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ノルウェーの豚飼育数推移(1961-2022)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が2024年7月に更新したデータによると、ノルウェーの豚飼育数は過去60年以上の間に大きな変動が見られました。1961年に約53万頭だった飼育数は、増加傾向を示し、特に1990年代から2000年代には80万頭を超える水準を記録しました。しかしながら、2010年代後半から減少傾向に入り、2022年には約77万頭となり、ピーク時の2012年(約85万頭)と比較すると約9%の減少が見られました。

年度 飼育数(頭)
2022年 773,800
2021年 772,688
2020年 768,211
2019年 786,121
2018年 815,377
2017年 851,998
2016年 854,005
2015年 848,813
2014年 842,484
2013年 851,058
2012年 855,704
2011年 854,334
2010年 850,383
2009年 845,019
2008年 828,243
2007年 837,892
2006年 836,426
2005年 824,237
2004年 825,548
2003年 790,717
2002年 751,415
2001年 710,788
2000年 730,390
1999年 738,372
1998年 840,300
1997年 842,100
1996年 825,100
1995年 768,400
1994年 747,800
1993年 748,200
1992年 765,900
1991年 721,200
1990年 709,700
1989年 656,695
1988年 745,300
1987年 778,900
1986年 738,000
1985年 692,400
1984年 720,400
1983年 705,200
1982年 686,100
1981年 689,000
1980年 663,600
1979年 672,754
1978年 704,878
1977年 701,013
1976年 697,822
1975年 668,855
1974年 747,041
1973年 765,612
1972年 737,467
1971年 681,778
1970年 641,746
1969年 657,871
1968年 610,382
1967年 590,221
1966年 568,067
1965年 567,944
1964年 535,467
1963年 515,400
1962年 550,400
1961年 534,100

ノルウェーの豚飼育数の推移をみると、経済発展や農業政策、食文化の変遷が直接的に反映された産業の変化が明確に現れています。1960年代初頭、約53万頭だった豚飼育数は、集約的農業の進展や国内需要の増加に伴い増え続けました。特に1970年代から1990年代にかけては、技術革新や輸送網の発展と相まって、国内の畜産業が効率化したため、飼育数が70万頭を超える時期が持続しました。

1990年代中盤以降、ノルウェーの豚飼育数はさらに伸長し、1996年には初めて80万頭を超えました。そして、2010年代前半にピークを迎え、2012年には約85万頭を記録しました。この時期には、国内外での豚肉需要の強さや、ノルウェーが国内市場を保護するための政策を強化していたことが影響していると考えられます。しかし、これ以降、飼育数は減少傾向に転じています。

飼育数の減少にはいくつかの要因が考えられます。第一に、消費者の食文化が変化し、豚肉需要が安定あるいは減少傾向にあることが挙げられます。健康志向が広まり、植物性食品や代替肉への関心が高まる中、豚肉の消費量が一部の地域で減った可能性があります。第二に、農業分野全体での効率化・集約化が進む中、小規模農家が減少した結果として、全体の飼育数がやや伸び悩んでいる点も重要です。第三に、環境意識の高まりにより、家畜生産が環境に及ぼす影響への関心が高まったことも、規模の調整を促した要因として挙げられます。

また、2000年代以降、地球温暖化や自然災害などによる飼料価格の上昇、新型コロナウイルス感染症などの疫病の影響によって、生産業全体が負った影響も無視できません。特に、パンデミック中の物流の混乱や、それに伴うコスト増加は豚飼育の経済効率に厳しい影響を及ぼしたと考えられます。

これらの状況を踏まえると、ノルウェーの豚飼育数の減少傾向は、一時的な問題ではなく、構造的な課題を含んでいることが分かります。まず、国は需要予測と市場の変化に基づく政策強化が必要です。豚肉の輸出市場の拡大や、新しいサプライチェーンの確保など、需要を安定的に支える仕組みが求められるでしょう。さらに、環境保全の観点からも、家畜生産の効率化と持続可能性を両立させる技術投資が重要です。たとえば、バイオサイクル技術を用いた飼料の再利用や、飼育施設のエネルギー効率改善などが具体的な施策として挙げられます。

地政学的リスクとしては、欧州諸国間の貿易紛争や地域的な豚熱(ASF)といった疫病の発生が、生産と輸出入の両方にマイナスの影響を与える可能性があります。このようなリスクを回避するため、多国間協力を深化させ、疫病対策を含む農業分野全体の規制整備を進める必要があります。

結論として、ノルウェーの豚飼育数の推移は、国内外の需要・供給バランスの変化や、自然・社会的要因が複合的に作用してきた結果といえます。このデータは、農業政策の持続可能性を議論する重要な指標として役立つでしょう。今後、ノルウェー政府および関連組織は、農業の効率化、環境負荷の軽減、新しい消費志向への適応を基本とした戦略を設け、国内外の変動に柔軟に対応することが求められます。