Skip to main content

パキスタンのナシ生産量推移(1961年~2023年)

国連食糧農業機関(FAO)が公表した最新データによると、パキスタンのナシ生産量は、1961年に8,100トンでスタートし、その後の数十年で増減を繰り返してきました。最も高い生産量を記録したのは2000年の38,164トンでした。しかし、それ以降は全体的に減少傾向にあり、2023年には9,614トンという低水準にまで落ち込みました。この50年以上にわたる推移からは、生産量の安定性に課題があることが見受けられます。

---

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 9,614
-10.96% ↓
2022年 10,797
-7.31% ↓
2021年 11,649
-17.54% ↓
2020年 14,126
-2.38% ↓
2019年 14,470
-7.49% ↓
2018年 15,642
-1.78% ↓
2017年 15,926
-3.2% ↓
2016年 16,452
-0.71% ↓
2015年 16,569
-2.6% ↓
2014年 17,012
-9.15% ↓
2013年 18,726
-0.34% ↓
2012年 18,789
-1.48% ↓
2011年 19,071
-1.14% ↓
2010年 19,291
-4.62% ↓
2009年 20,225
-17.97% ↓
2008年 24,657
2.09% ↑
2007年 24,152
-14.46% ↓
2006年 28,234
-0.38% ↓
2005年 28,343
-6.99% ↓
2004年 30,474
-0.67% ↓
2003年 30,679
-4.72% ↓
2002年 32,200
-0.67% ↓
2001年 32,418
-15.06% ↓
2000年 38,164
1.23% ↑
1999年 37,700
0.6% ↑
1998年 37,477
5.38% ↑
1997年 35,565
0.9% ↑
1996年 35,248
0.72% ↑
1995年 34,995
2.02% ↑
1994年 34,302
1.09% ↑
1993年 33,932
1.49% ↑
1992年 33,434
0.42% ↑
1991年 33,294
7.05% ↑
1990年 31,100
-3.79% ↓
1989年 32,326
-4.92% ↓
1988年 34,000
-1.16% ↓
1987年 34,400
0.58% ↑
1986年 34,200
0.59% ↑
1985年 34,000
-0.29% ↓
1984年 34,100
1.76% ↑
1983年 33,510
-0.9% ↓
1982年 33,813
2% ↑
1981年 33,151
-1.16% ↓
1980年 33,541
21.03% ↑
1979年 27,713
-16.81% ↓
1978年 33,314
-0.75% ↓
1977年 33,565
4.45% ↑
1976年 32,134
8.56% ↑
1975年 29,600
10.04% ↑
1974年 26,900
-15.94% ↓
1973年 32,000
26.48% ↑
1972年 25,300
82.01% ↑
1971年 13,900
5.3% ↑
1970年 13,200
-38.32% ↓
1969年 21,400
27.38% ↑
1968年 16,800
-1.75% ↓
1967年 17,100
20.42% ↑
1966年 14,200
-59.77% ↓
1965年 35,300
28.83% ↑
1964年 27,400
0.37% ↑
1963年 27,300
8.33% ↑
1962年 25,200
211.11% ↑
1961年 8,100 -

パキスタンは多年にわたってナシ生産において重要な位置を占めている国ではあるものの、その生産量の推移は非常に変動的です。データによると、1961年の8,100トンからスタートしたナシ生産量は、1965年には35,300トンへと急増しました。この急激な成長は、当時の農業技術の進歩や輸出需要の増加に伴って生じたものだと推察されます。しかし、1966年には14,200トンと、大幅な減少が起きており、これが早くから生産の変動が顕在化していたことを示しています。

1980年代には生産量が比較的安定し、年間33,000~34,000トン程度を維持しました。一方で1990年代後半から2000年代前半にかけては、38,164トン(2000年)をピークにして以降、徐々に減少が続いています。この時期における減少の背景には、農地の利用効率や気候変動の影響だけでなく、政府の農業政策の変更や市場の需要変動が影響を与えた可能性があります。

特に注目すべきは、2007年以降の急激な減少です。2005年の28,343トンから始まるこの減少傾向は、2023年の9,614トンという記録的な低水準へと至るまで続いています。この要因としては、以下の複雑な背景が考えられます。第一に、気候変動の影響が顕著に現れてきており、異常気象や洪水等の自然災害が収穫に致命的な打撃を与えた可能性があります。2010年代後半から、パキスタンでは洪水や干ばつに見舞われる年が増加し、これが農作物全体の生産に影響を及ぼしていることが指摘されています。

また、農業技術の進歩に関して、近隣のインドのように継続的な技術導入と革新を実施している国との比較では、パキスタンは相対的に遅れを取っているとされています。加えて、農業インフラの不足や水資源の確保の課題が、ナシ生産に悪影響を及ぼしている可能性があります。さらに、農民の収益性の低下やナシの市場需要の変動により、他の作物への転換が進んでいる可能性も考えられます。

このような背景の中で、パキスタンのナシ生産の未来を考える上で、いくつかの具体的な対策が必要です。まず、最優先として農業インフラの整備が挙げられます。より効率的な灌漑システムの導入や、天候不順に強い品種開発を進めることが求められます。加えて、農家に対して教育プログラムを提供し、新技術や最新の農業手法を浸透させることが、持続可能な生産体制の鍵となるでしょう。

また、気候変動への適応戦略として、農地の多様化や、災害に強い農業システムの構築が必要です。他国の取り組みが参考になります。例えば、中国は災害に強い作物品種の開発に力を入れており、これをパキスタンでも積極的に取り入れるべきです。さらに、地域間連携や国際的な協力も視野に入れるべきです。インドや中国との農業分野での技術共有や市場開放を通じて、ナシの生産性改善を目指せます。

加えて、政府レベルでナシの市場需要促進策を策定することが重要です。加工食品産業との連携や、輸出拡大に向けた品質管理の強化は、農民の収益を底上げする手段の一つです。

結論として、パキスタンのナシ生産は、長期間にわたり変動を繰り返していますが、特に近年の減少は気候変動や農業技術の遅れなど、多面的な問題の結果であると言えます。この傾向を逆転させるには、近代的な農業技術の導入、災害に強い農業体制の整備、さらには国際的な協力が不可欠です。これらの対策を講じることで、パキスタンのナシ産業は新たな安定成長を迎える可能性があります。