ↓
1969年 2,062
-3.06% ↓
1968年 2,127
-8.48% ↓
1967年 2,324
-12.66% ↓
1966年 2,661
-1.81% ↓
1965年 2,710
-7.95% ↓
1964年 2,944
7.25% ↑
1963年 2,745
5.94% ↑
1962年 2,591
2.05% ↑
1961年 2,539 -

ノルウェーにおける馬肉生産は、過去数十年間で劇的な変化を遂げています。1960年代初頭の2,500トン以上の生産量から、2023年には10トンにまで減少しました。このような変化には、いくつかの社会的、文化的、経済的要因が関与していると考えられます。

まず、食文化の変化が大きな影響を及ぼしています。馬肉は、第二次世界大戦後のノルウェーで安価で高タンパクな肉として、広く消費されていました。しかし、経済発展による所得の向上と食品の多様化に伴い、より高価で入手しやすい他の肉類、特に牛肉と鶏肉が主流の消費対象となりました。また、馬肉そのものに対する消費者の関心も低下し、現代では一般的な日常食品と見なされなくなっています。

さらに、動物福祉の観点からも馬肉生産は影響を受けています。世界的に動物福祉への関心が高まる中、馬という動物が家畜としてではなく、個々の人格を持った仲間として見られる傾向が強まり、馬を食材として扱うことへの社会的な抵抗感が増しています。このような心情的な要素が、消費者と生産者の両者に影響を与えました。

一方で、経済的な要因も見逃せません。馬肉の生産には特別な飼育や加工施設が必要であり、これが小規模なノルウェーの農業にとってコスト負担を増加させました。特に2000年代以降、馬肉市場の需要が縮小する中で、国内の生産者が競争に勝つことはより困難になりました。また、輸入品と競合する関係も市場縮小の一因となり、ノルウェー国内での生産を維持する意欲が損なわれました。

地政学的な背景も無視できない要因です。ノルウェーは、EUとの自由貿易協定を締結してはいるものの、EU加盟国ではないため、輸入食肉に一部規制やコストがある環境下にあります。このような制約が国内生産と輸入のバランスに影響を与え、消費者が馬肉を購入する頻度をさらに低下させました。また、世界的な馬肉市場も縮小していることから、ノルウェー単体で産業を維持する環境が厳しくなっています。

未来に向けた対策としては、これ以上の産業維持を目指す場合、動物福祉や消費者のライフスタイルの変化に適合したマーケティング戦略が必要です。例えば、馬肉が含む高タンパクで低脂肪といった健康志向の側面を訴求し、新たな市場を開拓することが考えられます。また、観光分野と連携して地域特有の文化的食品として馬肉をアピールすることも効果的かもしれません。一方で、現状の市場規模では持続可能性が疑問視されるため、政策レベルでの議論も避けられません。例えば、他の食肉産業や農業部門への生産転換を促進する支援や計画の立案が求められるでしょう。

また、世界的な紛争や疫病の影響で今後も国際物流が制約される場合、国内資源を活用した持続可能な農業政策の重要性が増していきます。馬肉に限定した議論には限界があるため、他の食材との複合政策として議論していく必要があります。

最終的には、馬肉生産を取り巻く状況がノルウェー社会全体の需要と価値観の変化を象徴していると言えます。現代社会における食文化や経済、動物福祉が密接に絡み合うこのテーマは、ノルウェーだけではなく、他国の食品政策にとっても示唆を与えるものです。国際的な視点で、バランスの取れた方向性を模索する取り組みが重要です。