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パキスタンの大麦生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、パキスタンの大麦生産量は1961年の120,000トンを起点に、大幅な増減を繰り返しながら長期的には減少傾向にあります。1961年から1983年にかけての期間では比較的高い生産量が維持され、その間には年間185,300トン(1983年)のピークを記録しました。しかし2000年以降、特に2010年代後半以降は顕著な減少が見られ、2022年の生産量は38,037トンまで減少しています。2023年には若干回復し43,485トンを記録しましたが、それでもピーク時からは大きく低下しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 43,485
14.32% ↑
2022年 38,037
-9.12% ↓
2021年 41,856
-11.32% ↓
2020年 47,199
-13.69% ↓
2019年 54,685
-0.81% ↓
2018年 55,131
-5.04% ↓
2017年 58,060
-4.11% ↓
2016年 60,549
-3.5% ↓
2015年 62,744
-5.58% ↓
2014年 66,451
-1.1% ↓
2013年 67,191
2.27% ↑
2012年 65,700
-7.72% ↓
2011年 71,200
-0.28% ↓
2010年 71,400
-12.39% ↓
2009年 81,500
-6.75% ↓
2008年 87,400
-5.72% ↓
2007年 92,700
5.94% ↑
2006年 87,500
-4.58% ↓
2005年 91,700
-6.05% ↓
2004年 97,600
-2.01% ↓
2003年 99,600
-0.2% ↓
2002年 99,800
0.91% ↑
2001年 98,900
-15.83% ↓
2000年 117,500
-14.48% ↓
1999年 137,400
-21.08% ↓
1998年 174,100
16.07% ↑
1997年 150,000
-13.99% ↓
1996年 174,400
6.34% ↑
1995年 164,000
12.56% ↑
1994年 145,700
-7.96% ↓
1993年 158,300
13.15% ↑
1992年 139,900
-1.48% ↓
1991年 142,000
8.15% ↑
1990年 131,300
7.18% ↑
1989年 122,500
9.57% ↑
1988年 111,800
3.52% ↑
1987年 108,000
-19.22% ↓
1986年 133,700
1.6% ↑
1985年 131,600
-5.66% ↓
1984年 139,500
-24.72% ↓
1983年 185,300
17.65% ↑
1982年 157,500
-10.26% ↓
1981年 175,500
48.6% ↑
1980年 118,100
-8.66% ↓
1979年 129,300
7.21% ↑
1978年 120,606
-2.38% ↓
1977年 123,552
-5% ↓
1976年 130,054
-5.12% ↓
1975年 137,066
-1.74% ↓
1974年 139,500
28.1% ↑
1973年 108,900
5.73% ↑
1972年 103,000
13.19% ↑
1971年 91,000
-12.19% ↓
1970年 103,637
6.84% ↑
1969年 97,000
-10.19% ↓
1968年 108,000
22.73% ↑
1967年 88,000
6.02% ↑
1966年 83,000
-29.66% ↓
1965年 118,000
6.31% ↑
1964年 111,000
-10.48% ↓
1963年 124,000
6.9% ↑
1962年 116,000
-3.33% ↓
1961年 120,000 -

パキスタンの大麦生産量は、主に気候条件や農業技術の変化、さらには農地の利用方法による影響を受け続けています。データを分析すると、1960年代から1980年代初頭にかけては、生産量が比較的安定し、特に1981年から1983年にかけては175,500トンから185,300トンに達しています。この時期の高い生産量は、農業技術の導入や比較的良好な気象条件が背景にあると考えられます。

しかし、2000年代に入ると、生産量は再び減少に転じます。この時期には、農地自体が他の穀物生産へと転用されるケースが増え、同時に乾燥化や地力の低下に伴う問題が深刻化していた可能性があります。このような環境的および構造的影響に加え、大麦が国内で他の食糧作物や輸出向け作物に比べて優先度が低いという政策的背景も、その減少に寄与していたとみられます。

特に2010年代以降の急激な生産量減少は、広範な課題を反映しています。気候変動に伴う乾季の厳しさや洪水の発生、灌漑システムの老朽化などが農業生産に影響を与えており、大麦栽培においても例外ではありません。例えば、2010年以降の洪水被害は特定地域で深刻な被害をもたらしました。さらに、大麦は冬季を中心に栽培される作物であり、冬季の降水量の不足や平均温度の上昇が生育期に悪影響を及ぼしていることが指摘されています。いわゆる地政学リスクとして、地域における政治的不安定さや紛争の影響も、農地利用や輸送コストなどの要因を通じて農業生産に影響を及ぼしていると想定されます。

急激な減少が続く中でも、2023年には43,485トンとやや回復が見られました。これは一部地域での気象条件の改善や、国際的な農業技術援助政策の成果が影響した可能性があります。しかし依然として、長期的な持続可能性を確保するには、さらなる施策が必要です。

この状況を改善するためには、いくつか具体的な提案が考えられます。まず、気候変動への対応として、乾燥に強い大麦品種の導入や農業用水資源の効率的な活用を促進することが重要です。また、農業分野への投資を増やし、灌漑設備の近代化や土壌改良計画の実施を進めることが必要です。地政学的リスクへの対応も含め、地域全体での協力体制を強化し、農民への技術支援や金融サービスの提供を充実させることが求められます。さらに、大麦の付加価値製品の市場拡大を図る取り組みは、農家の収益向上に貢献する可能性があります。

結論として、パキスタンの大麦生産は、気候変動、農業技術ギャップ、政策優先順位の低さなど、複合的な課題の影響を受けています。しかし、地域協力と国際的な技術支援を通じた具体的な対策のもとで、生産基盤を強化し、持続可能な発展を実現することは可能です。特に乾燥耐性品種の利用や灌漑技術の向上が鍵となるでしょう。政府および関係機関が積極的な措置を講じることで、再び大麦生産を重要な農業基盤として発展させることが期待されます。