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パキスタンの大豆生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization, FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、パキスタンの大豆生産量は長期にわたって大きな変動を見せています。1960年代は低い水準から徐々に増加し、1990年代半ばには最高値の8,229トンを記録しました。しかし、その後の生産量は著しく減少し、2022年にはわずか9トンにとどまりました。この変動の背後には、気候条件、農業インフラ、政策方針など多岐にわたる要因が存在します。

年度 生産量(トン)
2022年 9
2021年 48
2020年 201
2019年 15
2018年 28
2017年 19
2016年 40
2015年 22
2014年 63
2013年 65
2012年 64
2011年 89
2010年 51
2009年 31
2008年 29
2007年 32
2006年 421
2005年 264
2004年 371
2003年 351
2002年 1,266
2001年 1,404
2000年 1,537
1999年 1,544
1998年 8,229
1997年 7,311
1996年 2,694
1995年 7,228
1994年 5,298
1993年 2,373
1992年 1,327
1991年 946
1990年 849
1989年 1,169
1988年 1,526
1987年 3,775
1986年 2,585
1985年 1,602
1984年 1,571
1983年 1,350
1982年 1,535
1981年 1,342
1980年 1,326
1979年 1,755
1978年 1,290
1977年 615
1976年 403
1975年 443
1974年 1,002
1973年 1,159
1972年 932
1971年 927
1970年 900
1969年 850
1968年 750
1967年 650
1966年 550
1965年 550
1964年 500
1963年 450
1962年 450
1961年 450

パキスタンの大豆生産量の推移を見ると、まず1961年から1970年代初期にかけてはゆっくりと上昇していることがわかります。この期間の増加は、緑の革命(Green Revolution)と呼ばれる農業技術革新の導入が背景にあります。1970年代後半から1980年代に入ると、生産量はさらに拡大し、1986年には2,585トン、1987年には3,775トンを記録しました。しかし、1980年代後半から1990年代には不安定な変動が頻発し、1994年から1998年にかけては比較的高い生産量を維持したものの、その後劇的な減少傾向が始まりました。2000年代以降の生産量はほとんどが1,000トン未満で、2010年代後半以降はさらに深刻な低水準に陥り、2022年にはわずか9トンという事実を示しています。

この生産量の極端な変動にはいくつかの重要な背景があります。第一に、パキスタンでは経済的な優先順位や農業政策が繰り返し変化してきた結果、大豆の栽培が戦略的に重要視されなかったことが挙げられます。大豆は主に油脂や飼料として使用される作物であり、米や小麦のような主食作物に比べて政策的支援が不足していました。また、地政学的な面では、パキスタンはインドと隣接しているため、水資源の争奪や地域衝突が農業に影響を及ぼしています。この他、主要輸出先市場の需要変動や国際価格の動向も地域の農業生産に大きな影響を与えたと考えられます。

さらに、気候変動による天候の不安定化も重要な要因の一つです。パキスタンは極端な暑さや乾燥、さらには洪水被害にも悩まされています。2010年には洪水が国全体の農業生産に壊滅的な影響を与え、それ以降も自然災害が続いています。このような環境問題に直面する中、農家は高い報酬が望める作物に転向するケースも増え、大豆生産のモチベーションが低下しました。

新型コロナウイルスの影響も無視できません。パンデミック中は世界的な供給網が混乱し、農業資材の輸入が難しくなり、農民が本来の生産活動に集中できない状況が続きました。これも2020年以降の生産量減少に影を落としています。

このように、大豆生産量の低迷は複合的な要因によるものですが、これに対する具体的な対策が求められます。まず、政策的には、大豆を同国の農業生産の中心的な作物として位置づけることが必要です。例えば、農家への融資や補助金を拡充し、近代的農業技術の導入を促す支援を強化することが有効です。さらに、気候変動に対する適応策として乾燥地帯でも収穫可能な大豆品種の研究開発を進めることが重要です。地域協力の観点からは、隣国インドや中国の技術協力を得て生産効率を高める取り組みも期待されます。日本やアメリカのような先進国からの技術移転や専門家派遣も効果的です。

このデータから導き出される結論は、パキスタンの大豆生産が現在のままでは自給自足もままならない水準に陥っているという点です。このままでは大豆製品の需要が増加している世界市場において競争力を喪失するリスクが高まります。今後、パキスタン政府は農業政策の構造的な見直しと国際協力を通じ、持続可能な生産基盤の確立に取り組む必要があります。また、国際機関も同国の農業セクターを支援する具体的なプロジェクトの構築に関与すべきです。これらの取り組みにより、大豆生産の回復と強化が期待されます。